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モフモフの素敵さを布教してみた

 ラウビウの大群にスリーピングビューティのごとき姿勢で運搬されていたので、当然ジロジロ見られている拙者。いや……プラモシリーズ異世界風オタクかもしれぬでござるな。

 全力で視線に気がつかないふりをしながら、しれっと冒険者ギルドに入ったのでござるが、めっちゃ見られている。拙者というか、ラウビウを見ているようだ。ラウビウ達も素直に拙者のあとをついてくる。ちなみに十五匹もいるでござる。


「あら、タカさん…………何をしてるんです?」


 受付のお姉さんになんと返事をするか迷ったでござる。とりあえず、モフモフになつかれたなうにござる。


「…買い物でござるよ。魔物の毛皮で傷がついてるやつとか、小さくて使いようがないやつをたくさん欲しいでござる」


「え?本当に!?いーっぱいありますよぉ!」


 本当に山積み持ってきてくれた。売り物にならないが、買い取らねば冒険者の生計が成り立たない。在庫を山ほど抱えているそうだ。


「全部で五千リンでいいですよぉ!でも、何に使うんですか?」


「ああ、ちょっと待っててくだされ」


 チョキチョキと毛皮を切り、魔法で毛皮の傷を消し、チクチク縫って綿を詰め、目と鼻を縫いつけて…完成!うむ、可愛いしモフモフ!


「こんな感じのぬいぐるみをたぁくさん作るでござるよ。サシェを入れられるようにしてもいいでござるな。着せ替える服なんかも作りたいですぞ!」


 ラウビウそっくりにできたぬいぐるみ。モフ可愛いでござる。我が妹がよろこびそうでござるなぁ。


「ふああああああああ………ナニコレ可愛い…」


 受付のお姉さんは、ぬいぐるみにうっとりしている。抱きしめたりモフモフして感触を確かめている。本物の方がモフモフだしぬくいし、可愛いと思うのでござるが…気に入ったようでござるな。


「タカさん、これいくら!?」


「試作品でござるゆえ、値段は考えてないでござる。あ、宣伝してくれたらタダでもいいでござるよ」


「やる!やります!!やらせてください!!」


 受付のお姉さんは両手をあげてくれた。


「これは売れますよぅ!すごくいいです!可愛いですぅ!こんなの初めて見ました!」


「ふむ…ならば宿にラウビウルームがあったら「ナニソレ、素敵!行く!泊まる!給料使いきるまで泊まります!もしや、本物のラウビウが触れちゃうとか!?」


「いいでござるなぁ。室内もこんな感じで…」


 ラウビウモチーフの部屋を描いてみた。これは可愛いでござるな。


「超素敵ぃぃ!ところで、ちょーっとだけそのラウビウちゃんをナデナデしたり…できませんか?」


 そりゃ、ぬいぐるみより可愛い本物がいたら触りたいでござろうな。拙者の頭の上が気に入ったらしいラビルビに声をかけた。


「ラビルビ」


「にゃ~お」


 ラビルビの声にラウビウ達が反応し、受付がラウビウだらけになったでござる!


「可愛い!ふああ…モフモフ!」


「あ………あの……あたしもちょーっと…触っていい?」


「わ、私も………」


 気がつけば、女性冒険者に包囲されていたでござる。ひええ…居心地が悪い!オタクはリア充に弱いのでござる!


「いやーん、可愛い!」

「フカフカ!」

「きゃああん、人懐っこいのね!」


 なんとか女性冒険者達の包囲から抜けられた。ギルドは半分が酒場なので飲み物を頼んで適当な椅子に腰かけた。ラビルビがじっと拙者を見る。


「みゃう(ごしゅじんさま、おなかすいた)」


「そうでござるか。果物とお肉はどっちが好きでござるかな?」


「み(くだもの)」


 何故でござろうか。ラビルビの言葉がなんとなーくわかるでござる。


「はい」


「ゴロゴロ(おいしー)」


 そして、餌の気配を察知したラウビウは一列に並んで拙者を見た。何故でござろうか。ラビルビほどハッキリとはわからぬでござるが…ぼくらおりこうさんにしてたよね?と期待されている気がするでござるよ。


「はい」


「み」


「はい」


「み」


 果物を渡すと退いて次のラウビウになる。ひたすらに果物を渡した。


「可愛い!ねぇ、私もあげてみたい!」


「フシャ!フシャー!(ダメ!ごしゅじんさまがボスだっておしえてるの!)」


「………へ?あ、えっと……ラウビウに拙者がボスだって教えてるので遠慮していただきたいでござる?」


「そっかぁ。この子達、ありえないぐらいよくなれてるものね~。無理言ってごめんね?」


 幸いなことに、リア充なお姉さんは気を悪くした様子もなく食べ終わったラウビウをナデナデしていたでござる。


「でへへへ…モフモフ………あ!タカさん!ラウビウは一応魔物ですから、食べずに飼うなら従魔登録が必須ですよ!」


 ピアスみたいな魔具に魔力を注ぐことで、持ち主の魔力が認証されて魔具は魔物と一体化する。痛みはないらしく、ラウビウは嫌がらない。小さな石が埋め込まれたような感じになった。


「これ、持ち主登録の変更はできるのでござるか?」


「できますよ~。はぁぁ、私もラウビウを従魔してしまおうかしら………」


 お姉さんはすっかりラウビウに夢中のようでござるな。可愛いでござるものなぁ。


「おい、お前」


「…………」


 ヤバい。拙者大ピンチ!明らかにこう…ごろつきみたいな怖いお兄さんが来たでござる!!


「お前だろ!?こないだ回復薬卸したの!」


「…えっと…「フシャー!!(ごしゅじんさまをいじめるな!!)」


『フシャー!!』


 無害であるはずのラウビウが一斉に牙をむいた。慌ててラウビウをなだめる拙者。


「拙者のラウビウ達が失礼いたしました。回復薬は今回限り、お詫びの品としてお渡しするでござる。もし足りなければ言ってくだされ」


「………恩に着る」


 怖いお兄さんは、上級回復薬を受け取ると、足早に去っていった。


「礼を言うでござる。ラビルビ達のおかげで気がつけたでござるよ」


「みゅう?」


 拙者のために怖がりながらもお兄さんを威嚇するラウビウ達を見て、冷静になれた。そしてお兄さんはこちらをにらみつけてはいるが敵意はなかった。こんなに目撃者がいるギルドで絡む馬鹿がいるか。答えは否。恐らくは、仲間が怪我をしたが治療費がなかったのであろうな。きっと表情が強張っていたせいで余計に怖かったのでござるなぁ。


「ありがとう、皆」


「みゃう(うれしい)」

「ゴロゴロ…」

「みゅうん」


 モフモフしたラウビウをナデナデしていたら、少年が駆け込んできた。


「すいません!ラウビウにさらわれた人を探して欲しいんです!!」


 とても見おぼえがある少年でござったよ。ラウビウにさらわれた人、ね。そういえば、はぐれたノア君達を放置していたでござるよゥオゥオおお!!


「大変申し訳ありませんでした。拙者、元気いっぱい夢いっぱい、モフモフいっぱいでござる」


「………………何してんの、お前」


 ラウビウまみれで土下座する拙者に、シルヴァ殿が呆れたご様子でござった。ノア君とグレイ殿にはがっつり叱られたでござる。すんまそぉぉん!!

ラウビウをもふる中には、ちゃっかり男性のモフラーが居たみたいです。

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