マスコットをゲッツしてみた
アカネさんと宿屋改造計画について盛り上がっていたら、背後に誰かが抱きついてきた。
「タカお兄さん!」
「おや、ノア君。調子が良さそうでござるな」
顔色もよく、昨日とは別人でござる。しかし、ノア君はどう見ても十代。つまり、グレイさんって拙者と同年代?恐ろしいので考えないことにした。
「うん!お兄さんのおかげで、昨日も今日もずっと咳が出てないんだ。ご飯も吐かなかったし、久しぶりに走れたよ!」
「ぐしゅっ……ずずっ………」
「…して、何故にグレイ殿は泣いておるのでござるか?」
がたいのいい熊さんのような男性がボロボロ泣いていらっしゃる。ノア君は呆れた様子でござる。
「んん…僕、あのままだったら食事も食べれず衰弱死してたと思う。僕もお兄ちゃんも…それをわかってた。だから、元気な僕を見て嬉し泣きしてるみたい。でも、そろそろうざい」
「!??」
ノア君、辛辣!お兄さんショックで固まってるでござるよ!!え?昨日からずっと?んんん…確かに長いでござるな。
「グレイじゃねぇか。珍しいな。何か用…なんで泣いてんだ、お前は……………ノア!??」
グレイ殿とシルヴァ殿は知り合いだった…どころか以前にパーティを組んでいたらしい。同ランクとはいえ、世間は狭いでござるな。
昨日やらかしたことを暴露され、シルヴァさんに叱られたでござる。そしたらノア君が庇ってくれた。
「じゃあ、シルヴァさんは僕を見殺しにしろって言うの?」
「ぐっ!?」
「あははは、ダーリンの負けね。タカさんとノア君が正しいわよ」
アカネさんはケラケラ笑っている。しかし、これではシルヴァ殿が悪者になってしまう。
「…心配してくださっただけでござろう?親身になってくださり、感謝しておりますぞ」
「わかってんなら、いい。お前の力は狙われる危険があるから注意しろ」
「御意!」
今日はそのために出かける予定でござるよ。だからこそ、わざわざグレイ殿にお願いしたのでござるよ。拙者だけだとナメられる可能性もあるでござるからな。
「そういえば、約束は昼過ぎからだったはずでござるが?」
グレイ殿に話しかけたら、ノア君が返事をした。
「えへへ、僕がお兄ちゃんにお願いしたんだ。僕の病気を治してくれたんだから、僕がお礼をしたいって」
「…ふむ。ならば、一緒に買い物をお願いするでござる。ハーブや布を安く売っている店を知っているでござるかな?」
「任せて!元気だった頃はよく市場に行ってたよ!」
というわけで、ノア君と保護者のグレイ殿で市場に行くことに。
「あっちが安かったよ」
「……ふむ」
ミントにラベンダー、ローズマリー。料理にも使えるし…安いでござるな。他より品もいい。
「これ、全部ください」
「「「は!?」」」
「これと、これも。これで足りますかな?」
五万リンを出した。大体そのぐらいじゃないかな?ハーブは一本五十リン程度で安い。
「ま、毎度!これとこれもつけます!」
おまけまでついてきた。ラッキーでござるな。おまけは香辛料でござった。
「あ、定期的に届けてもらうことはできますかな?」
「で、できます!」
その辺りはアカネさんと相談する必要があるので連絡方法などを話した。そして、買ったハーブはアイテムボックスへ。
さらに布、糸、ビーズ等を買いまくり、食材…肉を売る店で、拙者は見つけてしまったでござる。ラウビウ…やはりラビルビに似ている。ラウビウ達は檻の中で眠っていた。
「ぐふぁ…」
しかし、店の前で吊るされた無惨なラウビウのお肉に拙者の心は折れた。時に、オタクのメンタルは豆腐並みに脆いのでござるよ。
「うにゃ~?」
「……………ラビルビ?」
ラウビウは黒い。しかし、拙者を慰めるかのようにフカフカなお耳を檻から伸ばして拙者の頬をナデナデするラウビウは……白い毛皮に赤い瞳。ラウビウにもアルビノが存在するらしい。
赤い瞳は、じっと拙者を見つめていた。
「兄ちゃん、買わないなら仕事の邪魔だよ」
「………かたじけない。その、店主殿。この白い子を買いたいでござる」
「おう。シメるか?解体料が「んのぉおおおお!!解体しない!そのまま!そのまんむあああああ!!」
拙者は必死で店主殿に訴えた。そして、檻から出された白いラウビウ。一匹千リン。安い。
「にゃ~」
拙者の足にスリスリしてくる。モッフモフでござるが、見た目兎っぽいのに鳴き声は猫。か、可愛いでござるううう!!抱っこしてスリスリするとゴロゴロとごきげんでござるよ!!フッカフカああああ!!
「さっきのは偶然じゃなかったのか!ラウビウが…スゲーなついてやがる!」
「タカお兄さん、すごい!」
「……………(うらやましそうな表情)」
「ふぇい?」
ラウビウは臆病ですばしっこく、捕まえるのが難しいそうでござる。普通は足の腱を切って動きにくくするそうな………(泣)
「うちのは活きのよさがウリだからな!切ってないぞ!しかし、白いのでいいのか?そいつ他のからいじめられててなぁ。皮はいじまえば白か黒かなんてわかんねぇから、今日売っちまおうと持ってきたんだが」
セェェフ!!このラウビウ、きっと拙者に出会う運命だったに違いないでござるよ!
「…お前はラビルビ。今から拙者の仲間でござる」
【ラウビウはネームド『ラビルビ』になりました】
【ラビルビはテイムを承認しました】
【ラビルビは種族呼び、魔法模倣、スキル模倣、精神感応を覚えました】
なんか聞こえた。き、気のせい?
偽善だってわかっている。でも、ラウビウ…腕の中の…拙者のラビルビが、仲間を助けてって多分きっと、言ってるよーな気がするでござるよ!!
「檻のラビルビ…じゃなかった、ラウビウ、全部買うでござるよ!」
「毎度!解体「ダンメええええ!ノー解体!生のまま!!ノースプラットゥアアアアア!!」
「ガッハッハ!兄ちゃん、おもしれぇなぁ!」
肉屋のおじさんに笑われたでござる!必死でストップ解体を訴えたのに、弄ばれていたでござるよ!よく見たら、グレイ殿やノア君どころか、他の店人やお客にまで笑われていたでござる!
「は、恥んずらかすいぃぃ!皆、撤収でござるよ!」
「にゃああああーん!」
『にゃおおおーん!!』
ラビルビの声を合図に、走り出したはずの拙者はラウビウ達に運ばれていたでござる!!ラウビウ、意外に力持ち!?なんか足払いされて倒されて運ばれ………スゲーはやあああああああい!!
「ほげえええええええ!?」
「タカお兄さぁぁぁぁん!??」
すぐにノア君もグレイさんもお店も見えなくなった。
「とんぬらあああああああじゃなかった、ストップ!ストォォップ!」
あまりのスピードにパニックになったでござるが、ストップをかけたら止まってくれた。ラウビウ達の異常なスピードにより完全にはぐれたでござる。しかし、止まった場所は幸いなことに冒険者ギルドであった。ここからなら宿に戻れる。よかった。ついでに買い物していこう。拙者は何事もなかったかのようなふりをして冒険者ギルドに入ることにしたでござる。