説明してみた
拙者が出てしばらくして、シーザ君は拙者の不在に気がついた。匂いは薬草で誤魔化せていたが、お腹が空いてないかとおやつを持ってきて気がついたそうな。運が悪かったね。
「さすがにばれたみうー」
「うん………ダヨネー」
それは誤魔化しようがないねー。
「そもそも誤魔化そうとしないでください!!」
「……………はい、ごめんなさい」
「僕、エド様に頼まれたんです。ご主人様をお守りしろって。頼んだぞって言われたのにいいい!!うわあああああん、僕のバカバカ、無能、嘘つきいいい!!」
あばばばばばば、シーザ君が己を責めている。いや、シーザ君は何も悪くないからね?
「せ、拙者が悪かったのでござる!もうしない!絶対しないから、許して!シーザ君は悪くないから!」
「いえ、ご主人様が無茶な要望をしたとしても、僕らはそれを想定して動かないとダメなんですよ。あああああ、僕のダメ人間!エド様、ごめんなさいいいいい!!」
ちなみにシーザ君が大騒ぎしているのは玄関だったので、エリスちゃんを連れて帰ったエド君達に会いました。
「シーザ、もっとやれ。ご主人様はお前が自分を責めた方が反省する」
「はい!!」
あの…………ご主人様は拙者じゃないの?なんかこう………知ってたけどエド君の方がご主人様っぽい。
「まあ、ご主人様の行動は本当に読めないからな。正直、お前は悪くないよ。気にすんな。それからすいません、ご主人様。今はエリスについていてやりたいんです」
「それはもちろんでござるよ!むしろ、ついていてあげなきゃダメでござるよ!!エリスちゃんは辛い思いをしたのでござる!今はついていてくだされ!!」
「ありがとうございます。まあ、愚姉もいるから情報については問題ないと思います」
「今は気にせず、エリスちゃんについていてくだされ!」
「ふふ、はい」
エド君は穏やかに微笑んで去っていった。残されたのは拙者とまだ泣いているシーザ君だけ。
「ええと、シーザ君はまだ拙者の護衛をする気があるでござるか?」
「ぐしゅっ…………はい!」
「なら、行くでござるよ。もうひとつ、拙者の秘密を教えるでござる」
そう言って、ソーネ君からもらった転移ユニットを起動した。ソーネ君と違い、あらかじめ座標指定したいくつかにしか転移できないが、便利だ。
「ソーネ君、首尾は?」
転移先は、勇気の神殿。ソーネ君がすぐにやって来た。
「魔物?」
【修復は問題ありません。いつでも勇気の再起動が可能です。ただ、神殿自体の損傷が深刻で、要塞としては使い物になりませんね】
自然にスルーするソーネ君。実は勇気の神殿で修復作業をしてました。
「拙者の使い魔的存在、ソーネ君でござる」
【否定。ワタクシは管理AIです】
スルーにはスルーで対応する事にした。似たようなものでござるよ。
「正確にはロストアイテムの一種でござる。内緒でござるよ」
「は、はい!」
ナニかをぶつくさ言っているソーネ君に案内され、神殿の最深部へ。台座にソーネ君そっくりの球体が安置されていた。天使の玉子っぽいソーネ君と違い、なんだかトゲトゲしていて赤い。
「……ドラゴンっぽい?」
【肯定。前マスターがドラゴンをモチーフにして作成したそうです。ワタクシには悪趣味で非合理的な突起にしか見えません】
「………で、どうしたらいいのでござるか?」
めっちゃ勇気の見た目をディスるソーネ君。昔何かあったのだろうか。まあ、今度聞いてみよう。今は勇気を目覚めさせなければならない。
【こちらのパネルに触れてください。ワタクシがマスター情報を書換いたします】
素直にパネルへ触れたら、神殿全体が揺れた。
【侵入者、発見。侵入者、発見。緊急事態発生。緊急事態発生】
あ、これ絶対ヤバいやつ!
「ラビルビ、ラウビウ!!」
『みううー!!』
ラビルビを先頭に、ラウビウ達が召喚されて拙者達を運んでくれた。
「ぎゃああああああああ!?」
レーザー撃ってきた!やべえええ!!
「にゃああああ!?あ、足場が不安定で怖い!!」
シーザ君もラウビウ達に乗っているが、わりと余裕がある。まあ、遺跡あるあるですとか言ってた。
「ちょ、ソーネ君!どういうこと!?」
【勇気が盛大に寝ぼけているようです】
【誰がポンコツだゴルアアアアアア!!オレッチはどっこも壊れてなんかねぇわ!!役立たずのくせに!!】
そして、レーザーを発射していた機械が壊れた。そういや、施設の大半は損傷が深刻だという話でしたな。
【マスター、訂正します。勇気でした】
【オレッチは壊れてなあああああああい!!】
ソーネ君、煽るのをやめていただけない?
「ご主人様は、必ず僕がお守りします!この命と引き換えにしたとしても!!」
ほらああ、シーザ君が悲壮な覚悟をしちゃったじゃない!
「シーザ君、命はひとつ。引き換え不可。拙者、シーザ君に何かあったら死んで詫びても足らないでござる。拙者を守るなら、自分も守りなさい」
「はい!!」
「とりあえず、時間を稼いで。信頼してるよ、勇者様」
まばゆい解呪の光と共に、いつもの声が聞こえてきた。
【双剣の勇者・シーザと契約が可能になりました】
【双剣の勇者との絆値が規定値を越えています。契約することで、複合スキルが使えます】
そして、拙者は選択した。この先へ進み、望んだものを得るために。




