本当の彼女に会ってみた
今夜は奮発して、拙者は個室でモフモフを愛でつつ針仕事をしていた。深夜、控えめなノックが響いた。やっぱり、来たね。
「どうぞ」
「ごしゅじん、さま……」
泣きはらした顔のスケスケネグリジェを着用したフェリチータたんが入ってきた。拙者は自分でも驚くほどの早さでフェリチータたんに毛布を被せる。ありがとうございます。眼福でしたが、刺激が強すぎます。
「自分大事に!」
「ごしゅじん、さま。れいぞくを、といて、ください」
フェリチータたんは泣きながら、必死に話した。フェリチータたんは元近衛騎士で、弓の勇者だったこと。あの馬鹿ではなく、その妹姫に仕えていたこと。罠にはめられ、思考制限と口封じをされてから奴隷になったこと。
「だから………だから、フェル、いかなきゃ。ほんとは、ごしゅじん、さま、と、いたい、けど、ひめさま、たすけなきゃ。ぜったい、かえる。おんがえし、する。だから………いかせて、ください」
「………話はわかったでござる。隷属の解除も、問題ない。だけど、フェリチータ殿が行くなら拙者も行くでござるよ」
「え?」
「一緒に行こう。拙者はすでにこの国の王族と敵対している。これから『真の魔王の剣』と盛大にケンカをする。だから、ついでにお姫様も助けるでござるよ」
「…………だめ。あぶない」
一瞬迷ったが、フェリチータたんは頷かなかった。なかなかに頑固だ。
「じゃあ、勝手にやるでござるよ」
「………………え?」
「勝手にフェリチータ殿の主を探して、助ける。拙者は拙者で動くでござるよ。そうすれば、またフェリチータ殿と会うでござろう」
「ごしゅじん、さま、ばか」
「…………うん」
「ばか、ばか………ばか…………」
力なく拙者の胸を叩くフェリチータたんは、また泣いてしまった。そっと頭を撫でながら、隷属を解除する。
「……ご主人様は馬鹿です。私など、捨て置けばよいのに」
ん?
あれれ?
「どうしてそんなに優しいのですか!どうして……」
隷属と同時に思考制限も解呪されたらしく、フェリチータたんがハキハキ喋っている。やっべぇぇ!見た目だけじゃなく、しゃべり方もモフリル様でござるわ!!ミラクル過ぎるでござるわああああああ!!
幸いにもフェリチータたんはやたらと挙動不審になっている拙者に気がついていない。
「フェリチータ殿は、拙者の大事な女の子でござるゆえ、仕方ないのでござるよ」
いや、待たんかい。隷属がない今、フェリチータたんは拙者のじゃないっつーの!!
「ご主人様…!」
のいやあああああああああああ!?
だだだだだ抱きつかれてしもうたあああああああ!!
「す、すいません。私ったら……」
しかも、今までと違ってすぐ離れて顔を真っ赤にしてるよ!可愛いよ!いや、どちらかといえば顔は綺麗なんだよ。でも可愛い!恥じらっているのが超新鮮!!どなたかキャメラ!キャメラをお持ちではないですか!?無いなら仕方がない!心のファインダーに焼き付けておくでござるよ!!
「その………今までもすいません。私……その……思考制限のせいで精神が退行しておりまして……ご主人様に……あのようなアプローチを………穴があったら入りたい……!」
フェリチータたん、床に転がって悶えるのはいいんですがね?あのね、はだけて見えてはいけないモノがチラチラ見えてますのよ。綺麗なピンク色とか、下着とかがね?ごちそうさま……ではなく!!とりあえず顔を手で覆った。でも、指の隙間からチラッと見ちゃう。だって男の子だもん。本当は見たいもん。
※貴文は萌えすぎて混乱している。
「ご主人様?…………あ!!あわわわわわわ!?きゃん!」
顔を手で覆った拙者の様子を見て、ようやく今自分がどんな格好かを思い出してくれたフェリチータたん。毛布を被ろうとしてしくじり、毛布を踏んでしまい転んだ。結果、余計に色々と丸見えになった。これがかの有名な、ラッキースケベというやつにござるな。何故か一部は脱げている。
「いたた………きゃん!ひゃわわわ!」
ドジっ子属性なのだろう。モフリル様との共通点がありすぎて、拙者の心臓がもたないでござる。
「み……………見ました?」
涙目、上目遣い、頬染めのトリプルコンボ入りましたあああああああ!!ごちそうさまです!お腹いっぱい、胸おっぱ…いっぱい、萌えが……萌えが溢れて弾けて飛ぶぜ!!飛べねえオタクはただのオタクだ!!アイキャンフラアアアアアアアアアアイ!!
※貴文は激しく混乱している。
「あたっ!?」
動揺し過ぎて針を指に刺してしまった。危ないのでとりあえず裁縫箱に針を………ゆびが、あたたかい?
ゆび、ない。
ゆび、くち?
ゆびが、ゆびが、ユビGaGaGaGaGa……
「ご主人様ああ!?」
トリプルコンボかーらーの指チュパ攻撃(即死効果あり)により、萌えが臨界を突破したため、強制シャットダウンとなったのでした。
貴文死すとも、萌えは死せず!!
ありがとうございましたああああ!!
オタクがある意味弱すぎる件www




