知ってみた
朝、目が覚めたら言い争っている声が聞こえた。何故フェリチータたんとユージェニス殿がいるのかな?
「朝からうるっさいわ!!」
エド君が騒ぐ二人を追い出した。寝起きのエド君最強説が浮上した。
「ご主人様、貞操は大丈夫…………また細くなりましたね」
「は?」
ムキムキとはいかなかったが、タプタプできるワガママボディからスリムになっていた。変化が急激過ぎて、自分の顔って気がしないでござるよ。
窓から雀さんみたいな小鳥が来た。
「タカさん、勇者様のためにお薬をたくさん、ありがとうございます」
確か、タルトン君でござるな。なんでも、歩が行った町が襲われて回復薬をたくさん使ったらしい。譲葉のバッグはこちらから補充可能な仕様にしたから、追加で入れておこう。
「補充しておくでござるよ。足りないものがあったら、言ってくだされ。ポーン殿を頼むでござる」
雀さんは飛んでいった。今度は派手な孔雀さんが来たでござるよ。
「最近活躍されているようですね、タカ様。わたくし、面白い商品を仕入れましたの。きっと気に入ると思いますわ。早めにいらしてね」
奴隷商館の店主殿でござるなぁ。今日の予定は決まったでござるな。
奴隷商館には嫌な思い出があるだろう。だから二人は来なくても大丈夫と言ったのだが、二人ともついてきてくれた。ちなみにユージェニス殿には遠慮してもらった。買いたいモノもあるから、とアッサリ了承してくれた。わりと空気が読めるタイプらしい。
「お待ちしておりましたわ、タカ様!」
「手、にぎらない」
「そうですね。穢れます」
店主殿の手をはたく二人。ま、まぁいっか。
「あぁら、そんな態度でいいの?フェリチータ。今日の商品は貴女に関係あるモノよ」
店主殿が指を鳴らすと、二人の男性が部屋に入ってきた。
「でん………か?」
「お前、フェリチータか!お前が不甲斐ないせいで、私達もこのザマだ!何をしている!?今すぐ私達を解放しろ!!」
会うなり罵倒してきた貴族か王族っぽい青年は、店主殿が指を鳴らした瞬間に屈強な男達によって地面に顔面を強打させられた。
「ぐっ!」
「殿下!貴様……王子になんてことを!……ぐうっ!?」
こっちは元騎士かな?ふーん。元騎士らしい青年も同じく床に顔面を強打させられた。フェリチータたんは困惑した様子でござるな。
「申し訳ありません。まだしっかり躾られておりませんの」
「ああ、かまわぬでござるよ」
「貴様、流石は奴隷を買いに来るような下衆だな!人を人とも思わぬ鬼畜よ!」
「ちが、う」
フェリチータたんは、泣いていた。
「ごしゅじん、さま、ほんとはどれいなんか、ほしくなかった、です!てっかい、して、ください!フェルのごしゅじん、さま、せかいいち、やさしいん、だから!!」
泣きながら、拙者を悪く言うなと言ってくれた。フェリチータたんを優しく撫でる。どうしよう、すごくすごく、嬉しい。
「無礼な!近衛騎士風情が、この私に刃向かうか!?」
「店主殿、拙者は確かに死んだ目をした奴隷は嫌だと申したが……正直ここまで酷いと嫌でござるよ」
「なっ!?」
「申し訳ありませぇん、タカ様。ああん、怒った顔も、す・て・き」
「私を無視するな……うぐっ!?」
店主殿は見向きもしない。ただ黙って指を鳴らして偉そうな青年を殴らせた。
「店主殿、そのぐらいで。名も知らぬ奴隷よ。お前が何者だったとしても、今は奴隷だ。己の立場がどれほど危ういかを理解しろ。お前もだ。騎士だかなんだか知らんが、本気で守りたいなら変なプライドは捨てろ。邪魔なだけだ。考えて切り抜けろよ。そいつを守れるのは、もうお前だけだろ。残念だが、フェリチータは拙者のものだ」
王族だったとしても、今はただの奴隷。危うい立場であると教えてやった。
「……フェルは……ごしゅじん、さま、の……」
フェリチータたんはどこか嬉しそうで……悲しそうだった。二人を下がらせてから、一応予約をした。買ってすぐに解放するかなぁ……ただ、逆恨みされると面倒くさそうなんで、多少しつけてもらうことにした。
「ぎゃあああああああ!!」
なんだか叫び声がしたと思ったら、以前こちらで売られていたアフガンハウンド的なモフモフが飛び込んできた。
「きゅーん………」
見た目はアフガンハウンドなのに、某CMの目をウルウルさせるチワワ並みに目をウルウルさせていたでござる。
「……………この子、買います」
ずっと気になっていたのでござるよ。
「わん!」
アフガンハウンドではなく、ヘルハウンドという魔獣なんだそうだ。とりあえず、今日は素敵なモフモフをゲットして満足…………かな?他の子達も買いたかった。
その後ユージェニス殿と合流し、宿に戻った。
そして、拙者は調合しつつ、あるものをコッソリ作るのだった。




