早速色々やらかしてみた
エド君の提案で、アイアの町に向かう前にマナシの奴隷商館へ行くことになった。どうしても必要なモノがあるらしい。
「俺の荷物を返してくれ」
「……まあ、いいでしょう。どうせ貴方にも、誰にも使いこなせないでしょうし。ご主人様、必ず無事に戻ってきてくださいね」
店主殿が指を鳴らすと、布袋入りの赤い石がたくさんと古ぼけた盾を持ってきた。エド君は盾に触れるが、がっかりした様子になった。
「まだ、選ばれない……か。まあ、俺が強くなれたのはご主人様の装備が強いだけだしな。ご主人様、コレはしまっておいてください」
エド君が差し出した盾をしまおうとしたが、拙者には触れなかった。不思議な盾でござるなぁ。とりあえず、アイテムボックスに放り込んだ。触れなくても入れられるらしい。
「この石は?」
「これが賢者の石です。少しでも計画を遅らせようと、盗んだんです」
流石はエド君、無茶をする。一つ手に取り、鑑定してみた。
「………流石はエド君がすごいと言うお姉さんでござるな」
エド君は首を傾げていた。エド君のお姉さんはとても賢い女性なのだと石を鑑定してみてよくわかった。
ラッキーに乗ると目立つので、近くの廃村に転移した。そこには、縛られたおじさんがいた。
「親父!?」
【マスターの配下と同じ遺伝子情報を所持していたので捕獲しましたが、やはり血縁でしたか】
「お前の仕業かあああああ!!うちのソーネ君が大変失礼いたしました!エド君には大変お世話に「とりあえず、ほどきましょうよ」
節制ことソーネ君を地面に叩きつけ、土下座しながらエド君パパに全力で謝罪した。冷静なエド君のツッコミにより、エド君パパを解放した。
「エドアルド……本当にエドなのか?」
「ああ、親父も無事だったんだな」
「エド、頼む!じじいを止めてくれ!!」
「は?」
なにやらトラブルの予感でござるな。エド君パパに連れられて、廃村のとある民家に入った。なんとクローゼットの底に隠し通路があり、地下に入った。うわあ、秘密基地みたい!
「ここは……」
「レジスタンス『盾の勇士』だ。アイアの町は『真の魔王の剣』に支配されてしまっている。そこから町を救うために設立された組織だ。だが……正直、我々だけでは無理だ。残された手段は、自爆ぐらいしかない」
エド君パパは辛そうだ。
「親父、大丈夫だ!多分ものすごく非常識なご主人様が、なんとかしてくれるから!」
エド君パパが『え?』という顔をした。拙者、明らかに弱そうでござるからな。つーか、エド君酷い。ものすごく非常識って何さ。
「アイアの町は!」
『我らのモノ!!』
「真の魔王の剣は!」
『ブッ飛ばす!!』
なんか、強そうなマッチョ達がすごく盛り上がっている。怖いので、近寄りたくない。マッチョ怖い。
「じじい、またギックリ腰やらかすぞ」
だが、エド君はそんな人達に堂々と話しかけた。あ、ラビルビが足にスリスリしてきた。癒される~。きっとビビる拙者を癒しに来たんでござるなぁ。
「おお、エドアルド!無事だったか!!」
マッチョの中でも強そうなじじマッチョことエド君じいじは嬉しそうだ。なんというか、歴戦の勇士って感じでござるな。顔にも傷痕がたくさんあり、ムキムキだ。右の目に深い傷痕があり、開けないようだ。
「………まあな。皆、話を聞いてほしい。ここにいる俺のご主人様、タカ=レイター様は、ほぼお一人で『真の魔王の剣』のアジトを二ヶ所も潰している」
「え」
いやいや、ラビルビ達やエド君達が居てこそでござるよ?拙者自身は非力で無力なオタクでござるからね?
いやいや、皆さん?信じたらダメよ。拙者、この中で最弱でござるからね?
「じじい、どうしても行くってんなら、俺達に勝ってからにしろ。俺らに勝てないなら、奴らにも勝てない。ご主人様、勇者の盾を」
「あ、うん」
アイテムボックスから取り出すと、エド君じいじに盾を投げた。というか、盾……歩の刀と同じやつ?
「ふはははははは!老いたとはいえ現役勇者に勝負を挑むとは愚か者め!全員打ちのめしてくれるわ!!」
勇者っていっぱい居るの!?どうやらエド君じいじと戦わなきゃいけないみたいなので、急いで鑑定を発動する。うっわ、エド君じいじのステータスがチートすぎ!レベルたっけえ!八十二!?魔王も倒せるんじゃね?しかもあの盾、スゴいでござる!とはいえ……うむ。イケるでござるな。
試合をするため、広場みたいな所に出た。念のため結界をはったら驚かれた。なんで?崩れたら困るよね??魔力を逆探知されても困るし。
「高位の僧侶か。気配も清らかだ」
いいえ、拙者は聖なるオタクらしいよ。そういや、『聖なる』オタクなんだから……出来ることが増えてるんじゃないかな?
「いや、一応錬金術師でござる」
自称なのだが、冒険者登録も錬金術師ってことにしているので一応主張してみた。
「…………………は?」
なんか驚かれたが、とにかくこれ以上はボロが出そうでまずい。審判役のエド君パパに声をかけた。
「エド君の父上!開始の合図を!」
「は、はい!両者、かまえ!はじめ!!」
「えい!!」
フェリチータたんが矢を一斉に射出する。しかも、不規則に曲がりくねる。流石はフェリチータたん!素敵!!
「なんの!!」
しかし、エド君じいじは回転して全てを防御した。
「エドのおじい、さん………つよい」
「あれでも一応盾の勇者ですからね!」
「よそ見をするとは、余裕だな!シールドアタック!!」
「ぐうっ!くっそ……キツい……馬鹿力め!!」
「!??」
おかしい。あの程度の攻撃、エド君の盾なら………あ!アレか!!すかさずパソ子のさんを取り出し、エド君じいじの盾に魔力干渉する。
「ぬ!?」
「盾の性能を下げるスキルとは珍しいでござるが……無効化させていただく!!」
「させるか!シールドブーメラン!!」
拙者めがけて盾が投げられたが、避ける必要なんてない。盾が無くなったのでフェリチータたんが矢を放つが、避けている。スゲー。
「じじい!あんたの相手はこの俺だ!ご主人様は俺を信頼して盾役を任せた!ここは絶対通さねえ!!」
拙者にはエド君がいるから大丈夫。エド君が弾いた盾は、意思があるかのようにエド君じいじの手元に戻った。さらに、連撃を放つ。たまにフェリチータたんの矢を無効化している。器用でござるな。
しかし、盾が弱体化されているのにシールドブーメランの連撃をくらってもびくともしないエド君。エド君自身の自力が上がってないか?これで盾の能力が戻れば……エド君の勝ちだ!!
「覇者の盾、封印!!」
勇者の盾には『覇者の盾』という能力があった。神の加護により全ての盾や武器の能力を下げ、スキルレベルを低下させる。なかなかに厄介なスキルだ。なので、遠隔操作して封印させてもらった。
これがエド君じいじの固有スキルだったら流石に人には干渉できないので無理だが、装備の能力で、かつ外部に影響を及ぼすモノだから無効化できた。要は、電波妨害ならぬ魔力妨害だ。実は封印してないの。でも、使えないから封印されたと思うよね。
「エド君!」
「わかってます!シールドアタック!!」
エド君が盾ごと体当たりをかました。当然エド君じいじは盾で体当たりを止める。
「発動!!」
「ぬあああああああ!?」
さらに『攻撃的な守護盾』が発動した。蓄積された上に倍になった衝撃で、盾ごとエド君じいじがブッ飛んだ。
「勝負あったな」
そして、その隙を見逃すフェリチータたんではない。すでにエド君じいじの首もとにナイフをつきつけていた。
「勝者、エドアルドチーム!」
エド君パパの言葉に、エド君が待ったをかけた。
「親父、違う。俺たちはご主人様のチームなんだ」
「……そうか。では勝者、タカ=レイターチーム!!」
「いや、そこはどうでもよくないでござるか!??」
拙者、たいして活躍してないよね!?
「よくないです」
「よくない」
「よくないみう」
「わふ(よくないな)」
【否定】
「おうふ」
味方がいない。泣いてもいいだろうか。
「俺達は、ご主人様が居てこそのチームですから」
「そ、そうでござるか」
晴れやかに笑うエド君に、拙者も笑いかけた。皆も頷いていて、なんだかうまく言えないけど、すごく嬉しかった。
なんかこう……エド君がなついてきた気がします(笑)




