強制的に転職?してみた??
節制の神殿は気になるでござるが、警備兵や奴隷がいる状況で探索したくない。浄化もどのぐらい効果があるかわからないし。
そんなわけで、先にそっちをどうにかする事にした。丁度エド君達も上層部を完全制圧したようだ。
パソ子さんが節制によりバージョンアップしまくっていて、処理速度がめっちゃ上がっていて怖いが気にしないことにした。
「エド君、エレベーターを起動するから、合流しよう。奴隷なんかも解放するでござるよ」
『わかりました』
エレベーターで合流後、エド君達がサクサク敵を殲滅。節制については何も言われなかったし薮蛇なので説明しなかった。
拙者はパソ子さんを駆使して隔離壁で奴隷なんかを保護していた。人質にされたら面倒だしね。
あっさり敵を片付けて、奴隷達をどうしようかという事になったでござる。奴隷は全部で四十人。獣人がほとんどでござるな。
「君達の奴隷紋を消去する。奴隷のままでいたい者はいるでござるか?」
全員が首を横に振った。
「では、解呪した後全員に公平にお金を渡す。これで当面をしのいで、仕事を探すなりなんなりするでござるよ」
「あ、あんたになんの得がある!?」
「完全に自己満足でござるな。見捨てるのって、気分が悪い。少しとはいえ手をさしのべたと自分が思いたいのでござる」
本当なら、勝手に解放したわけだし全員生活できるようになるまで面倒を見るべきだろう。しかし、そこまで余力がない。獣人の女性が発言してきた。
「その……私達にもいただけるのですか?人族だけ、ですか?」
「種族関係なく、基本は全員同額でござるよ。ああ、そうだ。いくつか条件をつけようかな」
なんか落胆されているけど、仕方ないでござるな。
「ただし、子供がいたり事情があれば多少は考慮する。対価は……いつか君達の生活が安定した時に拙者が困っていたら、助けてほしい」
皆口を開けてポカーンとしているが、拙者は何か変なことを言っただろうか。エド君を見ると苦笑している。フェリチータたんはニコニコしている。
節制が封印されたゲートを使ってくれたので、すぐマナシの町に戻ってこれた。
捕まえた犯人達は冒険者ギルドに預け、施設で製品になっていた糸の半分を商人ギルドで換金。さらに昨日の報酬があったので、一人に十万リンずつ支払った。
【マスター、提案がございます。彼らの故郷に送ってあげては?】
皆が一斉にこちらを見た。節制によれば、各地に封印された転移陣があるから最寄りまで簡単に送れるとのこと。
「じゃ、そうしよっか」
大した手間でもないし。というわけで、それぞれの故郷に送り出すことに。詳しく聞いてみると、大半が借金奴隷だった。
「子の薬代がどうしても足りず……」
「治療費が……」
さらに詳しく聞いてみたら、ノア君の症状と似ていた。とりあえず、一番人数が多かった犬獣人の村に転移した。幼い兄弟を救うため、自らを売った子供~青年達だ。
涙の再会に水をさすのも気が引けたが、気になるので病人をみせてもらった。
先ずは病状を………違う。これは、ノア君の病気とはまったく違う。貴重だという薬を見せてもらった。お金を払うから譲ってほしいと言ったら、息子達を助けてくれたからと無料でくれた。とりあえず、応急処置を小さな犬獣人の子にしておいた。
「………薬師だか、医師だかはどこでござるか?」
内面から炎がふきあがるような感覚。そう、怒り。殺気が漏れているのか、怯えながらも村唯一の薬師の元へ案内された。
「ご、ご主人様?」
「ごしゅじん、さま?」
うちの奴隷が怯えている。でも、ごめん。怒りがおさまらない。犬獣人達も皆股に尻尾が入り込んでガクブルしている。
しかし、ちゃんと薬師の家に案内してくれた。小さな村だから、その薬師しかいないとのこと。
家の前に立ち、黒陽と月白を出した。
「おらああああああ!オタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!」
黒陽と月白を容赦なく連射しまくる。一応手加減しているので薬師とやらがいる建物だけを破壊した。
【マスター、加勢します。モード【物理攻撃補助】兵装選択【巨人の剛腕】さらに【武装最適化】を実施】
卵も羽根も、まるで針金のようにバラけて、黒陽と月白ごと包み込む。拙者の両腕も針金が包み込み、気がつけば肩までゴツい機械に覆われていた。片方は黒。片方は白。機械の巨腕で殴りつけると、簡単に家は壊れる。そして、怯えた男を見つけた。男は人間であるようだ。
「き、貴様、何者だ!?こ、こんなことが許され「飲め」
譲ってもらった薬を薬師の口に押しつけた。
「飲めよ」
薬師の机にあるモノを見て、確信した。こいつは、コレの効果を知っている。
「や、やめ……」
「飲め!飲めっつってんだよ!それが出来なきゃ、村のやつらに説明しろよ!コレがなんだか知ってるんだろ!?飲んだらどうなるか、知ってるんだろ!?」
このままでは男を殺しかねない。巨人の剛腕は強すぎる。
「ラビルビ!」
「みう!」
うちのラビルビは気がききます。わざわざ泥水に浄化の雑巾を浸してきましたよ。
「くらえええええ!!」
逆転する裁判で突きつける並みに気合いと魔力を込めて拭いてやった。
「ぎゃああああああああ!?」
そして、強烈に浄化された男は罪に耐えられずベラベラ喋りだした。
男はやはり『真の魔王の剣』の構成員だった。最初からではなかったが、いくつかの家にカビを使って感染症を起こさせ、アントマッシュで治療する。いや、治療とは名ばかりで、アントマッシュを寄生させていた。アントマッシュは弱った身体ならばすぐに寄生する。長生きさせるために症状は一時的に治まるが、最終的にアントマッシュに喰い殺される。ただ、全てが上手くいったわけではない。獣人は生命力が強いからか、自力でアントマッシュを取り込み、逆に取り込んだものもいたとのこと。
さらに、喰い殺された遺体からアントマッシュを採取していたそうだ。アントマッシュの核と金を払えなくて奴隷になった村人を『真の魔王の剣』に献上していたと、男は語った。
涙ながらに語る男に向けられる視線は冷たい。拙者より彼らの方が怒っているでござろうな。
「おにちゃ、ありがとわん」
さっき応急処置をした子だ。そっと撫でて、怒りを鎮める。怒るより、やらなきゃいけないことがある。
「この男の処遇は村に任せるでござる。拙者が治療するゆえ、患者を集めてくだされ」
カビもキノコの胞子も似たようなモノ。清浄化でなんとかなるでござろう。
【この兵装は魔法使用に適しません。マスター、補助の許可を】
「許可する」
「了解。モード【聖魔法補助】兵装選択【癒しの聖人】さらに【武装最適化】を実施」
今度は白を基調に黒がアクセントになった法衣みたいな服。杖だけが機械的だ。杖は繊細な細工で、銀に輝く機械の羽根が節制を思い出させた。
【発動条件を満たしました。清浄化の上位・神の聖域が使用可能になります】
謎の声が頭に響いた。ふむ?清浄化の上位ということは……つまり、これならばアントマッシュも確実に綺麗さっぱり消せるのでござるな?
丁度病人達も集まったようだ。普段はしないが、今回はきっちり詠唱もすることにした。
「……神よ。我が声が聞こえたならば、嘆き苦しむ愛しき子らに慈悲を与えたまえ。我は祈り、乞い願う。この世界に、浄化の奇跡を!!【神の聖域】」
緻密な魔法陣が幾重にも重なり、輝きながら広がっていく。節制のおかげなのか、予想以上に魔力消費が少ない。これなら、村全体を浄化できる。
「ふう」
さて、浄化したら病人達が苦しみだした。予想の範囲内なので、特級回復薬を惜しみなくぶっかける。
身体を侵食していたアントマッシュが消えたことで、臓器に損傷が起きたのだろう。特級回復薬は少量でいいらしく、病人達はすぐ元気になった。
「ご主人様、後ほどお話があります」
エド君が満面の笑みでござった。あ、これあかん奴やと拙者は思った。空気を読まない謎の声が響いた。
【クラスチェンジしました。聖なるオタク、略して聖男になりました】
な に そ れ 。
百歩譲ってオタクはいい。しかし、聖なるオタクで聖男!?語呂も悪いしおかしいでござるよ!!
【最近男女差別だとかうるさいからさあ。仕方ないよ】
謎の声がフランクに答えやがっ……マジでこの声はなんなんでござるの!?必死に脳内で叫んだが、返答はなかった。
小田郡貴文は、異世界で謎の進化を遂げてしまったようでござる。そもそも聖なるオタクってナニよ。
書いててちょっと楽しかったです。
きっと神様の世界で
「ちょっと!ナニしてるんですか!うちの子に変な託宣しないでくださいよ!!」
とか叱られているに違いない。




