さらにたくさん作ってみた。
さっきはエド君やフェリチータたんが危険やもしれぬ、と考えなしに飛び出したが、ラウビウ達やラッキーにも武器防具が必要でござろう。幸いにも防具はさきほど素材を入手した。良いものが作れるでござるよ。
ラッキーにはクイーンの魔石をつけた首輪。ラッキーのサイズに合わせて石のサイズも変わるので、見た目だけでは誰もクイーンの魔石と気がつかないだろう。魔法陣が蔦模様みたいになって、上品な仕上がりでござるな。兜も作るか聞いたが、視界が狭くなると困ると言うので、サークレットにしておいた。カッコいいと誉めたら、まんざらでもない様子だった。短めのマントも作ったし、カッコいい。なんか、楽しくなってきた。
ラウビウ達にいくつか案を書いて悩んでいたら、ラウビウ達が何かを訴えている事に気がついた。
「みうう~!」
どうやら、ラウビウ達はそれぞれに興味がある服があるようだ。そうと決まれば、案を増やしてみた。そして並べ、ラウビウ達に選ばせる。
ちなみに戦士・魔法使い・僧侶・武闘家・騎士・遊び人・賢者・忍者・料理人・学者・警官・お姫様等々書きまくった。
「ラビルビはこれにしたいのでござるが、いいでござるか?」
「みう~!(カッコいいね!)」
ラビルビの衣装は王様風でござる。イメージは戦う王様。王冠にはアイアンアントキングの魔石を使用し、鎧はキングの外殻を使ってみた。モフモフなファー付き真っ赤なマントもカッコいい。あくまでも、ラビルビの動きを損なわず、防御と敏捷を強化した。
ラビルビが白く輝く。
【ラビルビがラウビウキングに種族進化しました】
【種族スキル、カリスマ、王の威厳、王の力、バイリンガルを取得しました】
「ら、ラビルビ?」
「なにみう?」
「「………………」」
ラビルビの声は今までみうとかにゃ~に副音声がついていたでござるが、語尾にみうがついている。
「わふん……(我が主は規格外よのう……)」
「いや、これ拙者のせい!?拙者のせいなの!?まさかコスプレで進化が起きるなんて誰も予測しないでござるよね!?」
「たまたまじょーけんがかさなっただけみうよ、たぶん」
ラビルビがフォローしてくれた。思わず抱きついてモフモフする。おう、さらにフカフカになってる。そして、バスケットボールぐらいだったのが大きめのスイカサイズになっている。他のラウビウより明らかに一回りでかい。
「くすぐったいみう~!」
まあ、いいや。ラビルビが可愛いからいいや。気がついたら、他のラウビウ達がズボンの裾をクイクイしてきた。
「みう……」
「みうう……」
言葉は通じないが、手に拙者のデザイン画を持っていたのでわかった。
「オッケー!作るでござるよ!」
腕の中でラビルビが舌打ちした気がするけど、気のせいでござるよな!?皆で作れば激早い!ラウビウファッションショー開幕でござるよ。ついでに拙者やエド君、フェリチータたんの装備も作った。拙者とフェリチータたんは軽鎧。胸当てと籠手でござる。エド君はフルプレート風。しかし、関節なんかは動きを損なわぬように工夫をした。暑くないよう適温の魔法陣も忘れない。拙者とフェリチータたんは敏捷重視。エド君は防御を重視した。
「ふわあ……それにしても、皆可愛いでござるなぁ」
可愛いは作れる。この着せ替えセットは売れるでござろうなぁ。見て見て、とアピールするラウビウ達は超可愛い。膝にはラビルビとラッキー。こんなに幸せでよいのでござろうか。
「……黒陽、月白」
「「にゃん?」」
「その……無意識にセーブせずに魔法を使い続けたら……どうなるでござるか?」
「ご主人様は魔力回路が物作り以外は未熟すぎたからにゃあ。普通は無意識にセーブするものにゃ」
「もし、そこがバカににゃってたら……最悪死ぬか魔法が使えなくにゃるのにゃ」
「!!?」
頭をよぎったのは歩だ。歩の力は強すぎる。いや、でも大丈夫?そんな……自滅なんて……しない、よね?
「ご主人様?」
「どうしたにゃ?」
「……その……相談に乗ってほしい」
歩について、わかる範囲で話した。そもそも驚異的な身体能力だった。それに身体強化魔法が加わり、もはや某シミュレーションRPGサモ△ナイトて最後主人公に極振りした状態だった。拙者はアレを全自動主人公と呼んだ。
それはもう酷かった。全部一撃だ。聖なる武器とやらもスゴかった。とにもかくにも一撃だった。
「多分大丈夫じゃにゃいかにゃ?」
「聖なる武器が本物にゃら、持ち主を守るはずにゃ」
だが、不安がぬぐえない。何故こんなに不安なんだろう。
「ん~、じゃあアユムさんにもぼーぐつくってあげたらどうみう?ダメージをすこしずつなおすやつなら、きっときくみう!」
「ラビルビ、天才!」
そうと決まれば、素材を取り出す。しこたまクイーンの魔石を仕込んだフルプレートメイルを作成した。多分歩の寸法はさほど変わってないだろうが、サイズ調整の魔法陣も仕込んだ。
「うわ……エグいにゃ……」
「あれにゃら、魔王の攻撃もしのぐんじゃにゃいか……」
うちのにゃんこ達が何か言っているが、命あっての物種だからね。
「あら?まだいたの。うあ……またスゴいの作って……そういや、イノセントを買ったんだって?これ、最後の一つなの。報酬の足しにしない?無属性がいいって話だったけど、イノセントってそもそも扱える人がいない上に高額でさぁ……」
拙者がいるか確認しに来たのか、マカロン殿は緑色のイノセントを持ってきた。
「ください」
迷いなく、緑色のイノセントを受け取った。優しい色だ。この子なら、きっと歩に寄り添ってくれる。
「あの、水を浴びられる場所はありますか?」
「え?ええ……」
マカロン殿は水場に案内すると忙しいし邪魔になりそうだから、とどこかに行った。
頭から水を被る。これは簡易の禊だ。これから作るのは、守り刀。いわゆる懐刀というやつだ。水気を飛ばし…………これ、熱したらまずいのかな?
「多分大丈夫にゃ」
「多分問題にゃし」
黒陽と月白が言うなら多分大丈夫なんだろう。気にせずやることにした。
昔、祖父に習った工程をなぞる。不純物を除去する工程はいらないだろう。熱し、イノセントを打ちながら、魂を込めていく。君は、歩を守る刀だ。願いを、祈りを込めた刀。汗だくになりながら、歩のためだけに心血を注ぐ。
翡翠色の美しい守り刀。銘はもう決めている。
「譲り葉………譲葉」
どうか、歩の守りになってほしい。次代を繋ぐために自ら落ちる譲り葉のような、優しい刀であってくれ。
譲葉は輝いて、すごい勢いで飛行した。歩のフルプレートメイルごと、開いていた窓から、空へ飛んでいってしまった。
「…………………………………え?」
「ご主人様あああああああ!アンタ、マジで大人しくするつもりあるのかよ!??」
「………………………………え?」
飛んでいってしまった譲葉に動揺していた拙者は、動揺しすぎて乱入してきたエド君にまともな返事ができなかった。
エド君はフェリチータたんの首根っこをつかんでいた。エド君、力持ちだね。
世の中は、予想外なことが起きるものでござるよ……by貴文
次回、ついに勇者ポーンのターンですぞ!
なんと、何故かエド君の秘密が明らかに!
次回を、待て!




