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作ってみた

 二人のギルドマスターは、これから忙しくなるだろうから、拙者達はさっさと退出することにした。居ても多分役に立たないし。

 今日も鍛冶工房を使いたいとお願いしたら、マカロン殿が鳥を飛ばしてくれた。孔雀みたいに派手な鳥だった。


「さて、ここからは自由行動にするでござるよ」


 冒険者ギルドの前で、二人にお金を渡した。エド君が渋ったが、文無しで時間を潰すのは辛いと説得したら受け取った。


「マスターはどうするんですか?」


「マカロン殿が連絡してくれたから、商人ギルドの鍛冶工房でエド君の盾とフェリチータ殿の弓を作るでござる」


「「ついていっていいですか?」」


 二人がハモった。仲良しだなぁと思ったら、二人同時に嫌ぁぁな顔になった。


「おい、犬女。俺はご主人様が非常識な事をしないか見張りに行くんだよ。非常識な犬女は邪魔だ。買い食いでもしてろ!」

「こと、わる!フェリチータ、ごしゅじん、さまと、いっしょ!」


 結局皆で行くことになった。






 マカロン殿から連絡を受けたドワーフのおじさんに案内され、鍛冶工房へ。綺麗だし、道具も揃っている。ここなら、刀も打てるやもしれぬな。


「壊したら弁償だ。道具は大事に使え」


「はい。ご案内していただき、ありがとうございました」


 ドワーフのおじさん、びっくりしていたけど、どうしたのでござるかな?まぁいいか。


「で、何から作るんです?」


「先ずはエド君の盾から」


 アイアンアントキングの外殻を調べ、一番厚くて丈夫な胸部分を切り出した。昨日チョイチョイっとスキルで作ったオリハルコンの包丁、使いやすぅい。魔法で強化しているとはいえ、サクサク切れちゃう!


「……………ん?」


 そういえば拙者、武器は不思議な力で弾かれてしまって装備できなかったのでござるが、この包丁は扱えている。触るだけはできるのだが、攻撃しようとすると的とか敵とか関係なく弾かれるの。呪い?呪いなんでござるか?

 そういえば、日本(むこう)で習得した技術は、こっちでも使えていた。それはつまり……そういうことでござるな!


「ぐふ、ぐふふふふふ」


「ご主人様、キモい」


 エド君が酷い。でも、おかげで冷静になった。今は盾に集中しなきゃね。盾の形に切り出した外殻の内側に魔法陣を刻んでいく。オリハルコンのナイフだと切れすぎて切断しかねないので、彫刻刀で刻む。普通なら刻めないが、魔法で強化しているのでこれまたスイスイ彫れる。

 さらに薄くしたミスリルを貼り合わせ、魔力を流す。問題なく陣の作動を確認。動力を嵌め込もうとして、待ったがかかった。


「ご主人様!まままままさか、ソレ使う気ですか!??」


 拙者はにっこり微笑んだ。手には、キングの魔石。アントコアも使うよ。相性よさそうだからね。


「うん」


 めっっちゃ説得された。めっっちゃ反論した。レア素材より命。金より命。命は金で買えないのでござる。ここは絶対に譲らない!!

 会話しながらさっさと加工して嵌め込んだ。結局、エド君が諦めた。なんか、くっそ怖ぇ。一体いくらになるか見当もつかねぇとブツブツ言っていたが、無視。


「で~きた!」


 白銀に輝く大盾が出来上がった。赤いアントコアとキングの魔石がいいアクセントでござるな。エド君がいて良かったかも。彼が使いやすいよう持ち手の位置なんかの微調整ができたからね。

 さらに片手槍も用意した。投擲用と接近戦用。こちらは以前使った槍を改造。盾に簡易アイテムボックス効果があるので自由に出し入れ可能。さらに、盾は普段ブレスレットになるので持ち運びラクラク!アントコアとキングの魔石は魔力が潤沢なので、しこたま付与できた。超大作ができたでござるよ!


「俺、ちょっとギルドで鍛えてきます。いくらモノがよくても、使いこなせなきゃ意味がない!」


 冒険者ギルドでは、お金を払えば武器の指南を受けたり、鍛練が可能らしい。エド君はできたての武器を持って走り去った。


「……籠手とか、胸あてなんかも作りたかったのに」


 まぁ、昨日寸法は計測したし、作れなくはない。微調整は後でも大丈夫でござろう。


「つぎ、わたし、の?」


「そうでござるよ~」


 アイテムボックスから浄化の聖銀を取りだし、ミスリルとまぜまぜ~。銀の柔らかい性質があるので、合金にすることで魔力伝導率と強度を上げる。オリハルコンもちょい足し。おお、銀に金色がアクセントになってカッコいい!


「はわ……ぐにぐに」


 確かに粘土みたいでござるな。弓の形に成型して、形を整える。そして、そこからひたすら削る。ザックリと削り、飾り彫刻に見せかけた魔法陣を、ひたっすらに刻みまくる。フェリチータたんに相応しい、素敵な弓にするでござるよ!!


「はわわ……すごい……こまかい……」


 エド君の盾はアイアンアントキングの外殻の形を活かしていたし、陣も内側だからあまり気を使わなかったけど、フェリチータたんの弓はそうもいかない。


「はあ……」


 気がつけば汗が滴っていた。柔らかいものが触れる。


「ああ、フェリチータ殿。ありがとう」


 フェリチータたんが汗を拭いてくれた。ヤバい。こんなデブオタに超優しい。いや、待て。拙者、超汗臭い?狼って嗅覚鋭いよね!


「えへ」


 フェリチータたんは気にしてないようだが、大丈夫だろうか。いやいや、雑念よ去れ!拙者はこの弓を完璧に仕上げるのでござる!

 とりあえず自らに浄化をかけて、弓に向き合った。拙者の祖父は刀鍛冶で、神社に刀を奉納したり芸術品として売却していた。祖父は武器が好きなのか、弓も作っていた。拙者にも教えてくれた。

 コスプレ用はともかく、実用の盾や西洋弓は門外漢だったが、スキルのおかげで自分が作りたいものをイメージ通りに作れる。

 アイアンアントクイーンの魔石を使おうとしたが、魔物素材と浄化の聖銀は相性が悪いようで無理っぽかった。試しに拙者の魔力を結晶化してみたらイケたので、それを嵌め込む。魔力は問題なく馴染んだ。ちなみに拙者の魔力結晶は、不思議な石だった。光の加減で色が変わる。

 ゴッソリ魔力をもって行かれたので、魔力回復薬を飲み、最後の仕上げをした。


「…………できた!!」


 弓の弦を張れば完成だ。仄かに輝く美しい弓。名前はもう決めている。


「……きれい……」


「朧月と言うのでござる。大事にしてくだされ」


 できたばかりの弓を渡す。モフリル様の弓によく似た、芸術品のように美しい弓でござるよ。


「つる、は?」


「んん……とりあえずはありものを使うか……無くても射れるでござるよ。魔力を多少消費するけど」


「……………ふおお………」


 めっちゃ尻尾を振っているフェリチータたん。かわゆす。ちょっとだけ尻尾を触ったらだめだろうか。見た目クールなのに、しぐさがいちいちかわゆい。テラ萌ゆる。疲れた体に萌えが染み渡る。


「わたしも、ためし、たい!」


「いってらっしゃい」


 そりゃ、試したいよね。拙者は笑顔でフェリチータたんを送り出した。次は拙者の武器を作らなきゃね!ぐふふふふふ。

この後自重?ナニソレおいしいの?とばかりにやらかした貴文が叱られる未来しか見えぬでござるよ。

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