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戦わないで勝ってみた

 黙々と森を歩くシルヴァ殿と拙者。寡黙だが親切な人であるらしく、わざと歩きやすく枝を切ったりしてくれている。


「もうすぐ街道だ」


「ありがとうございます。ついてきちゃった人達はどうするのでござるか?」


「……!」


 シルヴァさんが目を見開いた。拙者のスキル『オタク察知』で気がついて、さっきからマップアイコンで位置も把握しているでござる。オタク察知は…オタクは家族なんかがくるのを察知してエロ等を隠す術に長けているからだと思われる。

 マップスキルは味方が緑、中立が黄色、敵が赤として表示される。ついてきているのは赤が二つ。一定の距離をあけてついてきていることから、魔物ではないと思われる。ちなみにマップは他者には見えない。超便利でござる。


 シルヴァさんは質問に『黙って歩け』とだけ告げて歩調を早めた。ようやく街道に出たらしく、広い道が続いている。かなり道幅があるので、ここならばテントが出せそうだ。


「そいや」


「!??」


 拙者のテントは瞬時組み立てタイプのテント。さらに魔法で『隠蔽』と『結界』の効果があるスグレモノなのでござる。この中で煮炊きもできるでござるぞ!


「ささ、シルヴァ殿も入ってくだされ!」


 ちなみに6人ぐらいの使用を想定しているから、テント内はなかなかに広い。


「これは……付与はなんだ?そもそもどこから出した??」


「隠蔽と結界でござる。発動中は内部の音も匂いも遮断されますぞ。収納魔法が使えるので、そこから出しましたぞ」


「うおぉ……」


 シルヴァ殿は何故か顔をひきつらせつつ中に入った。


「さて…で、坊主。外にいる奴らに心当たりは?」


「………この国のプリンセスに『菓子で釣ってるんじゃねぇよ!命がけで戦ってる幼馴染みに、せめて少しでも旨いもん食ってもらいたいだけだ!そもそもお前が相手にされないのは、性格が悪すぎるからだよ!!バァァァカ!!』と言ったぐらいでごさろうか」


「ぐひゅっ……………確実にそれだな」


「…………やっぱり」


 シルヴァ殿はツボに入ったのか、痙攣しておられる。まあ、皆思っててもなかなか面と向かっては言わないでござろうな。


「あ」


「ぎゃああああああああ!?」


「!?」


 流石は一流の冒険者。瞬時に反応したでござる。あの悲鳴は位置的にトラップが発動しただけなので、問題はないでござる。


「あいや、待たれよ!ついてきちゃった人が落とし穴にかかっただけでござる!」


「………落とし穴?」


「表面は残して、内部のみ掘るのがコツでござる。めっちゃ深くしておいたから、なかなか上がれぬと思われますぞ」


 拙者は初級魔法しか使えぬので、こういった小細工をたくさん考えましたぞ!


「………………なんでまた……」


「かかればラッキィィぐらいの気持ちでござったが……うっかり者の暗殺者もいたものですな」


 とりあえず、上がれないよう油をまいておこう。半径五十メートルぐらいなら、アイテムボックスの遠隔操作ができるのであります。もう一つの赤が助けるのを諦めて迂回した。しめしめ、そっちには………。


「ぐっ!?」


「………ワイヤートラップにかかったようですな」


 動けないようにゴーレム術を付与した縄さんを転送して、さらに捕縛しておいてもらおうかな。


「……とりあえず、捕まえた人達を見てみますかね?」


「………そうだな」





「…………何故こいつは油まみれなんだ?」


「遠隔で上がれないようにしたろうと思ったでござる」


 ナイフを投げてきたが、シルヴァ殿がはじいてくれた。投擲の踏みこみで滑ってしたたかに壁に頭をぶつけてたでござる。あれは痛い。まあ、元気みたいでなにより。あ、ちなみに油は廃油でござるよ。石鹸を作ろうともらったやつでござる。


「これはまた………」


「前衛的でござるな……」


 まさかの逆さ吊りで命のポーズをしているでござるよ。暗殺者さん、めっちゃプルプルしている。なかなかお茶目な縄さんでござるなぁ。


「………殺すか?」


「いや、お願いしてみようかと思うでござる。ええと…拙者を殺したことにしてくださらぬか?さもなくば……このまま放置いたす」


 このまま放置されれば、良くて餓死。悪くて魔物の餌だろう。お、無言ながらも二人の表示が黄色になった。よし、もう一押し!!


「実は、タカ=レイターなどという人間はおりません。それは偽名ですからな。貴殿方は居ない人間を殺せと命じられた。だが、そいつは元から居なかった。貴殿方はタカ=レイターが存在しないと知り、依頼を達成したのです」


 言葉遊びというか、完全に屁理屈でござるなぁ。


「………手ぶらでは、無理だ」


「なら、これに血でも塗ればよいでござるよ」


 着ていたエプロンを渡した。勿体無いが、この偽装が成功すれば拙者とて得をする。


「………承知した。襲わないから下ろしてくれ……」


 暗殺者さんの顔色がヤバい。限界みたいでござるな。油まみれの暗殺者さんは地面を隆起させて出してあげた。二人の表示は緑。解放しても問題ないでござろう。


「………………いいのか?」


「彼らを倒しても、また新しい刺客が来るだけでござるよ。さて、夕飯にしましょう」


「……………………は?」


 テントには軽くあぶったパンにトロ~りチーズ、豚肉ソテーにスープ、温野菜サラダ。


「いやあ、料理というか温めただけで申し訳ないが、拙者腹ペコでして」


「…………うめえ」


「お口に合って良かったでござる」


 はあ…温かいコンソメスープにホッとする。いざという時のため、一ヶ月分は食事をストックしている。早速役にたったでござる。備えあればうれいなしでござるな。


「………お前の事情は、ヒルシュから大体聞いている。困ったことがありゃあ…できる範囲で助けてやる」


「かたじけない。ありがとうございます」


 ヒルシュ殿はとてもいい御方を選んでくれたようでござるなぁ。温かいご飯で身も心もホッコリした拙者は、食器を片付けたら寝てしまったのであった。

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