ご主人様を観察してみた
苦労が絶えないエド君視点になります。
金銭の交渉は俺とご主人様だけで話していた。フェリチータは何も言っていなかったので、ご主人様がそれでいいか確認したところ頷いていた。こいつ、本当にわかってんのか?
今日は疲れたから寝ようとなった時、無駄にもめた。当然床に寝ようとする俺達。悲しいことにそれが当たり前になっていた。
「ダンメェェ!疲れとれない!ベッドで寝る!フェリチータ殿は隣の部屋!エド君そっちのベッド!!」
必死で叫ぶご主人様。マジで?うわ、ベッドで寝れるとか嬉しい。しかし、フェリチータは悲しげだ。
「ひとり、べつのへや、いや」
「「…………………」」
俺は笑顔で隣室に行こうとした。
「ダンメェェ!待ってぇぇ!」
「いや、俺が隣で寝れば万事解決じゃないっすか」
俺の尻平和のためにも、一番いい方法だと思う。
「なんも解決してないでござる!ピュアな彼女いない歴=年齢の妄想力が大爆発でござる!」
「もう、いっそ爆発させて発散させたら?」
「んノォぉぉ!!」
面倒くさい。つか、寝たい。
「じゃあ、こいつと俺が同室で」
「エド、きらい」
「「…………………」」
こ の 野 郎 。
「やっぱりご主人様とこいつが同室で。俺もこいつが嫌いです」
「ぐううううう…………」
結局、ご主人様が折れて俺はひとり部屋になった。シンプルで青と水色の家具により統一された落ち着いた部屋だ。うとうとしていたら、悲鳴が聞こえた。
「キィィヤアアアアアアアア!!」
ご主人様の悲鳴だな。一応確認しに隣室へ。ちょっと覗いてみたが、予想通りの光景だったのでそっと閉めた。
「エド君!エド君ヘルプ!ヘルプミィィィィ!!」
ヘルプだかヘルペが何かは知らないが、助けを求めているのは理解した。
「なんすか。俺、寝たいっす」
「フェリチータ殿をなんとかしてくだされ!」
「ご主人様はお前に興味がないんだとさ。キモいからやめ「違う違うちがあああああああう!!」
違うのか。とりあえずフェリチータも落ち着いたみたいだからシーツで巻く。ちなみに、ご主人様は下着姿のフェリチータに押し倒されていたが起き上がった。
「自分大事に!ノーセクハラ!イエスロリショタ、ノータッチ!!オッケー!?」
意味はわからんが、とりあえず大体のニュアンスは伝わった。
「ご主人様はお前が大事だから手を出さない。ご主人様と寝たかったら、獣化して悲しげに鳴け」
「前半は正しいでござるが、後半!後半がおかしいでござる!!」
ご主人様、諦めろ。こいつ、多分ご主人様を性的に狙ってるぞ。獣人はこうと決めたら超しつこい。冷たく突き放せないご主人様は一生付きまとわれるし、性的に狙われる。面倒だから言わないけど。
「きゅ~ん……」
早速悲しげに鳴くフェリチータ犬。いや、狼か。完全獣化したらしい。
「きゅ~ん………」
瞳をウルウルさせ、ションボリしたフェリチータ犬。これはもう犬だ。狙った獲物のためならば、狼の誇りも尊厳もいらないらしい。
「ぐうぅ………」
ご主人様は頭を抱えた。こうかはばつぐんだ。
「ご主人様、ラウビウとかも一緒に寝たら?」
「SO☆RE☆DA!!」
ご主人様が納得したところでベッドをくっつけてあげた。早速ベッドに陣取るフェリチータ。さっきのは演技だったのか、尻尾をフリフリしまくっている。
床のクッションで寝ていたラウビウやなんとかドラゴンもベッドに上がった。
ご主人様、入らなくね?
「……………拙者、クッションで………きゃあああああ!?」
ラウビウがご主人様が入れるよう場所を開けた。超せまそう。そんな場所に、白いラウビウが容赦なくご主人様をぶん投げ、なんとかドラゴンが枕になる。白いラウビウはご主人様の腹に寝転がって抱っこされていた。ご主人様、寝返り打てないような狭さなのに幸せそうだ。モフモフした生き物が好きみたいだから、幸せなのかもしれない。ラウビウはフカフカしているので、さほど興味がない俺でもちょっと羨ましいぐらいだ。
フェリチータ犬はラウビウに阻まれて近寄れない。ざまぁ。
「大丈夫そうですね。おやすみなさい」
俺はさっさと立ち去った。眠いからもう寝たい。つか、寝る。ご主人様が泣き叫ぼうが、もう起きない。
幸いにもその後ご主人様が騒ぐことはなかった。
しかし、早朝に目覚めて猛省した。
いくら眠かったからって、マジないわ。眠くなると全てがどうでもよくなる悪癖が発動してしまった。俺の目的のために、ご主人様から信頼を得る予定だったのに、適当な応対をやりまくった。どうしよう。
悩んでいたら、ご主人様の悲鳴が響きわたった。
「エド君ヘルプ!ヘルプミィィィィ!!」
どうやら寝ぼけて獣化を解除したらしいフェリチータに抱きつかれて動けないご主人様。どうにかフェリチータを引き剥がし、シーツ巻きにしておく。
「エド君は、命の恩人でござる!ありがとう!そしてありがとう!!」
大袈裟だと思うが、昨日の雑対応を挽回できただろうか。
「どういたしまして。とりあえずフェリチータの服と下着にサイズ調整も刺繍しといたらどうです?」
「エド君、天才!すぐやるでござるよ!!」
そしてすぐ固まるご主人様。
「………下着………は、どうしたら…………」
面倒くさいなぁ、ご主人様。本体に触るわけでもないし、未使用の新品だから気にすんなと言いたい。
「白いラウビウに任せては?」
「エド君、天才!!」
うちのご主人様、賢いのかアホなのかわからんなぁと思った。とりあえず、俺なりに親しくなれるよう頑張ろう。俺の尻平和が保たれる程度の範囲でな。
作者と同じく、エド君は眠いと全てがどうでもよくなるタイプです。ちなみに作者は眠気がゴキや幽霊の恐怖を凌駕しました。
起きてからギャアアアアアアってなりましたがね。詳細を知りたい方は作者まで(笑)




