お手伝いしてみた
まだ半日だというのに、今日は疲れたでござるよ。豪華な晩御飯を食べたらお風呂に入って寝るでござる。
「…………………あれ?」
道を間違えた?銀の剣亭が見当たらない。シルヴァ殿が硬直している。目線の先には新築みたいに綺麗なピカピカの建物。看板には可愛いラウビウが描かれている。拙者が描くイラストに似たタッチでござ……………。
看板には『銀の剣亭』と書かれていた。
「ご主人様?どうしたんです?」
エド君の声が拙者を現実へと引き戻してくれた。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ………!
覚悟を決めてドアを開けると、そこには拙者がスケッチしたのと寸分たがわぬ乙女空間が広がっていた。
「おかえりなさーい」
「あ、おかえり」
「にゃおーん(おかえりなさい)」
『にゃおーん!』
アカネさんとノア君が忙しそうに走り回っている。銀の剣亭はすっかり別の建物みたいになっていた。
「タカ君のラウビウ達のおかげで、ここだけじゃなく部屋も素敵になったのよ!」
見て見て!と部屋に連れていかれた。なんか見覚えがあるなと思ったら、拙者が描いたラフスケッチがそのまま飛び出してきたみたいな部屋達。
「にゃーお(頑張ったよ。ほめて)」
『にゃ~ん』
ラビルビもラウビウも、甘えてきた。ああ、荒んだ心が癒されるでござるよ……。現実なんか忘れて、ひたすらモフモフしたいでござる。モフモフ、幸せ~。
「わふ(主、わしも撫でてよいぞ)」
ラッキーも参戦でござるな?もふもふサンドとか、贅沢でござるなぁ…。モフモフ、幸せ~。
「にゃう(あんただれ?)」
「わふ(お前のような矮小な魔獣に名乗る名はない)」
「ラビルビ、ラッキーは新しい仲間でござる。仲良くするでござるよ」
「にゃ(は~い)」
「わん(主が言うなら仕方ない)」
モフモフに乗っかられながら各部屋を見て回ったが……すごい。掃除しているラウビウや、風呂場に彫刻しているラウビウもいた。
「……ラウビウってスゴいのでござるな」
「……ご主人様、そこ座れ」
エド君が超笑顔でござる。これはもしや……。
「契約時点でかなりのワケアリなんだとは思っていた。思っていたが、ワケアリの方向性が予想外すぎるだろうがああああああ!!」
エド君がキレた。そして、この世界における常識を叫びだした。ラウビウは、最低位の家畜化された魔物であり、知能が低い。臆病だから人にはなつかない。そもそも、裁縫も彫刻もできるはずがない!!のだそうだ。そんなことを言われても、拙者はラウビウ達に裁縫を教えたり仕込んだりしていないでござる。
「みゅうう(ボクはネームドだからだよ。短気なお兄さんだね)」
ラビルビは冷静でござった。そもそも、ネームドってなんでござるか??
「エド君、質問。ネームドって何?」
エド君が首をかしげ、シルヴァ殿が代わりに答えてくれた。
「ネームド?よくそんな言葉を知っていたな。高位モンスターのことだろ!」
「…………………」
「わふわふ(名は魂に刻まれる)」
「にゃう(ぼくはなまえがあるからラウビウのぼすこたいになったんだよ)」
異世界では軽い気持ちで名前をつけちゃダンメェェと学んだでござる。落ち込んでいる場合ではないでござるな。これからエド君とフェリチータたんの歓迎サプライズパーティをしたいのでござる。
※貴文は現実逃避した!
「エド君、フェリチータ殿」
「「はい」」
「お仕事でござる。旅に必要な品を二人で協力して購入するでござる。あ、武器防具と旅装は拙者が作るか一緒に購入なので買わぬように。下着や寝間着は買ってよいでござるよ。寝袋とテントはあるから大丈夫。解体用ナイフや雑貨を揃えてきてほしいでござる」
「……かしこまりました」
「は、い」
二人はお金を受け取り出ていった…がエド君が超早足で戻ってきた。フェリチータたんも戻ってきた。
「ご主人様!奴隷にこんな大金渡さない!!」
叱られた。足りないよりはいいと思うのでござるよ。
「余ったら、返してくだされ。あ、ついでに回復薬の材料があったら、あるだけ買ってきてほしいでござる」
「………まあ、そういうことなら」
「ラビルビ、二人について行って」
心の中でパーティの準備ができるまで、時間を稼いでねとお願いした。
「みゃう(おっけ~)」
ラビルビはフェリチータたんの頭に乗った。きゃわゆい!クールビューティなフェリチータたんにラビルビというプリティモフモフが加わり……きゃわゆいは正義!!ああああ、なぜこの世界にはキャメラが無いのでござろうかああああああああ!!ハァハァ……萌え力がスゴい勢いで補充されていく!!
「ごしゅじん、さま……へい、き?」
「大丈夫ではないでござる!でも、不治の病だから問題ナッシングぅぅ!!」
「びょー、き??」
ああああああああ、フェリチータたんが拙者を心配してくれるだなんて!天使!天使でござるよ!!
「みゃう。みゅうう(しんだりしないからへーき。キミがいるとおちつかないからいくよ~)」
「おち、つかない?」
「み、みゅうう(ごしゅじんさま、キミのことがだいすきだからね)」
「………す、き………」
頬を赤らめてチラッと拙者を見るフェリチータたん。いやね?そりゃね?確かに大好きだけどね??
それは言ったらダメなやつでござるのよぅおぅおぅ!!
「……ごしゅじん、さま。いって、きます……」
かすかに、フェリチータたんは微笑んだ。拙者を蔑むでもなく………天使だ!ガチ天使だあああああああ!!
「ん萌んええええええええぃぃ!!」
小田郡貴文、ガチオタ大学一年生。異世界で萌えを叫びました。うるさすぎてシルヴァ殿に注意されたでござる。ごめんなさい。




