一人すっかり忘れてみた
拙者が床に転げていたら、アイリス殿達が戻ってきた。
「何してるの?」
「……エド君達が人外扱いするので不満を全力で表出しております……」
冷静に考えてみると、こいつマジ何してる感半端ないでござるな……。駄々っ子かってのよ……。
「……ええと……どういうこと?」
アイリス殿は明らかに困惑している。そりゃそうだ。同じ立ち位置なら、拙者もそうなる。
「うちの主様が神じゃないかと言ったらこうなりました」
「ああ……」
「違うって言ってるじゃなーい!」
「神だったんすか?」
「違うから!ただの人間!アイアムヒューマン!!」
「あい?よくわかんねぇっすけど、確か聖女じゃなかった、聖男なんすよね?まあ、神様からなんか貰ってるから神々しいんじゃないっすか?」
ん?神様からなんかもらってる??
「いや、タカさんはまだ加護ないはず……?なのに聖男っておかしいわね。神からコンタクトはないの?」
「なんか、謎の声とは会話してるでござるよ。ええと、ポッポちゃんだったかな?」
「は!?それ上位の使徒じゃない!!ということは、かなりの大神がついてるのね……」
ゴルダ殿が拙者を助け起こしてくれた。そうなんだ?あんな変態なのに……。もしやヲタ神様の使徒なのかしら。
「とりあえず、今後はどうしますか?ご主人様が盛大にやらかしてしまったので、今夜にはモフルンダを出ようと思います。クソ姉は勝手についてくるでしょうが、お二人はどうしますか?」
「もちろん行くわよ。タカさんのご飯が食べたいからね!」
「アイリスが行くなら、俺も行く」
ご飯が食べたいからなんだ?まあ、こっちのご飯は物足りないかもね。素材は良くても味付けがワンパターンだったり素朴だし。スイーツはあまり開発されてないみたいだし。
そんなわけで、フェリス様にご挨拶してモフルンダを出たのだが……。
「次はどこへ?」
「このままさらに国境を超えてドワーフの国であるドブロックに行きます。ドワーフの国はモノ作りの国。金属なんかが豊富です。戦力増強にも繋がるかもしれませんし、あそこに遺跡があると噂で聞いたことがあるんです。ソネクンも賛成しました。有用な施設が残っている可能性が高いとのことです」
「なるほど!」
流石はエド君。すでに次の目的地を決めてくれていたらしい。それにしてもドワーフ!ドワーフってやっぱりお酒好きなのかな?たくさん仕入れておこう。いや、いっそ作ってみる?スキルを作れば行けそうな気がする。
度数が高いやつとか、果実酒作っておこうかな。ドワーフさんたちへのお土産に、お酒のつまみなんかもいいかも!
モフルンダ国境の町で材料を買おうと思ったけど、これまでのことで町は疲弊しており、大量購入は街の迷惑になりそうなので諦めた。
「そういえば、今回は急な出発なので俺が決めましたけど主人様は行きたい場所とかいありますか?」
「……海に行きたいかな。新鮮な魚介、加工してお出汁……。海産物食べたい……」
「いいわね!私も焼きはまぐりとか食べたい!!」
アイリス殿は本当に食べるのが好きなんだなぁ。シジミのお味噌汁って美味しいのよね。貝の出汁って最高……。
「では、次は港町へ行きましょうか」
エド君はあっさり了承してくれた。
「い、いいの?」
「いいも何も、ご主人様が行きたいのなら俺達はどこへだってついていきますよ」
「エド君……」
エド君だけでなく、フェル、シーザ君、アイリス殿、ゴルダ殿も頷いてくれた。ん?あれ??一人足りなくないか……?
「では、先を急ぎましょうか」
「あ、うん」
フェリス様は國の立て直しをしないといけないから当然ついてはこれなかった。もう一人が、足りない。そういえばここ数日とても平穏……!!
「ユージェニス殿……?」
まさか、置いてきた!??
「誰ですか?それ」
エド君めっちゃイイ笑顔!!これは、わざとか!!わざと置いていったのね!?
「正直、あの変態はいなくても不都合がないというか、むしろいない方がタカ様の貞操を守れます」
「……そうですね。いなければエローテーションで不寝番せずに済みます」
「大変ご迷惑をおかけして、誠に申し訳なく思っております」「「「いや、悪いのはあの変態ですから」」」
三人の声が綺麗に揃った。
「まあ、大人だし追いかけたければ追うだろうし……大丈夫でしょ」
アイリス殿もユージェニス殿に塩対応でござるな。
「ああ。なんだか知らんが俺も尻を狙われたし、あまり関わりたくない相手だな」
ゴルダ殿にも迷惑かけてた!!!!!
「そういうわけで、痕跡を消しつつ急ぐわよ!」
全員無言で頷き走り出した。拙者よりユージェニス殿のほうがなんか別の生き物なんじゃないの!?淫魔とかそんなん!!
休憩していたら、エド君がゴルダ殿に土下座していた。幸いアイリス殿が聖女のカン(契約していると察知できるらしい)で気がついて未遂に終わったそうだ。一服盛られて動けなくなったそうな。
あれ?拙者のステータスにいつの間にか『毒無効』スキルが……まさか……盛られてた!?
気のせいだと思いたいが、拙者の尻は思ったより危険に晒されていたのかもしれない。お尻がね!ヒュッてなったよ!




