月女神とダンスを踊ってみた
とりあえず、もうモフルンダで拙者らができることは終わった。フェリス様と王子(そういえば名前知らないや)が何とかするでしょう。戦後処理までは流石にしない。それはモフルンダの人がやる事だからね。
勝利の宴をするというので参加したけど、気持ちは沈んだままだった。
ユージェニス殿が別室で色欲の宴を開催しちゃってエド君がガチギレしたので色んな意味で後始末が大変だったり、シーザ君がレジスタンスのイケメンに告られてお断りして逃亡した際に巻き込まれたり、フェリス様がジュースとお酒間違えて飲んだ結果酔っ払って会場を焦がして消火が大変だったり、アイリス殿がスイーツが足りないスイーツスイーツスイーツって言うからご褒美を兼ねて作ってたら料理人に取り囲まれてガクブルしたり……あれ?拙者楽しめる要素がないわよ!?なんでこんなに次々次々なんか起こるのよ!??
疲れ切ってテラスでぐったりしていたら、フェリチータたんが来た。
あかん、女神がおる。
月の光に照らされたフェリチータたんは、清楚な白いドレスに、シルバーのアクセサリーをつけていた。うわあ……月の女神も裸足で逃げ出す美しさやぁ………。とりあえず拝んでおこう。いや、キャメラ!お客様の中にキャメラをお持ちの方はいませんか!?あ、曽根君が……録画してるのね!ナイスぅ!!
もちろんドレスは拙者が作りました!アクセサリーも拙者が作りました!流石に着付けとメイクはメイドさんがやったので、仕上がりを見たのは今が初めて。いい仕事したよ、拙者!ちなみに、戦えるドレスなんですぞ!!
「貴文様……」
「ひゃい!」
「「………………」」
ダメだ噛んだ。死にたい。顔を真っ赤にして俯いていたら、月の女神が近寄ってきた。まばゆくて直視できません。でも目に焼き付けたい!!
「本来だとマナー違反なのですが、私と踊っていただけませんか?」
「よよよよよよよよよろこんどぅえ!!」
拙者噛みすぎじゃないかな!?泣きたい……。震える手で月の女神の手に触れ……かけたが全力で手汗を拭った。そして改めて手を取る。何かいいにおいするぅ……!手汗……手汗がががががが!!
「あの」
「ひゃい!」
もう噛まないと喋れないのかな……?ちょっと悲しくなってきた。
「右手と右足が同時に動いている上になんだかカクカクしていますが、お疲れなのですか?それとも……似合わない、ですか?」
「このドレスもアクセサリーもフェルのために拙者が心血注いで作った品!似合わぬはずがないのでござるよ!もはや存在自体が奇跡というか尊いので直視できないだけなの!好き!萌え!推せる!もはや神!女神!!(ノンブレス)」
「きゅうん!?そ、そんな……女神だなんて……」
うっかり本音が口からボロボロこぼれ落ちたが、フェルは喜んでいた。すっげーミラクル!!普通ドン引くよね!?
「いや、女神みたいに美しいというか、女神より美しいというか」
「そそそそんなことは……!」
「おっと」
フェルが珍しく足をもつれさせたので反射的に抱きとめた。レベルアップの影響か、以前の拙者なら最悪共倒れしてたと思うけど、軽々と抱きとめることができる。
「すすすすすいません!」
「いや、フェルに怪我がないならかまわないでござるよ」
表情に出てないか不安だが、内心は全く冷静ではない。腰ホッソ!柔らか!めっちゃいい匂いがしたああ!ごちそうさまです!過剰供給ですぞおおおおおおおお!!
手汗が気になるもののテラスからダンスホールに月女神をエスコートする。
「あの、私……お誘いしたものの……ダンスは苦手で」
「んんっ!………拙者もあまり上手くはないけど……こういうのは楽しんだ者勝ちでござる。最悪、手を繋いでくるくる回ればよいのでござるよ」
ダンス苦手とか何それ可愛いかよ!可愛いよ!!曽根君録ってる!?録ってるね!?
そして、ダンスが始まったわけなのですが……。
「タカ様」
「はい」
何故かフェルが膨れている。可愛い。
「ダンス、とってもお上手じゃないですか!」
「いや、実践は初めてでござるゆえ……妹が趣味で習っていたので練習相手はしていたでござるが……」
拙者、そもそもヲタ芸でよくダンスを踊っていたのでそこそこ場馴れしているのと、妹がいつか異世界転移した時のために備えて社交ダンスを習っていたのでその練習相手になっていたからそこそこは踊れる。
さらにレベルアップで全体的な筋力が上がったからか姿勢保持も楽だし、体のキレもいい。
「つまり、妹君以外と踊ったことがないのですか?」
「うん。無いねぇ」
社交ダンスを一緒に習いに行こうと妹にめっちゃ誘われたし興味はあったけど、なんか恥ずかしくて結局習わなかったなぁ。リア充に貶められてた時期だったのもあるかな。あるかも。ダンス自体は好きだったから、習っても良かったかもなぁ。
「タカ様はすごいですね!」
沈みかけた心を一瞬で引き上げてくれる月女神の方がすごいと思うけどね。
「まあ、ダンスは最悪男性がちゃんとしていればそれなりに見えるらしいからねぇ」
妹よ、ありがとう。なんでか巻き込まれて異世界に拙者が来ちゃったけども……社交ダンスはちゃんと役に立ったよ!!
届かぬとわかっていたが、遠い別世界の妹へ敬礼した。
貴文はダンスが大変キレッキレなので同志から神ヲタ芸ダンサータカとして有名です。本人は知りません。
あと、実は歌もすごくうまい。地味にイケボなので、カラオケに行くと妹にガンガン曲を入れられます。自己評価が低いので、好きな曲を聞きたいのだろうなという認識。
妹氏もガチオタ貴腐人です。




