スイーツで国を救ってみた
歩による聖なる小学生ヒャッハーアタック……別名聖なる濡れ雑巾アタックにより、次々と貴族が倒れていく。あの………黒ローブのおじさんが指さした人以外にも当たってるよね!?
「だから雑巾は人に投げたらいけません!」
「いえ、ご主人様。あれで正しいんですよ」
エド君の目はマジだった。エド君も城で何かあったのだろうか。
「え?」
「この国の貴族は人間のクズですから。綺麗に掃除するんです。あの雑巾の使用法は正しいですよ。クズの……汚物の清掃ですからね」
爽やかに毒を吐くエド君。何かあったのかと問えば、アイアの町の事を訴えたが門前払いされたんだそうな。うむ、有罪。内部……それも上層部にまで真の魔王の剣がいたのだろうし、あいつらなあ………貴族にはクソが多かったからねえ。拙者も色々あったなあ。娘を歩の嫁にしたい奴らなんかに嫌がらせされたもんなあ………。こっそり罠作ってやり返したけど。拙者、やる時はやるタイプのオタクでござる。そう簡単には負けないぞ!
そして、浄化の雑巾により浄化された貴族のおっさん達は口々に己の罪を暴露し始めた。横領に汚職……人身売買に幼女趣味、女装趣味……。女装はまあ、個人の性癖だから理解はできないがいいとして……今までよくこの国、存続していたなと思っちゃうぐらいに出るわ出るわ。狸親父な王様も真っ青。
「ええい、何をしておる!奴等は謀叛人だ!騎士達よ、罪人を捕らえよ!」
腐っても国家元首。一番最初に硬直が解けたのは王様で、自白を続ける貴族達を捕縛させた。大半が捕縛されてしまったで。女装はやはり個人の性癖だからか捕まっていない。でも、女性用下着姿で懺悔しないで欲しいの。目に痛いの。触りたくなかっただけかもしんない。あのおっさん、まさか常に女性下着を着て仕事していたのだろうか……あまり考えないようにしよう。
「国王、俺は依頼を果たした。タカはどこだ?俺はあいつと旅に出る」
国王は首を横に振った。
「タカ=レイターは、流行病にかかって死んだ。すまない……。流行病での死去であったため、彼の亡骸はすでに火葬して埋葬してある。望むなら、墓地まで案内をやろう」
いやいや、拙者は元気でござるからね?国王は事の顛末を知っているのか知らないのか……。どっちだろう。どちらにせよ、責任問題だけど。流行病で病死は死体が出せないからだろうなあ。拙者、そういや暗殺者に殺されたって事になってたわ。
「あ?」
歩が超低音ボイスを発した。めっちゃキレていらっしゃる。今の声だけでわかるほど、怒りが込められていた。これは暴れだす一歩手前だ。
「申し訳なかったとは思っている!だが、彼は我らが止めるのも聞かずスラムで奉仕活動をしていたのだ!!それゆえ、流行病に……」
「そこじゃねーだろ」
さらにイラついた声の歩。以前の歩なら間違いなく暴れだすレベルの怒りだが、まだ耐えて……いや、これは演技?演技だな。
「お前、俺に言ったよな?ドラゴン討伐の対価は、タカの安全だって。これは明確な契約違反だ」
「か、代わりに我が娘を妻にやろう!」
「はあ??」
声だけでチビリそうになるレベルの低音ボイスだった。これは演技じゃない。そして、キレたのは歩だけではなかった。
「ご主人様、ちょっと殺ってきます」
「タカ様、ちょっと殺ってきます」
エド君とフェリチータたんもキレてしまった。君達、本当に仲良しで息ピッタリだよね!!
「待ってください!」
おお、シーザ君!シーザ君なら……!
「僕も助太刀します!!」
止めてくれなかった!助太刀してどうするのよ!!二人だけでもオーバーキルなのに、追加戦力はいらないから!!
「アタクシも助太刀するわ!」
「わらわも……祖国の前に奴らを成敗してくれるわ!!」
誰も止めてくれないどころか、討ち入りに行こうとしてる!このままではモフルンダの前にこの国を滅ぼしかねない。そんな中、とても冷静な声が聞こえた。
「仕方ないわよ。あのクソジジイ、タカさんを替えがきくコマか何かと思ってるんだもの。そもそもの価値観が違うのよ」
なるほど。あれれ?アイリス殿の相方がガクブルしているよ??
「そんなクソヤローは、このあたしが倒してくれるわああああ!!」
「倒さなくていいってば!!」
アイリス殿もまったく冷静じゃなかった!!え?一見冷静に見える時の方がキレてる?わかってたんなら宥めてよ!!
「安心して!一撃で仕留めるわ!!」
「破壊力の心配はしてないから!」
勇者って、皆血の気が多いの!?このままでは全員が引き返してしまう!!考えろ、考えるんだ、貴文!!皆に討伐をやめさせるには……どうしたらいい!?
「拙者のお話を聞かない子は、おやつの新作レアチーズケーキ抜きだからね!!」
『ちゃんと聞きます!!』
全員が新作レアチーズケーキに屈した。スイーツは国を救うのだ!………なんちて。
すっかり皆の胃袋を掴んだ貴文であります(笑)




