終わらない夏
狂ったように踊る森本。
リンゴのような色の子供達が並びもせずに座っている。
弾けるように跳んだミヤマ。
「ずるいぞぉ!」
男の子が叫びながら走ってくる。
青と黄色と紫色の世界。
ここに何時からいるのかわからない。
何処から来たのかわからない。
「飽きてきたろ?」
隣の爬虫類が聞いてくる。
「ローリングサンダーマウンテン」
とりあえず適当に返事をした。
そのうちミヤマの飛距離が伸びてくる。スランプとは無縁のようだ。
「好きな楽器とかあるの?」
爬虫類は積極的だ。
「ニシダトシユキ」
とりあえず中二の担任で誤魔化した。
らららランボルギーニ…
すんません
(早く終わらないかな)
森本は盛り上がりに欠けるから、つまらない。
明日になれば何かしら変わるのだろう。だが、今が朝なのか、夜なのかさえもわからない。
思えばわからない事だらけの人生だった。
釣りの楽しさも、歌う歓びも、抱える苦しみも、リーチの興奮も、乗り越えるフィレオフィッシュも、何もかもわからない。
ああ素晴らしき我が人生!!!
「早く帰りたいんだろ?」
(こいつは爬虫類のくせに…)
隣の爬虫類(光秀)が立ち上がる。
つられて子供達もちらほらと立ち上がり始める。
(スタンディング…?)
らららラッキーパンチ…
すんません
そのうちミヤマが手拍子を求める。
(やっと終わった…)
ほっとした隙に森本は三塁を回りホームへと駆ける。
地下鉄からのバックホームはワンバウンドでストライク!
「アウツッ!!」
みりん(爬虫類)の右手が上がる。
「ゲームセット!!」
「最後はツじゃねぇのかよ…」
子供達は拍子抜けしたのか、不満を口にしながら帰っていく。
後で聞いたのだが、ミヤマの最後の跳躍はファールだったらしい。