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58話 エピローグ(二章)

 夢を見た。

 女神様の空間にいる。

 

 ……たぶん、呼ばれるとは思ってた。


 体育座りしている女神様が見える。

 何やってんすか。


 近くまで来ても、こちらと目を合わせない。


「女神様?」

「マコト、私の信者を辞めるつもり?」


「まだ、何も言ってませんよ」

「あの白いヤツに言われたこと、気にしてるんでしょ?」

 白い……大賢者様の言ったことか。


「女神様は、千年前に魔王の味方だったんですか?」

「……さあね」

「信者を辞めるなんて言ってませんよ」

 精霊魔法が使えなくなると困る。

 何もできなくなる。


「信者を辞めても、精霊使いスキルは残るわよ」

「え? そうなんですか」

「あげたものを、取り上げるほど神は狭量じゃないわよ」

 ……そうなんだ。


「どーすんの? やめる?」

「だから、なんでそんな言い方するんですか」

「あの白いヤツの話を聞いて、私のこと怪しいって思ってるでしょ」

「それは、最初から思ってますよ」

 名乗らなかったし、邪神てこと隠してたし。

 しつこく尋ね続けてみるか。


「なんで、俺の前任者(邪神の使徒)は魔王の味方をしたんですか?」

「色々あったのよ」

 どーしても、言いたくないのかなぁ。


「女神様。本当は何が望みなんですか? 教えてくださいよ」

「……普通、逆よ。なんで信者が女神に望みを聞くのよ」

 呆れた目で見られた。


 しばらく、無言が続く。

 ぽつりぽつりと、女神様が話しだした。



「……私が物心ついた時、ティターン族は神界戦争に負けた後で、誰もいなかったわ。全員、タルタロスに囚われて私ひとりだった」


「しばらくは、巨神族のじいたちと一緒に過ごしたわ。でも、彼らも聖神の連中に挑んで、みんな殺されたり、封印されてしまった……」


「それから千五百万年以上ずっとひとり。なんとか、仲間を助け出そうと色々やってみたけど、結局、海底神殿に閉じ込められちゃって……」


「もう、一人じゃ打つ手が無い……」


「それでも私は、みんなを助け出したい……」



 ティターン神族の仲間を助け出す。

 それが、女神様の本当のお願いなんだろうか。


 でも、ティターン族が封印されてる場所は人間じゃいけないらしいし。

 そもそも大賢者様の言っていたことが、ティターン族の助けになるのか?


「千年前に、ノア様の使徒が勇者を殺したのはなぜです?」

「悪神の連中がね。魔王に味方して、勇者を殺せばティターン族を助けるって言ってきたのよ」


 あ、悪神?

 初めて聞くけど、そんなのもいるのか。


「悪神族は、魔族や魔物を生み出した神よ。聖神共と争ってるわ。ただ、結局約束は守られなかったけどね……」

 寂しげに、ノア様は言った。


「じゃあ、今回は俺に勇者を殺させたりはしないんですね?」

「そもそも、勇者に勝てるの? マコトが」

 忌竜を一撃で粉砕していた桜井くんの姿を思い出す。

 ……ぜってー、無理だわ。


「千年前と今じゃ、全然状況が違うわ。当時は、地上を大魔王と魔族が支配してた。人間は絶望して、聖神への信仰心が弱まってたの。だから、悪神側のほうが有利だと思ったのよ」

「はぁ……なるほど」


「それを反省したのか、今の地上じゃ生まれた瞬間に、どこかの女神の信仰に入るように義務付けてるのよ! これじゃあ、私の信者にできないじゃない!」

 女神様が声を荒げる。


「だから、マコトのクラスメイトが異世界から来た時は、チャンスだと思ったの。日本人は無宗教の連中だし」

「でも、みんなスカウトされちゃいましたね」

「残ったのがあなたよ。しかも、私の魅了魔法が効かないとか、完全に計算外だし……」

 うちの女神様は腹黒いなぁー。


「何言ってるのよ。信者を離れさせないために、いい夢を見させるなんてどこの女神もやってるわよ」

「……そうなんですか」

 あまり聞きたくない話だ。


「で、女神様はこれからどうしたいんです?」

「……聖神族のチカラの源は、信仰心よ。信者からの信仰心が多く強いほど、やつらの支配力は強まる。逆に、信者が絶望するような事態になれば、信仰心が減って、聖神族のチカラが弱まる」


 人間が絶望するような事態……。

「大魔王の復活ですか」

 あと数年で、それが起きるらしい。


「でも、魔王の手先になるのは嫌ですよ? 俺は」

「わかってるわよ。あいつらはもう信用しないわ」

 うーん、ややこしいな。

 

「そうそう、白いヤツが言ってた通り、大魔王に地上を支配されると人間は奴隷以下の扱いを受けるわよ。千年前は酷い状況だったもの」

 それは、桜井くんに頑張って欲しいけどな。

 やっぱりみんなの力を合わせないと駄目なのかなぁ。


「色々情報が散らばっているのでまとめますけど」

 頭に手をあてて、情報を一つ一つ整理する。 


「女神様の願いは、


1. 数年以内に復活する大魔王の脅威を何とかする

2. 聖神族への信仰心を弱めて、聖神族のチカラも弱める

3. 聖神族のチカラが弱まれば、ティターン族を助けられるかもしれない


って、ことですか?」

 できるのか? そんなこと。

 滅茶苦茶ハードル高いんですけど。


「私はたった一人の信者に、そんな無茶言う気はないわよ。マコトには自由にさせてるでしょ?」

 確かに、水の神殿を出た直後にそんなお願いされてたら即行辞退してた。


「大迷宮へ行くように言ったのは、友人と再会させてあげようっていう善意からだし」

 ね? と可愛い顔でいってくるノア様。


「でもね、今がチャンスなのよ。ここ千年は聖神族への信仰心が強くなる一方だった。それを不愉快に思っている悪神族が、本腰を入れて魔族に地上を攻めさせようとしてる。そこに上手く割り込めるかもしれない」

「割り込むってのは、具体的に何をすれば?」


「聖神族が選んだ勇者の代わりに、マコトが活躍するのよ。そうすれば、聖神族はアテにならない、マコトの信じる神のほうがいいんじゃないか? ってみんな思うでしょ?」

「そんな、うまくいきますかねぇ」

 不安だ。

 

 そんな心を読んだのか、女神様の表情がふっと緩む。

「まあ、強制はしないわ。マコトの自由にしなさい」


 ふーむ。

 自分で選べってことか。

 でも、大賢者様が非常に気になることを言ってたんだよなぁ。


「俺のセンパイの邪神の使徒は、頭がおかしくなってたらしいですが」

「あ、あれは、あいつが悪意がある言い方してたのよ。私の魅力にメロメロになった信者がちょっと、おかしくなってただけなんだから! 本人は幸せそうだったわよ!」

 う、うーん?

 それって幸せなんだろうか。

 悪徳宗教にのめりこんで、本人だけが幸せだと思っているパターンでは?


「どうせ、マコトには『魅了』が効かないんだから関係ないでしょ」

「そーですけど……」


「で、どーするの?」

 座り込んだままの女神様が見上げてくる。



邪神ノアの誘いに乗り、世界の体制を引っくり返しますか?


 はい

 いいえ ←



 …………過去最大に悩ましい選択肢だ。


 ノア様を改めて眺める。

 見た目は、神々しく、美しく、愛らしい少女だ。 


(たった一人で、聖神族に挑み続けてきたのか……)


 神話の時代から、たったひとり。

 正直、想像もつかない。

 俺がこの異世界に来て、1年くらい一人で修行していた何万倍の孤独なのか。


 ノア様は、水の神殿を出てはじめに俺に声をかけてくれたひと(女神)だ。

 下心はあったにせよ。


 グリフォンと戦って、生き残ることができたのはノア様の加護のおかげだ。


 精霊魔法は、ノア様に貰った。


 さーさんや桜井くんとも再会できた。

 

(俺は貰ってばっかりだ)


 まだ、何も返せてない。


「どーする?」

 ノア様は頬杖をついて、こっちを眺めている。

 もう一度、選択肢を見る。



邪神ノアの誘いに乗り、世界の体制を引っくり返しますか?


 はい ←

 いいえ



 この世界は、聖神族に支配されている。

 そして千年前の前任者と違って、悪神族とやらとも敵対しないといけない。

 この世界でたったひとりの邪神の使徒だ。


 つまり……『世界の敵』だ。


(難易度バランスおかしいだろ……)


 でも、いいや。

 答えは最初から決まってた。



「女神様のお願い、一緒に実現しましょう」



 ノア様の前に跪き、目線を合わせて俺は答えてしまった。


 ……ああ、俺も実は魅了魔法にかかってしまったのだろうか。


「ありがとう、マコト」

 ノア様の笑顔は眩しかった。



 ――こうして俺は、正式にノア様と共に世界の転覆を狙う、邪神の使徒となった。


二章が終了です。

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― 新着の感想 ―
ルーシーの服、普通に暑そう
[一言] 打算的とは言えノアがいなかったらマコト終わってたんだし妥当な判断な気がするけどな 怪しいとか怪しくないとか正義か悪かとかじゃなくて、自分の恩人だから乗ってやるかーってだけの話じゃないの
[良い点] まことは良い信者だなぁ 女神様かわいいしなぁ
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