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【本編完結】信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略  作者: 大崎 アイル
第十二章 『あふたーすとーりー』編

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376話 高月マコトは、北極大陸の調査をする

「おかえりー、ジャネさん」

 先発調査を名乗り出たジャネットさん率いる天馬(ペガサス)部隊が戻ってきた。


 北極大陸はかなり寒かったようで、全員の顔がやや青白い。


「ただいま戻りました……あの、高月マコト。外で待っていてくれたんですか?」

「うん、魔法の修行をしてたから」


「…………」

 水の精霊がいっぱいいて楽しいからね、というと変態を見る視線を向けられた。


「ほら、みなさん中に入った入った」

 飛空船のデッキは寒いので皆を室内に入るように促す。

 

 ちなみに飛空船は氷の大地に着陸させてある。

 地球とは異なり、こっちの世界は北極『大陸』なので、飛空船を停めても氷が割れたりはしない。


 ペガサスたちは室内にある馬小屋へつなぎ、俺とジャネットさんたちはみんなが待つ会議室へと向かった。




 ◇




「結論から言うと魔物の群れはまったく()()()()()()()()()()

 それがジャネットさんからの報告だった。


「まったく……? それは妙だね」

 桜井くんが腕組みをする。

 何気ない仕草すらモデルのようにきまっている。


「どのあたりまでを調査したのでしょうカ? 北極大陸は広いですからネ。見落とした可能性ハ……」

 ニナさんが地図を広げてくれた。


「では、我々が調査をした箇所をチェックしますね」

 ジャネットさんが赤いペンで、次々に『✕』をつけていく。


「我々が調査した範囲はこれら20箇所です。最終迷宮(ラストダンジョン)『奈落』の周囲を中心に探索しました」

「この短時間でこの数を!? 凄いですな!」

 ふじやんが驚いているところを見ると、かなりジャネットさんは仕事ができるようだ。


「うーん、これは私たちの出番はなさそうね、アヤ」

「私は最初から外に出るつもりないもんー」


 ルーシーもジャネットさんの仕事ぶりに感心している。

 さーさんはあったかそうなセーターを着てココアを飲んでいる。

 完全に観光気分のようだ。


「でも……北極大陸の魔物って保護色で見つかりづらいって言うし、見落としの可能性は……」

 というのは横山サキさん。


「ええ、その可能性はあります」

 ジャネットさんはあっさりと頷く。


「我々も北極大陸に生息する魔物の姿は発見しています。氷の狼(アイスウルフ)白の獣(ホワイトビースト)を発見していますが、いずれも魔物の暴走(スタンピード)という規模ではありませんでした」


「であれば、見落としの可能性は低そうですな……」

「ですが、先日の報告がまったくの誤報とも思えませんが……」

「困りましたネ。魔物の暴走(スタンピード)の規模を調査するはずが、そもそも魔物が見つからないとハ……」

 皆が顔を見合わせて黙る。

 

 しばし無言が部屋を支配した。


 次の行動(ネクストアクション)を誰も提案できない。


(つまり情報が足りないってことだな)


「じゃあ、そろそろ俺が……」

 うきうきと出かけようとした時。


「待ちなさい、マコト」

「ストップだよ、高月くん」

 ルーシーとさーさんに腕を掴まれた。


「どうしたの? 一緒にくる?」

 俺が聞くと。


「あのね、マコト。さっきのジャネットさんの報告を見たでしょ? かなりの広範囲を部隊(チーム)で効率的に探索し終えてるの。それをマコト一人がふらっと出かけて異変が見つかるわけないじゃない」

「あと、北極大陸は景色がずっと同じだから帰還魔法がないと迷っちゃうよ。高月くんって、使える?」


「いや、それは使えないけど……でも、水の大精霊(ディーア)や水の精霊がいっぱいいるし」

 なんとかなるんじゃなかろうか。


「私だってマコトが魔物に襲われる心配はしてないけど、探索は専門家(プロ)に任せたほうがいいわよ」

「そうそう。迷子になっちゃうから、飛行船で待ってましょうねー」

「…………わかったよ」

 二人に説得され、俺は北極大陸の散歩を断念した。


 

 その後、一日おきに飛空船の場所を変えて探索をし、七日間何事もなければ『異常なし』として報告する方針に決まった。




 ◇三日後◇




 本日も異常なし。


 たまーに、遠くのほうで氷の狼(アイスウルフ)の姿がちらっと見えるが、すぐに姿を消してしまう。


 実に平和な北極大陸。


 俺は水の精霊たちと一緒に、魔法の修行中だ。


「右手で遅延魔法、左手で加速魔法。…………別に意味ないなこれ」


 運命魔法の修行がてら、新しい魔法でも生み出せないかと試行錯誤していたが上手くいかない。


 運命の女神(イラ)様は、新しい魔法を1秒で創り出すんだけど。


 やっぱり女神様は凄いな。


「退屈そうですねー、我が王」

 俺の様子を見て、ディーアが話しかけてきた。


 ちなみに、場所は飛空船のデッキ。


 空は晴れているが、風が強いためか周囲は吹雪いている。


 そのため外に出ている物好きは、俺だけだ。


「やることがないからね」

「では、一緒に奈落でも行きませんか? 先日は白いちびっこがいてゆっくりできませんでしたし」 

 この前の冥府へ行った時のことだろう。


「勝手な行動をすると怒られるからね」

「我が王に指図するとは越権ですよ、あの女どもは」

 水の大精霊(ディーア)がぷりぷり怒っている。


 ルーシーとさーさんが俺が一人で出かけるのを禁止しているのを、ディーアはお怒りのようだ。


「まぁ、冒険者歴は二人のほうが長いからね。ベテランの意見を尊重するよ」

「我が王がそう言うなら良いですが……」

 そんな会話をしていると。


「高月くん、ずっと外にいるの?」

 話しかけてくる奇特な人物がいた。


「暇だから」

「あはは。サキが心配してたよ。高月くんが風邪引くんじゃないかって」

 桜井くんだった。


「我が王は風邪など引きませんよ」 

「そうなんだ? 高月くんは凄いね」

「ふふん、そうでしょう!」

 何故かディーアが受け答えしている。


「桜井くんこそ、寒くないの?」

「今日は太陽がでてるからね」

「ああ、たしかに」

 空を見上げると薄く太陽の光がこちらを照らしている。


 周囲は雪が舞っているが、空から降っているのでなく強い風によって舞い上がっている。

 

 太陽の光が届けば『光の勇者』である桜井くんは寒さを感じることもない、らしい。


「ところで高月くんは、どう思う? 魔物暴走(スタンピード)について」

「うーん、一応魔物の気配はそこそこ感じるんだけどね。これがいつものことなのか異常なのかがわかんないね。北極大陸には詳しくないから」


「普段から人がほとんどこない放置された場所らしいからね……。最終迷宮から魔物がやってくることも多いから、魔大陸よりも魔物の数はいるらしい」


「にしては、ぱっと見は全然いないんだけどねー」

 飛空船の周囲にはどこまでも白銀の大地だけが広がっている。

 地上の魔物は見当たらない。


「海の中にいるのかな?」

「なるほど……」

 となるといよいよ俺の出番では?


 流石にジャネットさんも北極の海の中を調査したくはないだろうし。

 

 そんな俺の考えが顔にでたのだろうか。


「勝手に出かけちゃだめだよ、高月くん」

「桜井くんまで言うか」

 流石に断りもなく一人でふらっと出かけたりはしない。


「にしても、もう少し冒険っぽいことができると思ったんだけど」

 めずらしく桜井くんが愚痴っぽいことを言っている。


 確かにせっかく普段の多忙な生活を抜けてのんびりできているけど、待っているばかりじゃつまらないよな。


「よし! じゃあ、ちょっとそのへんを一緒に探索しようか!」

 俺が声をかけると。


「えっ! いや、でもこの辺の探索は午前にジャネットが終わらせたよね?」

 桜井くんが目を丸くする。


「奈落の二層くらいまで行ってみよう! 最終迷宮の中は探索してないって言ってたし」

「うーん、それは最終日にする予定じゃ……」


「何回か探索してもいいんじゃない?」

「いいのかなー? まぁ、ノエルも高月くんと一緒なら判断は任せると言ってたし」

 お。

 これはいいことを聞いたな。


 ノエル女王陛下、ナイスな指示だ。


「よし! じゃあ、ルーシーとさーさんに見つかる前に行こう!」

「僕もサキに見つかると止めれそうだし、そうしようかな」

 話がまとまりそうに成っていた時。



 ………………ズズズズズズズ



 小さく地面が揺れた。



「我が王」

 水の大精霊に短く呼ばれた。

 桜井くんの表情がさっきまでの穏やかなものから真剣なものにかわる。


「高月くん、この地震は……」

「やっと異変と出会えたね」

 自然の地震ではない。


「藤原くんたちに声をかけてくる!」

 桜井くんが飛空船の室内へ向かおうとしていると。


「マコト! 何があったの?」

「高月くん、桜井くん。状況は?」

 ルーシーとさーさんが空間転移で現れた。


 さすがは水の国で一番の冒険者コンビ。

 判断が早い。


「原因はあれだね」

 俺は1キロ以上離れた白い大地を指出した。



 そちらでは()()()()()()()()()



「な、なにあれ……?」

 ルーシーが呆然と呟く。 


「魔物の群れだろ。やっと見つかったね」

「数が多すぎるよ! 自然発生の魔物暴走なんって一万もいればいいほうだよ!」

 さーさんが叫ぶ。


「僕は魔物の群れを見たことはほとんどないのだけど、あれは……10万や20万どころじゃないね。下手をすると50万体以上いるかもしれない……」

 桜井くんの言葉が言い終わる前に



 ………ブオオオォォン!



 低い稼働音を響かせながら、飛空船がゆっくりと離陸を開始した。


 同時に複数の足音が響く。


「高月マコト! 魔物が出たのですね! なら、調査は私が…………って、え?」

 勇んできたジャネットさんが、魔物の群れの数を見て絶句している。


 あとからやってきたふじやん、ニナさん、横山さんも同じだった。


 飛空船はゆっくりと上昇していく。


 それに伴って、魔物の群れの全体が見えてきた。


 白銀の大地を埋め尽くすような魔物の群れ。


 それが()()()()()()()()


 その様子に俺は、かすかな既視感があった。


「千年前に戦った100万の魔王軍より多そうだな」

「「「「「!?」」」」」

 俺の言葉にその場にいた全員がぎょっとした表情になる。


「マコトって……その魔王軍と戦ったのよね? こんなにいたの……?」

 ルーシーが恐る恐る尋ねてくる。


「多分、こんなもんだったよ」

「高月くん……ヤバ」

 

「急ぎ、本国へ報告しましょう!  これは我々の手に余ります!」

「そうですな。まずは通信魔法で報告を入れつつ、我々もここを離れるべきでしょう」

 ジャネットさんとふじやんの会話が聞こえてきた。


 まぁ、魔物の群れの確認はできたしそれが妥当な判断だろう。


 が、気になることがあった。


「もう少し調査したほうがいいんじゃないかな」

「高月くん! 何を言ってるの」

 横山さんからツッコまれた。


「何か気になることガ……?」

 ニナさんも100万を超える魔物の群れに青い顔をしている。



「多分、あれは魔物の暴走(スタンピード)じゃなくて『率いている』やつがいるよ。あんな綺麗に魔物が並ぶことはない」


「そうだね……僕もそれは気になってた」

 俺の言葉に、桜井くんが頷いた。

 

「で、ですが! それを確認することは……」



()()()()()()()()()



「…………は?」

 俺が当然の言葉を言うと、ジャネットさんが大きく口を開いて固まった。


「マコト! あれに近づく気!」

「ダメだって! 危ないよ!」

 ルーシーとさーさんに止められたが、今度は引くつもりはなかった。


「大丈夫だって。ここは水の精霊が多いし、なんといっても光の勇者(さくらい)くんもいるから」


「ちょ、高月くん!? リョウスケを連れていくつもり!?」

 横山さんが当然反対してくるが。


「僕が前衛で、高月くんが後衛でいいかな。太陽がでている間なら、問題ないと思う」

「リョウスケ……」

 桜井くんはやる気のようだ。


 桜井くんの表情を見てか、横山さんもそれ以上強くは言ってこなかった。


「ゆくのですかな? タッキー殿、桜井殿」

 ふじやんは表情は強張っていたが、止めてはこなかった。


「そのための調査隊だからね。魔物の暴走か、魔物を率いる魔王がいるのかじゃ全然違う。確認してくるよ」

「気を付けてくだされ。決して無理をなさらぬよう」

 

「もちろん。ルーシー、さーさん。飛空船のみんなを任せたよ」

「無茶しないでよ、マコト」

「飛空船のことは心配しないで、高月くん」


 ルーシーとさーさんに「ありがとう」とお礼を言う。


「リョウスケ……」

「大丈夫だよ、サキ」

 桜井くんが横山さんを抱きしめている。

 うーん、絵になるな。


 俺もやったほうがいいのかな?

 と思ったが、やめておいた。


 皆と簡単な挨拶は済ませた。


「行こうか、桜井くん」

「わかった、高月くん」


 心配そうな皆の顔に見送られ、俺と桜井くんは飛空船から飛び降りた。


■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

 ページ下の「ポイントを入れて作者を応援~」から、評価『★★★★★』をお願いします!


■次の更新は、2025年8月25日です。


■感想返し:

>マコトとふじやんと桜井君のやり取りが友達同士そのもので、とても良かったです。


→この三人の絡みは書きたかったので満足。


>桜井君の回だと思ったら、ジャネさん回だった。


→桜井くんはこれから活躍……するはず。



■作者コメント

 しばらく多忙のためゆっくり書いております。



■その他

 感想は全て読んでおりますが、返信する時間が無く申し訳ありません


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