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【本編完結】信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略  作者: 大崎 アイル
第十二章 『あふたーすとーりー』編

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373話 佐々木アヤ その4

4月25日は『攻撃力ゼロから始める剣聖譚 2』の発売日です!

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挿絵(By みてみん)

「……大姉様」

 さーさんのつぶやきが聞こえた。


 どうやら探し蛇女(ラミア)は見つかったようだ。


 長い髪のすこし気だるげな美人の蛇女(ラミア)だ。


「…………えっ!? あんたはっ!?」

 胡乱げにこちらを見ていた長い髪の蛇女(ラミア)の目が見開く。


 さーさんが、変化魔法を解いてラミア族の姿になった。


「くそっ!」

 さーさんのお姉さんが顔を引きつらせ、逃走を試みる。


 ダンッ! と地面を蹴る音が響く。


(はやい)

 流石、蛇女(ラミア)族の運動神経だ。


「待って! 大姉様!」

 さーさんがそれを追おうとする。


 が、未来視でさーさんのお姉さんの逃亡を知っていた俺は、先手をうつことができた。


水の大精霊(ディーア)、捕まえて」

「もう捉えてますよ、我が王」

 俺がお願いをするよりもはやく、ディーアが水魔法で作られた鎖でさーさんのお姉さんを身体をぐるぐる巻きにしている。


「は、はなせ!」

 さーさんのお姉さんが、バタバタともがく。


「…………」

 そこへさーさんがゆっくりと近づいていく。


 空気が張り詰めている。


 その時、トントンとルーシーに肩を叩かれた。


(どうしたの?)

(私は離れておくわ。聞かれたくない話もあるだろうし)

 と俺に耳打ちした。


「ねぇ、カルミラさん。アヤとお姉さんの家族の込み入った話みたいだから、一緒に別の場所にいかない?」

 と(ダーク)エルフのカルミラさんに声をかける。


「ええ、わかりました。ところでルーシー様は……」

「呼び捨てでいいわよ。てか、カルミラさんのほうが年上でしょ?」


「とはいえ、竜王様の奥様を呼び捨てには……」

「えー、奥様って~。照れるなぁー」


 二人は会話しながら歩いていく。


「ちなみに、ルーシー様はウォーカー姓ですよね?」

「そうよー、曽祖父(ひいおじいちゃん)の名前がジョニー・ウォーカー。知ってる?」


「実は……私の名前はカルミラ・J()()()()()()()でして」

「えっ!?」


「私の曾祖母がジョニー・ウォーカーと関係を持っていたようで……。ただ、大魔王様を倒した勇者パーティーの仲間ですから、あまりこの名前を大っぴらにはしていなかったのですが……」

「うっそ! ちょっと、もっと詳しく話してよ!」


「ええ、もちろん。実はもっとルーシー様とは会話をしたくて」

「もうー! 呼び捨てでいいって!」


 声が徐々に遠ざかっていった。


 なんか、そっちの会話も気になるんだが。


 さーさんのお姉さん探しのはずが、まさかのルーシーの親戚まで見つかった。


(ジョニーさんは子孫いっぱいいるんだなー)


 そーいえば、大魔王と戦う前日にダークエルフの女性と朝帰りしたってアンナさんが言ってたっけ?


 ジョニーさんにはよく「マコト殿はどんな時も冷静沈着かつ大胆不敵だな」と言われてたけど、ジョニーさんも大概だと思います。


 一方、さーさんとお姉さんの会話は緊迫している。


「……………………私を殺しにきたんでしょ」


 さーさんのお姉さんはすべてを諦めたように、地面にへたりこんでいた。


「………………」

 さーさんは捕まったお姉さんを冷たい目で見下ろしている。


(俺もどこかに行ったほうがいいかな?)


 迷った末、俺は水魔法でさーさんのお姉さんを拘束したままルーシーが歩いていったほうへ向かおうとして……。


「高月くんはここにいて」

「……わかった」

 去らないほうがいいらしい。


 俺はだまって、その場に残っていた。


「…………」

 さーさんのお姉さんは生気のない目をしている。


 逃亡を諦め、生きることも諦めた目だ。


「…………」

 さーさんは何も語らない。


(部外者である俺は、何も言わないほうがいい気がするけど……)


「あの……さーさん?」

 沈黙に耐えかねて、つい話しかけてしまった。


  

「大姉様……なんで、あんなことしたの?」



 さーさんが口を開いて、ポツリと言った


「…………」

 今度はお姉さんが目をそらし、何も言わない。


 さーさんと俺は静かに返事を待った。


 水の大精霊(ディーア)は、空気を読んだのか気がつくといなくなっている。


 沈黙が続く。


 さーさんは動かない。


 やっと蛇女(ラミア)が口を開いた。


「…………悪かったよ」


 出てきたのは謝罪の言葉だった。


 それまで冷静だったさーさんの表情が一変する。


「悪かった!? 大母様と姉妹が全員死んだんだよ!! 大姉様が鳥女女王(ハーピークイーン)に隠れ家への入口を教えたせいで!」


 大きな怒鳴り声が響いた。


「…………私の見立てが甘かった。ハーピーとは長い間、縄張り争いをしてたけど……まさか、人間の魔法使いを操って家族を皆殺しにするなんて…………思ってなかった。少し脅すだけだって……。気がつくと私も殺されかけて……逃げるので精一杯だった」


 長い髪のラミアの口調は弱々しい。


 ……ぎりっ、とさーさんの歯ぎしりの音が聞こえた。

 

「もう一回、聞くよ。なんであんなことしたの?」


 怒りを抑えるような口調で、さーさんが尋ねた。


 次の返事はすぐだった。


「あんたが妬ましかったんだよ! 生まれてすぐのくせに、誰よりも強くなって! 私の意見にも逆らうし、あげく勝手に群れを率いてる。私は……私が、大母様のあとを継ぐって思ってた。けど……このままだと追い出されるのは私だと思った。だから…………ハーピーの手を借りてでも…………馬鹿なことを……したよ。…………全部私が悪いんだ……だから、……殺しなさいよ」


 さーさんのお姉さんは、最初は威勢よく。


 徐々に声が小さくなり、最後は項垂れたままになった。


 さーさんがゆっくりと近づき、顔を覗き込む。


 さーさんとお姉さんの距離は、手を伸ばすとお互い掴めそうなほど近い。


(危険じゃないか?)


 とも思ったけど、見たところお姉さんの魔力や闘気は強くない。


 何よりすでに戦意を失っていた。



「私も言わないといけないことがあるの。大姉様」


 

「…………?」


 さーさんの言葉にお姉さんが、怪訝そうな表情になる。 

 

「私……異世界から転生してきたんだ。前世は人間なの」


「…………あんた、何を言って」


「他の姉妹に比べて私が強かったのは、異世界人として女神様から強い能力(スキル)を貰ったから。ズルしてたんだよ」


「……あんたがスキル持ちだったのは大母様から聞いてたよ。別に悪いことじゃないだろ」


「私はいずれみんなのもとを去るつもりだったの。私は人間を襲いたくなかったし、群れを率いるつもりもなかった」


「…………そうか。…………だったら、……私は何のために」


 さーさんのお姉さんは、自虐的に呟いた。


「そうだよ。大姉様は何もしなくてよかった。私はいずれいなくなってた。大母様のあとを継ぐのは、大姉様になるはずだった。…………馬鹿なことをしたんだよ」


「…………」

 お姉さんは俯き、何も言い返さない。



()()()()、大姉様」



「え?」

 お姉さんが驚いた顔で、ぱっと顔を上げる。


「あれ?」

 これは俺の口から出た声だった。


「行こう、高月くん」

「いいの? さーさん」

 家族を裏切った姉に復讐するのは、さーさんの目的の一つだったはずだ。


 少なくとも大迷宮でさーさんに再会した時から、そう聞いている。


「いいよ。一言、伝えたかっただけだから」


「ま、待って! 待ちなさいよ!!」

 ずっと大人しかったお姉さんがもがくように暴れる。


 さーさんは返事をしない。


「私を殺すんじゃないの!? 家族を裏切って……私のせいでみんなが……!!」


「その行為に意味はなかったけどね」


 冷たい声でさーさんは返した。


「なら! ……私を殺しなさいよ! あんたの手で!!」


 さっきまでとは態度が違う。


 てっきり復讐されるのを恐れていたのだと思ったが、それだけではなかったらしい。


「こんな場所で惨めに生き延びて…………、生き恥を晒すなら……あんたが殺せばいいでしょ!」


「…………」

「……さーさん?」

 無言でお姉さんに背をむけているさーさんに話しかけた。


 ちなみにお姉さんを拘束していた水魔法は解いている。


 それで逃走するならそれまで、と思ったが逃げようとはしない。


(罰を……受けたがっている?)

 

「…………大姉様」

 さーさんが振り向き、ゆっくりと髪の長い蛇女(ラミア)に近づく。


 ラミアは今度は逃げなかった。 

 

 さーさんとお姉さんが向かい合う。


 身長はお姉さんのほうがやや高い。


 が、身に纏う闘気(オーラ)には100倍くらいの差がある。


 さーさんが本気になれば、お姉さんの首は一瞬で落ちる。


 それが本人にもわかっているのか、髪の長い蛇女(ラミア)は身体が震えている。


「こ……殺しなさい……よ」

 震えながら、お姉さんが言った。


 ……すっ、とさーさんが無言で右手を上げる。


 バチン!! と大きな音がして髪の長い蛇女(ラミア)が吹き飛んだ。


 地面を数回バウンドして、倒れる。


「……けほっ」

 そして()()()()()()


 殺してはいない。


「これで終わりね」

「…………な、なんで?」

 お姉さんは理解ができない、という表情でふらふらとこちらへくる。

 

「……もういいでしょ、私の気は済んだから」

 さーさんの表情が暗い。


「よくない! 私のせいで家族が死んだんだから、あんたが……私を殺すべきなのよ!」


「いやだよ!! なんでたった一人の姉妹を殺さなきゃいけないの! 絶対に嫌!」


 お姉さんよりも大きな声でさーさんが怒鳴る。


「あんた……私を恨んでるんじゃ……」

「恨んでるよ! 憎いよ! 大母様や姉妹を返してほしいよ! でも…………もう、私の家族は……大姉様しかいないんだよ……」


「…………」

「…………」

 お姉さんとさーさんは至近距離で見つめ合ったまま動かない。


 ただ、さっきさーさんにふっ飛ばされたからかお姉さんはふらふらしている。

 軽い脳震盪を起こしてそうだ。


「水魔法・癒やしの水(ヒールウォーター)

 俺はお姉さんに回復魔法をかけた。


 お姉さんが驚いた表情をしている。


「さーさん、もういいの?」

「うん、高月くん。ありがとう」


 さーさんは、すたすたと歩いていく。


 さーさんのお姉さんは、驚いた表情のまま立ちほうけている。


 さーさんのお姉さんは仄暗い森で、ずっと暮らしていくのだろうか。


 あまり生活環境はよくなさそうだし、なにより場所がわかりづらい。


 もう二人は会うことはないんだろうか。


 ここで、ふと思い出したことがあった。


「高月くん? どうしたの?」

 ついてこない俺に、さーさんが声をかけてくる。


「ちょっと、聞いておきたいことがあって」


 少し迷った末、俺はさーさんのお姉さんに声をかけた。



「お姉さんは魔都での仕事に興味ありませんか?」

 

■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

 ページ下の「ポイントを入れて作者を応援~」から、評価『★★★★★』をお願いします!



■次の更新は、【2025/5/25】



■感想返し:

>さー次回は惨劇だ〜っ!


→もともとは復讐する予定でした。

 が、色々考えて今回のような着地に。



■作者コメント

 カルミラさんは、千年前の魔都でジョニーさんが朝帰りした時のダークエルフの女性との間の子どもの子孫ですね。


 攻撃力ゼロのコミック2巻、よかった買ってくださいね。


 あと信者ゼロの13巻も書いてますからね!



■その他

 感想は全て読んでおりますが、返信する時間が無く申し訳ありません


 更新状況やら、たまにネタバレをTwitterでつぶやいてます。

 ご興味があれば、フォローしてくださいませ。


 大崎のアカウント: https://twitter.com/Isle_Osaki

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― 新着の感想 ―
毎月楽しみです。 コミックと違いもあり楽しく読むんでます。
[良かった点] さーさんが抱えていた復讐に対して、納得が行ったことです。 この手の話では、相手の動機や反省や悔恨の念の有無が重要であり、加えて、それを聞いた上で復讐する側がどのように捉えるかも重要です…
マコトが魔法を発動させるのが、思考するだけでものすごく速くなってきたのがいいですね。マコトにとっての神様って感じですね。マコトがついに水魔法の治癒能力を使えるようになったのもいいですね。彼の成長が伺え…
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