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【本編完結】信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略  作者: 大崎 アイル
第十二章 『あふたーすとーりー』編

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366話 結婚式 その3

「どうしたの? マコト」

「高月くん、怖い顔してるよ?」

 ルーシーとさーさんが俺の顔を覗き込む。


「なんでもないよ、大丈夫」

 俺は『明鏡止水』スキルを使い、いつもの表情に戻して答えた。


 そして、現状を素早く理解する。


(…………世界の常識が()()()されてる)


 俺はちらりと式場のど真ん中にある大きな魔法陣が描かれた円壇に視線を向けた。

 どうやらあそこに女神様が降臨するらしい。


 本来、地上に神体が直接降臨するなど考えられないし、天界の規定でも禁じられている。

 が、どうやらこの場にいる人たちはそれを疑っていない。


 仕掛けたのは、おそらく我が親愛なる女神(ノア)様だ。

 

 そういえば数時間前に、急激な頭痛と目眩に襲われた瞬間があった。


 あの時だろう。

 世界の常識が書き換わったのは。


 問題はなぜそんなことをしたのか?



(ノア様の性格からして……驚かせ(サプライズ)、かな?) 



 いたずら好きな女神様だ。

 

「せっかくのマコトの結婚式なんだから、女神(わたし)奇跡(まほう)で盛大に祝ってあげるわ!」とかいかにも言いそうだ。


 問題はその規模だ。


 封印の解けたノア様がくしゃみをすれば街を壊滅させるような竜巻が発生するし、ちょっと機嫌を悪くして地面を軽く蹴るだけで城が崩壊するような地震が起きる。

 と、水の女神(エイル)様から聞いた。


 長年封印されていた影響で、ご自身の影響範囲をまだイマイチわかっていない女神(ノア)様。


 何をしでかすのか、想像がつかない。


(心の準備だけはしておくか……)


 俺は『RPGプレイヤー』視点で周囲を観察し続けた。 




 ◇




「それでは皆様! ここで『とある御方』から結婚の祝辞が届いております」

 結婚式の司会者が告げた。


 わー!

 パチパチパチ!


 式場の人たちが盛り上がる。


 戸惑っているのは()()()だ。


(これは式次第(プログラム)になかった)


 ノア様の仕掛けだ。


 司会者の人が淡く七色に光る二つ折りの紙を手に持っている。


 そして、その紙を開いた瞬間…………



 ――世界が夜に包まれた。



(これはっ!?)


 千年前に魔王・不死の王(ビフロンス)と戦った時の『昼と夜を逆転させる奇跡(まほう)』。


 まさか、何か罠かっ! と一瞬身構えた。


 


 ――やぁ、高月マコトくん、水の女神(エイル)ちゃんの巫女ソフィアくん。結婚おめでとう。




 空から威厳に満ちた声が降ってきた。


 聞き覚えがある。


 が、それを思い出すよりも声に含まれる威圧感(プレッシャー)の凄まじさが勝った。


 聞いているだけで平伏してしまいそうな……、ふと周囲をみると式場のほぼ全ての人が頭を垂れていた。



 ――本来なら直接出向いて声を掛けたかったのだけど、なかなか()()()離れることができなくてね。遠い所からの言葉になることを許してほしい。先日の塵の怪物(ァチル・ウタス)を追い払ってくれて感謝しているよ。また冥府(こちら)にいつでも遊びに来てほしい。それでは良き結婚生活を……。



 その言葉と共に、夜が明け、太陽が姿を現した。


 頭を垂れていた人々が頭を上げる。


「いまのは……」

「なんと神聖な御声なのか……」

 ざわつく人々に向かって司会者が……震える声で言った。


「…………さ、先ほどの祝辞は、『冥府の主』プルートー様から……でした」


(やっぱりかっ……!)

 聞き覚え、というより忘れるはずがない。


 モモを吸血鬼から人間に戻してくれた冥府の神様。

 世界を統べる神王ユピテルの兄神。

 

 最上位の神格であり、本来声が聞けるはずがない存在。

 式場の人々の大半は、感動のあまり涙を流している。


 ノア様の驚かせ(サプライズ)に違いない。

 が、これだけで終わるとも思えなかった。



「そ、それでは次のプログラムは、ローゼスの守護女神であるエイル様からの祝辞です」

 動揺を隠せていない司会者の人は、それでも会を進めてくれる。


「え?」

 隣のソフィア王女が、驚きの声を上げる。

 彼女も知らなかったらしい。


「ソフィアも初耳?」

「は、はい……エイル様からは何も……」

 これもノア様の仕業に違いない。


「本来、水の女神様がいらっしゃるのが一番なのですが、ご多忙のために代理で『ある御方』が来てくださいます。それではお願いします!」

 司会の人が大きな声で言うと。



 パアアアアアア!!!



 と式場の真ん中にある円壇の魔法陣が輝きだした。


 発動している魔法は『召喚』。


 魔法陣が光に包まれ、そして中から人影がゆっくりと姿を現した。



 一見すると小柄な少女。


 しかし、身にまとう魔力……いや黄金に輝く霊気(エーテル)は魔王すら凌ぐものだった。


 肩あたりに揃えた金髪。


 頭上に輝く天の輪。


 そして、純白の羽。


(天使様か……)


 確かに女神様の使いとしては、妥当なところだろう。




 ――はじめまして、皆様。私の名前はライラ・座天使(ガルガリン)と申します。




 天使さんの声は、驚くほど透き通った鈴の音のように美しい声だった。

 


 ――水の女神エイル様の言伝……、いえ正確にはエイル様のご友人の別の女神様からの依頼ではあるのですが、ここへ召喚されました。



 ここで天使さんが俺の方を向いた。



 ――高月マコト様。私は千年前は西の大陸で水の女神(エイル)様の使いをしておりました。貴方が魔王ビフロンスや大魔王イヴリースと戦う獅子奮迅の活躍を遠くから応援しておりました。今日、直接話せることを非常に嬉しく思います。



「あ、ありがとうございます」

 そっか、見られたのかー。

 千年前に色々やらかしたのも見られてたのだろうか。


 そして、次に天使さんはソフィア王女のほうに視線を向けた。



 ――ソフィア王女。私は千年前のローゼス建国から見守っておりました。現在の私の担当は西の大陸ではなくなりましたが、いつも水の国の発展を祈っていました。今日は素晴らしい伴侶との巡り合わせを祝わせてください。


「光栄です、……座天使ライラ様」

 ソフィア王女が頭を下げる。

 俺も揃って頭を下げた。


 それを見た天使さんの表情が怪訝なものになる。


「高月マコト様は、女神ノア様の眷属であらせられますから天使(わたし)に頭を下げてはいけませんよ」

「は、はぁ……」

 注意された。

 でも、天使(ライラ)さんって貫禄があって自然と敬意を払ってしまう。

 


 ――では、ここにいる皆様にはローゼスがいかにして発展をしてきたかご説明いたしましょう。



 天使(ライラ)さんがそんなことを言い出した。


(あ、これ話が長くなるやつだ)

 天使さんに既視感があると思ったら、学校の先生っぽいんだ。


 ここから天使さんの長話が始まった。


 俺はちょっと退屈さを感じたが、信仰深い参列者の皆様は天使さんのお言葉を感動した面持ちで聞いている。


 俺がぼんやりと水の国の歴史を聞いていると。




「おやおやおや、面白そうなことになってるじゃないか。ボクは出遅れたね」




 すぐ近くから声が聞こえた。

 誰の声かはすぐわかる。


「姫……ではないですね」

 声はフリアエさんだ

 間違いなく声は、彼女なのだが口調が全く違う。



月の女神(ナイア)様。お久しぶりです」


「ふん、別に大してお久しぶりじゃないさ。女神にとってはね。それにしてもこれはどうしたことだい? 随分と世界の法則(ルール)が変わっちゃってるみたいじゃないか。こんなことをしていいのかい? ボクはわざわざフリアエちゃんの身体を借りて降臨してあげたっていうのに」


 月の女神(ナイア)が不服そうだ。


 その時、俺とナイア様のすぐ側に小さな人影が飛び込んできた。



月の女神(ナイアルラトホテップ)様。ご降臨されていることを気づくのが遅れ、申し訳ありません」



 さっきまで水の国の歴史を語っていた天使さんだった。

 一瞬でナイア様の側に来て、跪いている。



「ライラくんは真面目だね。別にボクの部下じゃないんだから、畏まらなくたっていーよ。立って立って」

 月の女神様――外見はフリアエさんが、楽にしろと手の仕草をする。

 が、天使さんは跪いたままだった。


「恐れながら三聖天の女神様へ立ったまま会話をすることは、天使族には許されていません」

 


「三聖天ってなんですか?」

「ボクと太陽の女神(アルテナ)くんと精霊の女神(ノア)くんのことさ」


「三聖天の女神様の機嫌を損ねますと、世界など簡単に滅びますから」

「ま、まさか…………」

 と言いかけて気づく。


 ノア様は一度俺を使って世界を滅ぼそうとしたし、眼の前の月の女神様は月を落としてきたんだった。

 確かにこちらの二柱の女神様を怒らせてはいけない。


 その時、周囲の視線を感じた。


 式場の人たちが全員こっちを見ている。


 よく考えると、これまで演説していた天使さんが急に月の国の女王(※中身は女神様)に跪いたら当然だろう。


 何か説明をしたほうがいいか、と思って俺が立ち上がった時。



 ――アハハハハ

 ――フフフフ

 ――キャハハハッ

 ――ワーーーーイ


 という大勢の楽しげな声が聞こえてきた。


 そして、結婚式場の周囲を『青』『赤』『緑』『黄』の美しい何かが飛び交っている。


 それが『水の大精霊』『火の大精霊』『風の大精霊』『土の大精霊』だと気づいた。


 その数はかるく数百体を超えているように見える。


 さらに問題なのは


「美しい……」

「この世のものとは思えない……」

「なんて光景だろう」


 なぜか大精霊が、みんなに視えている。


「大精霊に仮初の肉体……いや霊体かな、を持たせているね」

 ナイア様が、理由を教えてくれた。


 もっとも一般人が見えるほどの濃度の霊体を何百体も用意するなど人間には不可能。

 なりたての神族である俺もできない。


「これは……もしかして」

「ノアくんの仕業だね」

 俺とナイア様は顔を見合わせて頷く。


「「そろそろ」」


「来ますね」「来るね」

 これだけ派手な演出をしたのだ。

 



 円壇が輝きだした。



 さっき天使さんが来た時とは比較にならない。



 太陽が落ちてきたのではないかという光量。



 そして、光がゆっくりと消えていったあと。



 一人の美しいシルエットの女性の姿が現れた。



「私がきた!!!!!」



 

 無駄にかっこいいポーズを決めた、ノア様だった。


■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

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■次の更新は、【2024/10/25】



■感想返し:


>イラ様の歌と踊りを見せてくださいお願いしますなんでもしますから

→ちょっと迷いました。


>どうか第三者視点を!

これ検討します。

ただ、いまみなさんノア様の魔法にかかっちゃってるんですよねー。

困った。



■作者コメント

 急に寒くなりましたね。

 身体にお気をつけて。



■その他

 感想は全て読んでおりますが、返信する時間が無く申し訳ありません


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― 新着の感想 ―
これを機にアルテナ様へのホットラインを構築するべきだと思うんだわ……
[一言] 待てよ。『昼夜逆転の奇跡』は全世界に波及したのか?冥王神の声は地球上の全員に聞こえたのか?それとも西大陸だけか?作者さんは新婚旅行のことも書くのか?『独特な』宗教を持つ南の島っていいな。
[良い点] 私がきた!は草 流石はノア様、破天荒。(誤用)
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