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【本編完結】信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略  作者: 大崎 アイル
第十二章 『あふたーすとーりー』編

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365話 結婚式 その2

「マコト様! 大変なんです!」

 控室に飛び込んできたもと大賢者様(モモ)は、開口一番慌てた口調で言った。


「どうしたんだ? モモ」

「何事ですか? 大賢者様」

 俺と桜井くんは尋ねる。


「む、光の勇者くんもいたのか」

 モモは桜井くんの姿を見て、少し冷静になったようだ。


「お元気そうでなによりです、大賢者様」

「もうその肩書はない。私はただの庶民…………でもないか。精霊の女神様の巫女だ」


「で、何が大変なんだ?」

「そう! そうなんですよ! マコト様」

 再び大声を上げるモモ。


女神(ノア)様が降臨するって言ってるんです!」


「それは前から言ってたことだろ?」

 何を今さら。


 ノア様は俺の結婚式で挨拶をしてくださる予定だ。

 前もってモモの身体に降臨できることも確認済みだ。


「違うんです! 私もてっきり巫女(わたし)の身体を借りた降臨だと思っていたんですが……」

「他に方法ないだろ?」




「ノア様は()()()()()地上に降臨するって言ってます!!」




「「…………は?」」



 俺と桜井くんは同時に固まった。





「ノア様ー! 聞こえてますかー!」



 俺は空中に呼びかける。


 返事はない。


「しかし……本気なのかな? 高月くん。神様が地上に降りるなんて」

「封印は解けてるから、やろうとしてできなくはないって聞いてるけど、神界規定にがっつり抵触するはず」

「というか直接降臨するならなんで、私を巫女に指名したんですか!」

 モモがぷりぷり怒っている。


 うーむ、ノア様は気まぐれだからなぁ。


「仕方ない、海底神殿に行ってノア様に直接聞いてみるしか……」

「ダメだよ、高月くん」

「ダメですよ、マコト様」


 俺が言葉を最後まで発する前に、桜井くんとモモに腕を掴まれた。

 行動が読まれている。


「わ、わかってるよ。ここにいるよ」

 流石に結婚式をほっぽりだして、出かけたりはしない。



 その時。



「高月マコト様! 式典の準備が整いました!! どうぞこちらへお越しください!」



 名前を呼ばれた。

 時間が来たみたいだ。



「じゃあ、行ってくるよ。」

「うん、席で見てるよ。改めて今日は結婚、おめでとう高月くん」


「マコト様。私はどうしましょう……? 一応、式の中盤でノア様をお呼びする段取りでしたが……」

 モモが不安な表情を見せる。


「いったん、予定通りで準備しよう。俺も引き続き声をかけるから」

「わかりました。……巫女って大変なんですね」

 モモが小さくため息を吐いた。


「悪いね、気分屋な女神様(ひと)で」

 俺は桜井くんとモモに挨拶をして、控室を出ていった。




 ◇




「あちらでソフィア様がお待ちです」

 長い廊下を歩いていると、向こうに人だかりが見えた。


 ソフィア王女のドレスや髪のセットをしている使用人の一団だ。

 人だかりの中央に、純白のドレスに身を包んだ長い髪の女性の姿が見えた。


 俺が近づくと人だかりが、さっと離れた。


 ソフィア王女がこちらを振り向く。


 空色の長い髪が揺れ、まわりで水の精霊たちが楽しそうに踊っている。


「勇者マコト」


 柔らかく微笑む彼女は、いつも以上に美しかった。


「ソフィア、綺麗だ」

 思ったことを口にする。

 ソフィア王女が一瞬驚いた表情になり、そしてうれしそうに微笑んだ。


「ありがとうございます、貴方も似合っていますよ」

「そうかな?」

 さっき全身鏡で見た自分の燕尾服姿を思い出す。


「ええ、とても凛々しいです」

 頬を染めるソフィア王女に腕を組まれる。



「ソフィア様、マコト様。どうぞこちらから会場へご入場ください」

「はい」

「わかりました」

 執事っぽい人に促され、俺とソフィア王女は大きな扉から結婚式の会場である女神教会の大聖堂へと入った。


 大聖堂の内装は壮麗で、色とりどりのステンドグラスから差し込む光が、神秘的な雰囲気を醸し出している。



 ――水の国の英雄、高月マコト様! ソフィア王女殿下! ご入場です!!



 大きな声が響き、同時に壮大なオーケストラのような音楽が大聖堂内に響いた。


 列席者たちの、盛大な拍手と歓声がそれに加わる。


 大勢の西の大陸各国の王族や貴族に混じって、知り合いの顔もちらほら見える。


 大聖堂の外では、昨日から前夜祭が行われておりその喧騒も遠くに聞こえた。



「さあ、こちらにお進みください」

 案内の執事の人が手で示す方向には、老年の女神教会の神父が待っている。

 

 俺とソフィア王女は、大聖堂の祭壇へと上がった。


「今日ここに集まったすべての者たちが、二人の愛と誓いを証し、その未来を祝福するために、この場におります。それでは花嫁と花婿、誓いの言葉を述べてください」

 

 よく通るしっかりとした声で神父が告げた。



「勇者マコト、私はあなたと共に歩むことを誓います。あなたの勇敢さと優しさに支えられ、共に困難を乗り越えていくことを」

 ソフィア王女がスラスラと述べる。


(えっと、ここで言う言葉は……)

 昨日、暗記させられたやつだ。


「……ソフィア。あなたの民を思う優しさと知恵に感謝し、共に新たな道を切り開くことを誓います。どんな試練も、あなたと共に乗り越えていくことを」



 神父さんが俺とソフィア王女の手を取り、言葉を続けた。


「この誓いを天から見守っておられる女神様とこの聖なる場が証し、二人の結びつきを永遠のものとなるでしょう!」 


 これで結婚の誓いがなされた。


(うんうん、ようやくかー。ソフィアちゃん、お母さん嬉しいわー)

 当然のように自然な感じで、水の女神(エイル)様の御声が聞こえた。


 水の女神様(あなた)、お母さんちゃうやろ。

 うーむ、監視されている。


(監視とか人聞き悪いわねー。可愛いソフィアちゃんを見守ってるのー)

(ところで水の女神(エイル)様、ノア様って一緒にいます?)


(ん? さっきまで一緒だったけど、用事があるってどこかに行っちゃったわねー)

ノア様の巫女(モモ)に聞いたんですが、ノア様が神体のまま地上に降臨しようとしてるらしいですよ)


(…………は?)

 水の女神様の反応は、俺や桜井くんと同じだった。


(何か聞いてません?)

(し、知らないわ! 初耳よ! そんなことしたら地上が大変なことに……! 太陽の女神(アルテナ)姉さまが激怒するじゃない! ちょっと、探してくる!)


 女神様の念話が途切れた。

 

 よしよし、これでノア様が変なことをしようとしていたら水の女神(エイル)様が止めてくれるはず。



「お二人はこちらを」


 俺たちの前に、二つの指輪が差し出された。


 聖銀(ミスリル)で作られた結婚指輪だ。


 神鉄(オリハルコン)で作ることもできたのに「そんな高価なものはもったいないですから」とソフィアが遠慮してこうなった。


 俺はソフィア王女の薬指に、優しい光を放つ指輪をそっとはめた。


 自分の指にも同じ指輪をつける。


 盛大な拍手と祝福の声が聖堂内に響いた。

 



 ◇



「疲れた……」

「ふふふ、こういうのは慣れませんか?」


 大聖堂での結婚の誓いのあと、祝宴用の別会場へ移動をするのだが、まっすぐ向かうのではなく水の国の王都で馬車に乗ってパレードを行った。


 王都には水の国だけでなく、国外からも大勢の人々がやってきていた。


 木の国のエルフ族、太陽の国の人々。


 月の国の魔法使いたちや、火の国の戦士たち。


 他にも様々な種族や国の人々が、俺たちの結婚式というより、祝祭に参加している。


 俺とソフィア王女はその間ずっと笑顔で手を振り続けないといけない。


 愛想笑いが苦手な者には、難易度が高かった。



 途中、慣れないことをしたせいか『()()()()()()()()()()()』時があったが、幸いすぐに治った。



 それが終わってようやく会場に到着すると、こちらでも大人数の演奏団が優美な音色を奏でている。


 豪華な食事は用意されているが、食べる暇が無い。


 各国のお偉方が、次から次に挨拶にくるからだ。

 

 本来であれば、一人ひとりにスピーチをお願いすべき地位の人たちだが、それをすると時間が無限にかかってしまうため、代表の挨拶は太陽の国のノエル女王陛下にお願いをした。


 西の大陸最大国家の女王様であるし、ソフィア王女の友人でもある。


 ただ、ノエル女王が挨拶するのを見て「私にも話させなさいよ!」とフリアエさんが乱入してきた。


 まぁ、一応俺と同じパーティーにいたわけなので「高月マコトの友人代表」という枠でなんか挨拶してた。 


 祝宴会場では、エンドレスに演奏が流れ余興として芸者さんたちが、場を盛り上げている。


 その間にもずっと挨拶をされて、お祝いを言われて、また挨拶されて……ようやく一息つけるようになったのがさっきだ。


 俺は椅子に深く腰掛けて、グラスの水をぐいっと飲み干した。


 お酒を飲むと、疲れで寝てしまいそうだ。



「ちょっと、マコトー。顔に覇気がないわよ」

「お疲れ様、高月くん☆」

 聞き慣れた声が後ろから聞こえ、肩を叩かれた。


 大きなスリットのはいった真っ赤なドレスを着たルーシーと、オレンジのミニドレスを着たさーさんだ。

 

「慣れてないんだよ。こういうのには」

「しゃきっとしなさい! ソフィアは涼しい顔してるわよ」

「ソフィーちゃんはこういうの慣れてるもんねー」


「お二人には申し訳ないです……、先に私だけが式を挙げることに……」

「もうその話は終わったでしょー。気にしなくていいって。ドレス似合ってるわよ!」


「今日はおめでとう、ソフィーちゃん!」

「ありがとうございます、ルーシーさん、アヤさん」

 ソフィア王女と、ルーシー、さーさんが話している。


 ルーシーは結婚式に特にこだわりはないらしい。

 さーさんは、結婚式はしたいけど異世界転生した関係で呼ぶ人いないからなーとぼやいたいたら、ルーシーが「じゃあ、家の地元で一緒に結婚式やりましょう!」と提案していた。


 そのため、後日ルーシーとさーさんとは木の国で小さな結婚式をあげる予定だ。

 

「ところでもうそろそろお開きになるのかしら?」

 ルーシーが俺のテーブルにあったワインを勝手に飲んでいる。

 

「まだまだ終わらないよ。そのお酒、注いでから時間が経ってるからぬるいんじゃないか?」

「いいお酒なんだから飲まないともったいないでしょ。そっかー、まだ終わんないかー」

「ダメだよ、るーちゃん。今日は新婚初夜なんだから高月くんとソフィーちゃんを二人にしてあげないと」


「わ、わかってるわよ」

「本当かなー? 酔ったふりして、テレポートで高月くんの部屋に乱入する気じゃないのー?」

「しないって!」

 ルーシーとさーさんが言い合いしていると。


「ちょっと、何楽しそうにしてるのよ! 私を呼びなさいよ!」

 月の国の女王陛下(フリアエさん)までやってきた。


「やぁ、姫」

「その衣装似合ってないわね、私の騎士」


「やっぱりそう思う?」

「私の騎士には黒い服のほうが似合うわ」

 俺と同じ意見のようだ。

 白は落ち着かない。

 

 そんな他愛ない会話をした。

 

 それから桜井くんやノエル女王の夫婦。

 ずっと裏方をやってくれていたふじやん、ニナさん夫婦もやってきて、ようやく緊張がほぐれた。


 知らない人たちに囲まれるのは気を使う。


 周りを見回す余裕が生まれて、ふと気づく。


 結婚の祝宴会場のちょうど中央あたり。

 

 テーブルよりも二周り大きいくらいの円壇が目に止まった。


(あんなのあったっけ……?)


 祝宴の間は、ひっきりなしで話しかけられていたので気づかなかったのだろうか。

 にしてもあれだけ目立つものならもっと早くに気になりそうだが。


 円壇には複雑な魔法陣が描かれており、何かしらの魔法が発動するのだと思うが今のところ余興等でも使われていない。

 なんのためのものだろう。


「なぁ、ルーシー」

「なーに? マコト」

 俺はワインをおかわりしているルーシーに話しかけた。

 

「あの円壇って、なんのためにあるか知ってる?」

「え?」

 俺が尋ねると、ルーシーがきょとんとした顔になった。



「ちょっと、マコトなにを言ってるのよ。あれが『()()()()()()()()壇』でしょ? わざわざこの式用に用意したものじゃない」



「…………え?」

 俺が驚く番だった。

 ルーシーは何を言ってるんだ。


 そこへもと大賢者様で、精霊の女神の巫女であるモモがやってきた。


「あっ、モモ! ちょうどよかった。ルーシーが変なことを……」

「マコト様ー! そろそろ()()()()()()()()()()()ご準備ができたそうですよー。私はお迎えの準備をしておきますね」


「…………は?」

 何を言ってるんだ、モモ。


「の、ノア様が降臨する?」

「そうですよー、そこの円壇の魔法陣は私が描いたんですからねー。まったく巫女使いの荒い女神様ですよー」


「女神ノア様かー。前に会った時はきちんとご挨拶できなかったから、今日は楽しみにしてたよ」

「さ、桜井くん!?」

 なんで普通に受け入れてるの!?


 おかしい。


 モモや桜井くんは、つい数時間前にノア様が降臨するという情報で一緒に慌てていたはずだ。


 なのに、二人とも今では当然のことのように受けれいている。


 落ち着け……。


 明鏡止水……明鏡止水。


 多少冷静になった頭で、ひとつの結論に思いたる。


「どうしたの? 高月くん」

 難しい顔をしている俺の様子を見てか、さーさんが尋ねてきた。


 事実を…………確認をしなければ。

 

「さーさんに聞きたいんだけど」

「うん、なにー?」


「女神様が直接降臨するのってよくあるんだっけ?」

 俺が尋ねると、さーさんが不思議そうな表情で


「あはは、高月くんってば、どうしちゃったの? この前は商業の国で幸運の女神(イラ)様が降臨して歌やダンスを踊るのをるーちゃんと一緒に見に行ったのをもう忘れた?」


「そ、そっかー」

 それは存在しない記憶だよ、さーさん。


(ノア様……何かしましたね?)


 どうやら知らない間に、世界のルールが変わってしまったらしい。 

■大切なお願い

『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。

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■次の更新は、【2024/9/25】


■感想返し:

>水の国の王都の大聖堂は、小ぢんまりとしたローゼス城と比較して、どれくらいの大きさなのでしょうか


水の国は宗教国家なので、大聖堂大きいです。

王城と同じくらい大きい。



■作者コメント

 明日はゼロ剣を更新しますー。



■その他

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― 新着の感想 ―
[一言] 再度コメントしてすみません。ストレス解消のためにゼロビリーバーの章を読み直しました(笑) 他のコメント投稿者と同意見ですが、クレイジーな結婚式を別のキャラクターの視点から簡単に見ることがで…
[一言] 個人的にモモとノアに手を出す所まで見たいんだけどマコトが草食過ぎて期待できない
[気になる点] 使徒まことの結婚式にやけに素直に聞き分けがいいなと思ってたらそうではないらしい わざわざモモを巫女にしたことと関係があるのか 本人自ら降臨する意味とは? 謎が謎を呼ぶ展開 次回お楽しみ…
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