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【本編完結】信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略  作者: 大崎 アイル
第十章 『千年前』編

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245話 高月マコトは、アベルに戸惑う

「マコトさん。太陽魔法の修行をしましょう!」

「は、はい」

 昨日から勇者アベルに話しかけられることが多くなった。


 移動二日目。


 今日は天気が悪かったので、早めに野営(キャンプ)をすることになった。

 風雨を凌げる場所が無いかと探していたら、「面倒だ」と白竜(メル)さんが言って、木魔法で家を作ってくれた。

 なにそれ、めっちゃ便利。


 食事を終えた俺たちは、おのおの自由時間……ではなく修行することになった。


「ほら、チビっ子。空間転移(テレポート)の練習をするぞ。まずは自身の座標と転移先の座標を正確にイメージしろ。これを失敗すると、星の外まで飛ばされるぞ」

「な、何を言っているのかわかりません!」

「まずは、私が手本を見せてやる。次は真似してみろ」

「えぇー! 詳しい説明は無いんですか!?」

「考えるな! 感じろ!」

「無理ですー!!」


 白竜(メル)さんが、大賢者様(モモ)に魔法を教えている。

 高位の運命魔法のことはよくわからんが、なんかレベルが高いっぽい会話が聞こえてくる。

 羨ましい。


「マコトさん、僕が今から同調(シンクロ)して太陽魔法を使いますから、感覚を掴んでください」

「は、はい……アベルさん」

 距離が近い。

 勇者アベルの態度の変化に少々戸惑う。


「違いますよ、マコトさん」

「え?」

「この姿の時は()()()と呼んでくださいって言ったじゃないですか」

「は、はい、アンナさん。よろしくお願いします」

「はい! よろしくお願いします、マコトさん」

 ニコニコしている勇者アベル改め、聖女アンナが俺の目の前に立っている。

 そう、今のアベルは女性の姿なのだ。


「なんで……その姿なんですか?」

「魔法を使うには天翼族の姿のほうが都合がいいんです」

「天翼族は、魔法に長けた種族だ。魔族にも引けを取らんぞ」

 モモを指導している白竜(メル)さんからコメントが入った。

 流石は、物知り白竜(メル)さん。


「へぇ……」

 俺は目の前の翼が生えた彼女(アンナ)を観察した。

 何度も言うが、聖女アンナの姿はノエル王女と瓜二つだ。

 口調や仕草は違うが、どうしても太陽の国(ハイランド)の王女様のことを思い出してしまう。

 どうにもやり辛い。


「マコトさん、僕の顔に何かついてますか?」

「あー……」

 しまった。

 聖女アンナの顔を見つめ過ぎたようだ。

 迷った末、正直に言うことにした。


「アンナさんが、知り合いに似てまして」

「知り合い、ですか?」

 嘘では無い。

 あなたの子孫ですよ、とは言えないが。


 その言葉に、んー、と頬に指を当てて考える仕草をする聖女アンナ。

 やっぱり性別が変わると、アベルの時とは雰囲気が違うな、と感じた。

 何か思いついたのか、悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「もしかして、そのひとはマコトさんの『想い人』だったりします?」

 こちらを覗き込むような視線を向けられた。

 

「えっ!? 師匠! どーいうことですか!」

「おい、チビっ子! 修行の途中だぞ」

 白竜さんが止めるのも聞かず、大賢者様(モモ)が、こっちに飛んできた。


「師匠はアンナ様みたいな美人さんが好きなんですか!」

 モモが慌てた様子で、こちらに詰め寄る。


「も、モモちゃん!? 美人じゃないよ、僕は!」

 アンナさんが、慌ててそれを否定する。

 俺はため息をついた。

 アンナさんが美人なのは、同意だけどね。

 それは違う。


「アンナさんが似ている人っていうのは、俺の幼馴染の婚約者ですよ」

「なんだ……そうですか」

 聖女アンナは、少しつまらなそうにつぶやいた。


「な、なんだー。そうですよね、師匠に恋人なんて居ないですよね?」

「なに?」

 大賢者様(モモ)が、たはーと胸を撫でおろしている。

 失礼な。


「恋人は居るぞ」

 戻るって約束したルーシーは、恋人だ。

 さーさんやソフィアや、姫だって……多いな。

 名前と人数を言うのは止めておこう。

 何となく。


「「「!?」」」

 俺の言葉に、何故か三人とも衝撃を受けたような顔をした。

 なんだよ。


「マコトさん……疑うわけじゃないのですが……、恋人が居るって本当ですか?」

「なんで疑うんですか」

「だって……」

 聖女アンナが、言い辛そうにもじもじしている。

 よくわからないな、恋人がいるのは嘘じゃない。


 一応、千年後の世界では国家認定勇者だし。

 そこそこモテてた、……はず。


「精霊使いくんは『童貞』なのに、恋人が居るなんて見栄を張ってるんじゃないか、と言いたいのだよ。そこの天翼族は」

 白竜さんが、ぼそっと言った。


「なっ!?」

 何故それを知っている!


「そうですよ! 私も吸血鬼について白竜師匠に教えてもらったんです! 師匠の血は特別な味がします! 芳醇な香りにビロードのような舌触り、あれは『童貞』の味です!」 

「おい」

 無駄に凝った言い回しをするな。

 ビロードってなんやねん!

 モモに余計な知識を与えた犯人は……?

 俺が白竜(メル)さんを睨むと、彼女は目を逸らした。


「そうですよー、我が王は清い身体です。ふしだらな行為はしておりませんよー」

 水の大精霊まで出てきやがった。

 こ、こいつらっ……!

 

『明鏡止水』スキルを使ってなお震えた。


「なんでみんな知ってるんだよ!」

 

 千年前にやってきて、一番の大声で怒鳴った。




 ◇




・『鑑定』スキル持ち……白竜さん、聖女アンナ

・血を飲んだらわかる……大賢者様(モモ) 

・なんとなくわかる……水の大精霊(ディーア)


 事情聴取をしたところ、俺の童貞歴は筒抜けだったらしい。

 こいつらの前には、プライベートなんてなかったんや……。

 というか、何となくわかるって何だよ……水の大精霊(ディーア)

 


「お、怒らないでください……マコトさん」

「別に怒ってないですよ」

 俺ががっくりと落ち込んでいると、聖女アンナがおろおろと話しかけてきた。

 ショックから立ち直り、俺は修行の続きをすることにした。


 しばらく無言で修行が続いた。

 会話が無いので、俺が口を開いた。


「俺の秘密だけバレるのは不公平なので、アンナさんの秘密も教えてください」

「僕の秘密ですか?」

 俺が半眼で告げると、彼女は焦ったようにキョロキョロと首を動かした。


「え、えーっとですね。で、では僕は『太陽の巫女』スキルを持っています!」

「あぁ、そうですね」

 知ってる。

 というか、聖女アンナが『太陽の巫女』であることは千年後なら幼児だって知ってる。


「全然驚きませんね!」

「他には?」

「うぅ……、他ですか」

「そういえば」

 ふと、気付いた。

 聖女アンナ=勇者アベルが持っている()()のあのスキル。 

 彼女の口から、きちんと聞いていない。


「アンナさんの持っているスキルを教えてもらえませんか? ()()

「え、ええ……いいですけど」

 アンナの口から、次々に強力なスキル名があげられた。

 

「以上です」

「他には?」

「え? いえ、これだけですよ?」

「もう一度、確認してもらっていいですか? きちんと魂書(ソウルブック)を見てください」

「は、はい。わかりました…………えっ!?」

 アンナの目が丸くなった。


「ひ、光の勇者スキル……これは一体」

「あるじゃないですか」

 魔王カインの神器(よろい)を斬り飛ばした魔法剣。



 ――七色に輝く刃。



『七色の光』は、()()もしくは()()()の証。

 太陽の女神(アルテナ)様に教えてもらった通り。

 その魔法剣を扱えるのは光の勇者のみ。 


「マコトさん! どうして、僕に新しいスキルがあることを知ってるのですか!」

「ん? えっと」

 聖女アンナが凄い剣幕で詰め寄ってきた。


太陽の女神(アルテナ)様の神託ですよ」

「……マコトさんは、そういえば何でも僕が信じると思ってませんか?」

「ソンナコトナイデスヨー」

 少しギクッてなった。

 アベル(アンナ)さん、素直だからなぁー。

 神託って言えば大丈夫やろ、って思ってます。


「マコトさん。神託って本当ですか? 僕に隠していることはありませんか?」

 何故か俺が責められる流れになった。

 これは良くない。


「あ、アルテナ様に聞いてみればいいじゃないですか。太陽の巫女なんですよね? アンナさんは」

 巫女は神様の声が聞こえる。

 千年後の話とは言え、俺がアルテナ様の神託を受けたのは紛れもない事実。

 当人に確認してもらうのが、一番手っ取り早い。


「それは……できないんです」

「なぜ、ですか?」

 何となく察しがついたが、質問した。


「暗闇の雲……あれが空を覆い、太陽の光が届かないため僕は太陽の女神(アルテナ)様の声が聞けません……役立たずの巫女なんです」

 しょんぼりと俯いてしまった。

 落ち込んでいる様子だ。


「それじゃあ、仕方ないですね。機会があったら聞いてみましょう。俺がアルテナ様に神託を受けたのは間違いないから、そこは信じてください」

 なるべく明るく声をかけた。


「はい……」

「話が逸れたので、修行の続きをしましょうか」

 そう言って締めくくった。

 

 勇者アベルが『光の勇者』スキルを自覚してくれたことは良いことだ。

 が、『光の勇者』スキルは太陽の光が無ければ、ガソリンの無い車みたいなもの。

 ここの課題を解決しないといけないな。  

 そんなことを考えていた時だった。


「あの……僕の秘密ですけど……」

 アンナが俺の近くに寄ってきた。

 顔が少し赤い。


「別にいいですよ。スキルを教えてもらったので、チャラで」

「いえ……マコトさんの個人的な秘密を、勝手に知ってしまったのは申し訳ないので……」

「別に気にしてませんから」

 俺が童貞であることは、大賢者様、白竜さん、水の大精霊にもばれているのだ。

 今更、気にすまい……ははっ。


「えっと……僕も経験はありません」

「……?」

 一瞬、聖女アンナが何を言っているか理解できなかった。


「僕も……処女ですから」

 顔を真っ赤にして、耳元で囁かれた。


「……っ!?」

 何を言ってるんだ。

 この聖女(ひと)は?!


「おそろいですね」

「は、はい」

 俺はかくかくと頷いた。


「しゅ、修行しましょうか!?」

「そ、そうですね!」

 その日の魔法の修行は、少しぎこちなかった。


 


 ◇




 翌日は雨が上がり、白竜(メル)さんに乗って目的地を目指した。


「この辺りで降りよう」

 白竜(メル)さんの言葉で、俺たちは地面に降り立った。


 千里眼を使うと、遠目に大きな城壁が見えた。

 城壁は初見だが、地形には見覚えがある。

 その時は街は無く、だだっ広い草原と崩れかけた廃墟があるだけだった。


 しかし、俺たちの前には大きな城塞都市と美しい城がそびえ立っている。


 

 俺たちは――月の国(ラフィロイグ)の王都コルネットに到着した。


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私だけ記憶があるみたいな事イラ様が言ってなかった? アルテナ様に聞いたら、知りませんよって言われたりして
[良い点] やったね!嫁フラグが立ったよ♪
[気になる点] 姫はマコトの恋人で確定ですか? 桜井くんが~とかなくなったんですか? [一言] マコトにプライバシーは『なし』!!と(笑)
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