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【本編完結】信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略  作者: 大崎 アイル
第十章 『千年前』編

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233話 高月マコトは、ジョニィと出会う

 ジョニィ・ウォーカー。


 彼は、ルーシーの曽じいちゃんであり、紅蓮の魔女『ロザリーさん』の祖父でもある。


 そう聞くと身近な人物に思えるが『勇者アベルの伝説』において、彼の描写は少ない。

『いつ仲間になったのか?』が、書かれていないのだ。

 絵本では中盤に、ふらっと登場する。

 だから、これほど早く出会えるとは思っていなかった。


(まあ、これはこれで好都合か……)


 大魔王を倒すのは『光の勇者(アベル)』『聖女(アンナ)』『大賢者』『魔弓士(ジョニィ)』の四人。

 水の神殿で散々習った歴史だ。

 ジョニィ・ウォーカーは、間違いなく最重要人物の一人。

 その無事が確認できた。


 すでに勇者アベルと、大賢者様は仲間になっている。 

 残るは『聖女』アンナのみ。


(これが結構、問題なんだよな……)


 一説では、勇者アベルと聖女アンナは同村生まれの()()()らしい。

 つまり現時点で、一緒に行動していなければおかしい。

 だが、今のところ聖女アンナという名前は、土の勇者(ヴォルフ)さん、木の勇者(ジュリエッタ)さん、勇者アベル、誰の口からも出てこなかった。


(まさか、火の勇者さんのように亡くなっている……?)


 いやいや、その考えは早計だ。

 勇者アベルが、魔王城に囚われたなんて話は絵本に出てこないし、すでに歴史は改竄されていると思ったほうがいい。

 きっと聖女アンナも、どこかで元気にしてるはず……と信じたい。


 さり気なく木の勇者(ジュリエッタ)さんあたりに探りを入れてもいいが……。

 あまり未来の知識を多用すると、こっちの正体を怪しまれる。

 怪しまれるくらいならいいのだが、『千年後の未来から来ました』とか言ったら、頭のおかしいやつだと思われるだろう。

 というわけで、『聖女』アンナについては保留だ。


 それよりも、先にジョニィ・ウォーカーだ。

 伝説の『魔弓士』。

 だが、見た目は剣を腰に差した剣士だ。

 弓矢を持っているようには見えない。


 彼は大勢の人に囲まれ、食事をしている。

 この街の有力者であり、大魔王討伐の『真の仲間』。

 知り合っておいた方がいい。

 挨拶でもしてこようかな。


「ちょっと、行ってきますね」

「え? マコト様?」

「マコト殿、どこへ行くんだ?」

 俺が立ち上がると、モモと土の勇者(ヴォルフ)さんに聞かれた。


「ジョニィさんに挨拶を」

「えぇ~、マコトくんも物好きね。あいつ、愛想悪いわよ、特に男には」

「そう……なんですか?」

 でも、女好きの英雄という話だし、納得かもしれない。

 ただ、話しかけないと始まらないからなぁ。


 俺はゆっくりと、ジョニィが食事をしている大きなテーブルへ近づいた。

 彼の取り巻きには女性が多い。

 美しいエルフや猫耳、ウサギ耳の可愛らしい獣人の女の子が取り囲んでお酌をしている。

 みんな大声で談笑し、酒を交わして、盛り上がっている。


 なんか、……中学の時の桜井くんのグループを思い出した。

 あれ?

 俺って、あーいう陽キャを避けて生きてこなかったっけ?

 ついでに言うと、騒がしい集団であるが中心にいるジョニィは、酷くつまらなそうに酒を飲んでいる。

 愛想が悪い、というのも頷ける。

 あの集団に話しかけるのは、勇気がいるな……いやでも。

 しばらく悩んでいると、後ろから肩を叩かれた。


「おい、にーちゃん。あんたが、土の勇者(ヴォルフ)木の勇者(ジュリエッタ)を助けてくれたんだって?」

 振り返ると体格の良い、髭の濃いおっさんが立っていた。

 身体的な特徴から恐らくドワーフと思われる。

 顔が濃いが、その身が纏う闘気(オーラ)も濃い。 

 見たところ歴戦の戦士だ。


「マコトです。はじめまして」

「俺は『鉄の勇者』デッケルだ。よろしくな」

 おお!

 鉄の勇者!

 噂に聞く、もう一つの派閥のリーダーか。

 凄く強そうだし、身体を覆う魔力(マナ)は多いし、とても魔王討伐を諦めるような勇者には見えないけど……。


「よ、よろしくお願いします」

 俺は、差し出された手を握り握手した。


「あんた、土の勇者(ヴォルフ)のやつが偉く褒めてたが、そんな強そうに見えねぇな! はっ!はっ!はっ!はっ!」

「はぁ……」

 笑われた。

 まあ、弱そうに見られるのは慣れてるからいいんだけど。


「なぁ、土の勇者(ヴォルフ)木の勇者(ジュリエッタ)を止めてくれよ。あいつら、もう一回魔王に挑むとか言ってんだ。正直、あんなに強かった火の勇者(オルガ)ですら歯が立たなかったんだ。魔王を倒すなんて夢物語だ」

「えーと……」

「それによ、俺には七歳になる娘がいるんだ。あいつが、大きくなるまでは俺は生きなきゃならねぇ! 無謀な戦いはやめるべきだ! そう思わないか?」 

「娘さんが……」

 そうか。

 魔王に挑まないのは、魔王を倒すのを諦めたのは、勇気が無いからじゃなく……。

 家族ができて、守る者ができたから、ってケースもあるのか。


「にーちゃんだって、幼い妹が一緒なんだろ?」

「え?」

 妹?

 俺に兄弟は居ない。

 一人っ子だ。


「マコト様?」

「こんな可愛い妹がいるじゃねーか」

 騒がしくしていたからか、モモがやって来た。

 ああ、モモが妹だと思われたのか。

 全然、似てないけどな。

 あと、妹に様付けで呼ばせねーわ。


「ちょっと、鉄の勇者(デッケル)。マコト君に変な事を吹き込まないでよ。私たちは勝手に魔王に挑むんだから!」

 木の勇者(ジュリエッタ)さんまでやってきた。


「そう言うが、おまえだって今回危なかったんだろ? もうやめるべきだ」

「いやよ! 勇者が諦めたら、それこそ世界は終わりよ!」

「おいおい、鉄の勇者(デッケル)木の勇者(ジュリエッタ)。落ち着けって」 

 言い合う二人をヴォルフさんがなだめる。

 勇者アベルは、会話に参加せずこちらを見つめている。


「なぁ、魔王を倒すなんて、諦めるよな?」

「マコトくん、魔王と戦うわよね!」

 鉄の勇者(デッケル)さんと木の勇者(ジュリエッタ)さんが、こちらに詰め寄る。


 ふわりと目の前に文字が浮かんだ。



『どちらに味方しますか?』

 鉄の勇者

 木の勇者

 


 選択肢だ。

 が、俺は首を捻った。

 魔王を倒す? 倒さない?

 いやいやいや、『RPGプレイヤー』さん、違うだろ?

 俺の回答は――



「魔王を倒して、それから大魔王も倒しますよ」

 


 これが正しいはずだ。

 なんせ、こっちには救世主アベルが居るんだから。

 が、俺が言った時、二人がぽかんとした顔をした。


 周りの会話も止まった。

 食堂に居た全員が、こっちを見ていた。


「いやいや、にーちゃん。いくらなんでもそれは……」

「そ、そーよ。大魔王って、相手は魔族の神よ? いくらなんでも……」

 あれ?

 大魔王を倒そうって人は居ないのか?

 どうやら、俺はズレた答えをしてしまったらしい。


「おう、人族の勇者さんよぉ。盛り上がるのは勝手だが、ここは俺たち亜人族の街だ。厄介事を引き起こす輩には出て行ってもらうぜ?」

 俺たちの会話を聞きつけたのか、数名の獣人の男がこちらへやってきた。

 ジョニィさんのテーブルに居た人だ。


「魔王と戦うなんて阿呆なことは、考えるな。人族は弱いんだから」

「だいたいよぉ、大魔王や魔王の前に、その配下の幹部一人倒せてないんだ」

「まずは、人間牧場の連中を解放してから戯言を言えってんだ」

 ジョニィさんの周りにいた、他の獣人たちもこっちにやってきた。

 身体に纏う闘気(オーラ)から、全員が相当なやり手だと感じた。


 鉄の勇者(デッケル)さん、木の勇者(ジュリエッタ)さんは、気まずそうな顔をしている。

 なんか、勇者の立場って低いのか……。

 その時、誰かが前に出てきた。


「マコトさんは、あの魔王の腹心の一人、『豪魔のバラム』を倒したんです!」

「そうです、マコト様はとっても強いんです!」

 勇者アベルとモモだった。


「「「え?」」」

 土の勇者(ヴォルフ)さんはじめ、勇者の面々が驚いた顔をしている。


 って、それ言ってほしくなかったんだけど!

 俺は、この時代で名前売りたくない。

 ……次からは口止めしておこう。


「おまえ、『豪魔のバラム』を倒したのか……?」

「ええ、まあ。一応……」

 獣人の一人に聞かれ、しぶしぶ答えた。


「信じられんなぁっ!?」

「この優男が、本当にそんなに強いのか?」

「豪魔のバラムは魔王配下で、最も古株の幹部だぞ」

「よし、それなら俺様が腕試しをしてやろう。ジョニィ様の右腕と言われている俺様がな!」

 なんか、面倒なことになりそうな予感がしてきた。

 

「ちょっと、ちょっと。駄目よ、マコトくんは長旅で疲れてるんだから」

「魔王の腹心を倒した猛者なんだろ? 軽い運動だよ」

 木の勇者(ジュリエッタ)さんが止めてくれるが、獣人の人はやる気になっている。

 血気盛んな獣人さん。

 なんとなく、千年後の雷の勇者(ジェラルド)さんを思い出した。

 つーか、この獣人さんの闘気(オーラ)的に凄く強そうなんだよなぁ。

 なんとか、戦闘を回避できないだろうか、と考えていた時だった。



「て、敵襲-----!」



 見張りをしていた男が、真っ青な顔で走ってきた。 


「て、敵襲! 敵襲だ! みんな早くにげろ!!」

 その声に、迷宮の街の面々がざわついた。


 土の勇者さん、木の勇者さんの表情が変わった。

 獣人の人たちや、鉄の勇者さんも同様だ。

 各人が、武器に手をかけている。


「まあ、焦るな。今は族長も居るんだ」

「何が来たんだ? 竜か? 魔族か?」

「そんな情けない顔をしないの、ジョニィ様が居るのだから……」

 エルフや獣人族の面々は、ジョニィさんへの強さへの信頼が厚いのか、多少落ち着いている。

 


 が、次の言葉で全員の顔色が変わった。



「ま、魔王が! 魔王カインが来たんだっ!!!!」

 悲鳴のような絶叫が、迷宮の街に響き渡った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ここでカイン!? 新旧の使徒対決!?
[一言] 長くても全然良いので不足無く纏まって欲しいです、お待ちしております。
[一言] 千年前編、めっちゃ楽しんでいます。是非じっくりお願いしたいです。
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