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【本編完結】信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略  作者: 大崎 アイル
第九章 『別れ』編

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208話 高月マコトは、残党の討伐に向かう

「ねぇ、マコト。女神教会の教皇の要請を聞く必要なんてあるのかしら?」

「そうだよ! ふーちゃんに酷い事しようとしたやつなのに! エロ同人みたいに!」

「……エロ同人って何?」

「あっ! 私知ってるわよ!『くっころ』って言うのよね?」

「るーちゃん……、どこでそんな知識を……? くっころが似合うのは、サキちゃんかなぁ」

「二人が何を言ってるのか、全然わからないわ……」

 ルーシー、さーさん、フリアエさんが姦しく喋っている。

 

 現在、俺たちは太陽の国(ハイランド)の王都から少し離れた、廃村に来ていた。

 数十年前に起きた魔物の集団暴走(スタンピード)によって、滅んだ村らしい。

 しばらく無人だったが、最近になって『蛇の教団』が隠れ家にしているという噂がある。


 その真偽を確かめるために俺たちはやってきた。

 目的は、教皇の要請による『蛇の教団』の残党の調査だ。


「仕方ないだろ。ソフィア王女が困ってたんだから」

 俺はルーシーの質問に答えた。


 水の国(ローゼス)は、神殿騎士(テンプルナイツ)が少ない。

 この世界における神殿騎士(テンプルナイツ)は警官の役割をしている。

 治安維持には欠かせない存在だ。


 神殿騎士(テンプルナイツ)は女神教会に所属しており、水の国(ローゼス)の人材不足は太陽の国からの派遣騎士で補われている。

 つまり女神教会の元締めである教皇様に「大魔王討伐に備え、水の国(ローゼス)神殿騎士(テンプルナイツ)は引き揚げます」なんて言われてしまうと、とても困るわけだ。


 勿論、普通はそんなことしないはずだが、断った口実に月の巫女(フリアエさん)の身柄を要求してくる、なんてことも考えられる。

 大人しく言う事を聞いておくことにした。


「で、蛇の教団はいるの?」

 フリアエさんがキョロキョロしながら、さーさんの服の袖を掴んでいる。

 本来は守護騎士である俺の役割だが、もっとも安全なさーさんの近くに居てもらうことにした。



 ――『索敵』スキル



 俺は廃村の中を歩きながら、敵の気配を探る。

 が、まったくヒットしない。

 俺の『索敵』範囲は半径100メートルくらいだからなぁ……。

 だが、俺よりも敵を探すのに適した仲間がいる。


「ルーシーどう?」

「んー、ダメね。何も聞こえないわ」

 俺の『索敵』スキルより範囲が広く精度の高いルーシーの聴覚。

 それでも何も聞こえないということは……


「ガセ情報か」

「どうするの? 高月くん。帰る?」

「うーむ……」

 誰も居ないんじゃ、やることがないからなぁ。

 もしかすると外出しているだけなのかもしれない。

 多少は粘ってみるか。

 

「しばらく待って、それでもこないようだと帰ろうか」

「はーい」

「ふん、わざわざ出向いたのに」

「そうは言っても、安全に越したことないわ、フーリ」

 やや緊張感が薄れ、俺たちは物陰で待機することにした。


 俺の『索敵』スキルには反応は無い。

 ルーシーにも警戒して貰っている。

 奇襲されることは無いだろう。




 ◇




 廃村に到着してから30分ほど経過した時だった。


 頭の中に声が響いた。


(まず……マコ……! そこを……離……)

 ノア様?

 あれ、声が遠い。

 ノア様ー? どうしました? 


(…………) 

 反応が無い。

 なんだ?


 その時だった。




 ――シュタッ!




 と、小さな音を立て、誰かが地面に降りた。

 飛行魔法でやってきたのだろう。

 接近に、全く気付かなかった。

 恐ろしく静かに素早く接近された。




 ――ゾクリと、鳥肌がたった。




 目の前に立っている男は、白い鎧に女神の紋章。

 神殿騎士(テンプルナイツ)だ。


 なのに……何で『()()』スキルが反応している? 


 そこにいるのは、先日会ったばかりの『太陽の勇者』アレクサンドルだった。


「やぁ、偶然だな」

 白々しく、その男は告げた。

 その表情は、薄ら笑いを浮かべていた。

 

 ……偶然?

 こんな()()()()()廃村でばったり出くわして、偶然は無いのだろう。


「「「……」」」

 俺は黙って短剣を構えた。

 ルーシーは杖を掲げ、さーさんがフリアエさんの前に立った。

 フリアエさんは訝しげに、太陽の勇者を睨んでいる。


 目の前の男は、ニヤニヤしながら告げた。


「そこの月の巫女を引き渡してもらおうか」

「断る」

 間髪入れずに、回答した。

 その回答は予想通りだったのだろう。

 特に驚いている様子は無い。


「いやいや、おまえたちに拒否権は無いんだよ」

 太陽の勇者(アレクサンドル)は、肩をすくめた。


「教皇の命令か?」

「いや、これは俺様の独断だ。教皇は関係ない、っ()()()()()()()()

 余裕の笑みを浮かべ、余計なことまで口にする太陽の勇者。

 どうやら教皇の罠だったらしい。


 ……来たのは失敗だったか。


「さーさん」

「うん! ふーちゃんは守るから!」

 俺はさーさんに、フリアエさんを任せることにした。

 俺は精霊に呼びかけ、ルーシーはいつでも魔法を使えるよう魔力を高める。


 が、目の前の太陽の勇者はニヤニヤするのみで、何もしてこない。


「おいおい、抵抗なんて無意味だぞ? 怪我をしないうちに渡したほうが身のためだぞ?」

 ヤツにとって、フリアエさんを連れ去ることは確定事項らしい。

 そして、無理やりにでもことを進めるつもりのようだ。


「はぁ……弱い者虐めは趣味じゃないんだが…………ん?」

 太陽の勇者が何かを言いかけ、途中で言葉を切り、上空を見上げた。

 つられてそちらを見ると、何かがこっちに向かって猛スピードで迫っていた。


「フリアエ!」

「高月くん! アヤちゃん!」

 現れたのは、天馬(ペガサス)に跨った横山さんと桜井くんだった。

 桜井くんは、天馬(ペガサス)から飛び降り俺たちの前に立った。


 よかった。

 桜井くんが来てくれたなら、安心だ。


「ノエル王女から聞いたんだ。教皇猊下がフリアエを拉致する計画を立てていると」

「あーあ、光の勇者くんまで来ちゃったのかぁ……。あんたには、怪我させちゃいけないと言われてるんだけどなぁ」

 桜井くんが来てなお、太陽の勇者は余裕の笑みを消さない。

 

 ちらりと空を見ると、多少の雲はあるものの晴れている。

 いつぞやの魔王戦とは違う。

 万全の光の勇者(さくらいくん)だ。

 なのに、何故そんな余裕なんだ……?


「どけよ、光の勇者くん」

 太陽の勇者が、傲慢に告げた。


「断る」

 桜井くんが、剣を抜いて構えた。

 

 俺とルーシー、横山さんもサポートできるよう構える。

 こちら側の緊張感に比べ、太陽の勇者は気負った様子もない。


「はぁ……面倒くせーなー」


 太陽の勇者は、大きくため息をついた。

 次の瞬間。



 ――ゴウッ!!

 


 と突風が吹いた。

 太陽の勇者から、膨大な闘気(オーラ)が荒れ狂う。

 その暴力的な闘気(オーラ)から俺たちを守るように、暖かな光が辺りを包み込む。


 魔法剣を構えた桜井くんの身体と刀身が淡く輝く。

 静かだが、こちらもまた太陽の勇者に引けを取らない膨大な闘気(オーラ)だ。


「太陽の勇者アレク。僕たちが争っている場合じゃない。引くんだ」

「勿論だ。俺様に争うつもりはない」

「じゃあ……」

「そこの月の巫女の身柄さえ貰えればな」

「それはできない」

「交渉決裂だな」

 交渉なんざしてないだろ!

  

 一方的な要求を述べ、太陽の勇者がゆっくりとこちらへ歩いてくる。


「それ以上近づくな」

 桜井くんの声が硬い。


「リョウスケ……」

 フリアエさんの不安そうな呟きが聞こえた。 


 光の勇者は、最強のはず。

 大丈夫……だよな?


 太陽の勇者は歩みと笑みを止めない。

 ニヤニヤとしたまま、こちらへ近づいてくる。


「加減はする。悪く思うな」

 桜井くんが言うと、剣を振りかぶり『刃の背面』を太陽の勇者に叩きつけた。

 峰討ちだ。


 それをぱしっと、太陽の勇者は桜井くんの魔法剣を()()()()()


「そんなっ!」

 横山さんが驚愕の声を上げた。


「おいおい、そんな鈍い素振りでどうするんだ?」

 剣を掴んだ反対の手が、拳を握った。

 閃光のような突きが、桜井くんの顔面近くをかすめた。


「くっ!」

 桜井くんが距離を取る。


「おお、躱すのか。俺様も手加減をし過ぎたな。なぁ、無駄な抵抗はやめて、さっさと月の巫女を渡せよ」

 太陽の勇者は、不敵な笑みのままだ。


「わかった、次は本気でいく」

 桜井くんの身体と魔法剣が、獣の王を倒した時のような輝きを放つ。

 剣を構えた桜井くんの姿が、掻き消えた。



 ――光の剣・閃



 そんな声が聞こえた。

 小さな爆発と、閃光が走った。

 次に暴風が吹き荒れ、土埃が舞った。


 何かが、飛んでいくのが見えた。

 それは人影のように見える。


「………………え?」

 誰かの呆然とした呟きが聞こえた。


 ――吹き飛ばされたのは、気絶した桜井くんだった。


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― 新着の感想 ―
こういう話の展開は興醒めだわ
[気になる点] 女神の意向に沿わない儲ばっかしだなぁ 神が実際に居て声も聞ける世界でも、こんなモンなのかね
[一言] なんや長女がなんかしたんか? 何にせよ太陽の勇者はだるいタイプのなろう主感あってうざいなー
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