不幸のはじまり
「トア、喜べ!おまえが前から行きたがってたテーマパークのチケットが当たったぞ!」
「まじか!親父やるじゃん!見直した!」
私はガッツポーズをとった。
私が住んでる街の商店街では毎年夏に大規模な抽選会が催される。だが、家族で通い続けて10年、当たった試しがない。絶対あの抽選のオヤジ、当たり入れてねえだろーと思ってたが意外に良心的だった。まさか今、大人気で予約が4年待ちと言われている、庶民が到底行けるわけがない大人気のテーマパーク行きのチケットが家族4人分、しかも2泊3日のホテル付きで当たったのだから。
しかし、そのチケットが家族全員を不幸のドン底に落し入れる地獄行きチケットになるとは私は夢にも思わなかった。
なると分かってたらこのテーマパークのチケットを1等にしたあの商店街のオヤジをぜってーぶん殴りに行く。
そして待ちに待った当日。
「トア、父さん、初めて有給使っちゃったよ笑。我が社畜人生をくつがえすほど、むふふふ!楽しみすぎて!!」
「あらまあ、パパったら子供みたいね。可愛い♡」
「こほん、、男は歳をとってもいつまでも少年の心を持っているとよく言うだろ!照」
中年夫婦がいちゃこらと見苦しいわ。
「 ママー!パパ!ねえちゃん!見えてきたよー!」
弟のユウが海に囲まれた巨大な島を指した。
「ユウ、良かったな!本物の恐竜と遊べるぞ!」
「パパの嘘つきー!あの島にいる恐竜は本物じゃないよ。僕、雑誌で読んだよ。例え、琥珀に閉じ込められた蚊の血を元に太古の恐竜を復活させようとしても
何万年も経つとDNAの大部分は破壊されて、今の遺伝子操作技術でそれを完全に読み取ることは不可能なんだって。だからこのテーマパークの恐竜は本物じゃなくてキメラで更に人間の支配下に置くために頭脳がAIと融合してるんだって!あと半分機械の身体で出来た
恐竜もいるんだって!チョー楽しみだよね!」
「お、おう。あいかわらず予想外の反応が来るな笑
我が息子は。きっと賢いところがママに似たんだな!」
「あらー♡」
まじか、知らんかった。なんか難しくてよーわからんがとりあえず機械と融合したパチモンの恐竜??完全にモノホンの恐竜かと思ってたわ。さすが2歳下ながら脳筋な姉と違って博識な弟だわ。でもガッカリしたわ。いつだってネタバレはいかん。
「いてっー!ねえちゃんひどい泣」
とりあえず愛の鉄拳をぶち込んでおいた。