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ネコは大事だが歌うたいはそうでもない  作者: ヤマノ ミィオ
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83.マグナスとイザベラの話

83.マグナスとイザベラの話

 ゴールディアノの家を飛び立ったマグナスはイーバを探すために高く飛んで全てを視界に入れようとした。

 でも空を飛んでいくうちに、いつの間にか全く別のことに心を奪われていた。遠くに棚引く雲に、山が雲よりも高くそびえているところ、果てしのない海に、濃い緑が密集した森、建物が並ぶ街、黄色や緑の広大な畑、誰かが作った道がどこまでも伸びていき、途中で別れ、また別の道へとつながっている風景に。

 翼がないことにはすっかり慣れていたのに、こうして飛んでみると耳も目も昔のように鋭くなって、感覚は研ぎ澄まされ、多くの物事が彼のなかに自然に入り込んできた。

 彼は空のずっと高いところでふと目を閉じた。辺りには鳥すらおらず、完全に自分だけしかいないのを味わった。じっとして、風が頬や髪にあたるのを感じ、遠くで風が音をたてて移動していくのを聞いた。何も考えずに空に浮かんでいると今や肉体は雲、風、光、空気と同じ存在となったかのようだった。しばらくそうしていたが、ふと彼の口元に自然で心地よい笑みが現れ、彼はゆっくりと目を開けた。何も考えていないつもりだったのに、妻の姿と暖かさが思い浮かんだのだ。

 マグナスはイーバを探すことを思い出し、さっと身を翻すと風に乗って海沿いの空まで勢いよく下りた。近くにイーバの宮殿があり、そこへ向かって馬に乗ったイザベラと、見慣れぬ人物とが進んでいくのを見つけた。少し離れたところで地面に足をつけると彼らがやってくるのを待った。

 マリウスが最初に彼を見つけて軽くいなないた。イザベラは息をのむような声をあげ、「マグナス!」と目を輝かせた。しかし次にはマグナスが何かを背負っているのだと思い、怪訝な顔をした。

 見慣れぬ男が手をあげた。「翼を持っているだんな。この人間には気をつけたほうがいい、翼を持っているものが大嫌いだそうだからな」

「翼ですって?」イザベラは大きく繰り返した。

「なんでいつもそういう、でっかい声を出して驚くのかおれにはわからんな」男は耳を抑えながらいった。

 馬を下りたイザベラはマグナスに近づき、背中側にまわった。「ちょっと待って。マグナスよね?」

「そうだ。きみはてっきりジョンたちといるのだと思っていた。アリステアからはジョンとサフソルムが出かけ……、きみも一緒に行動しているのだとばかり。何も説明を聞かなかったんだ」

 ああ、とイザベラは嘆き、過去のことはもういいの、といった。

「だんな」と男は再び声をかけた。「この人間はおれが羽根を持ってるってだけで、剣をつきつけ、こき使うんだ」

 イザベラは天を仰いだ。「そうじゃないのよ、マグナス。どうしてあなたがそういうことになってしまったかは分からないけど」イザベラはマグナスの青い瞳を見ていった。「すごく素敵よ。こうやってまた会うことができてうれしいの」

 マグナスは笑って肩をすくめた。「この彼に命令してるのかい?」

 男が名前はフォブだよ、といって腕を組んだ。

 イザベラはそうじゃないのよ、と答えた。フォブとイザベラが同時に話そうとするのをマグナスは穏やかに遮って、二人に宮殿ではなく、さらに向こうにあるゴールディアノの家に行くようにいった。

 イザベラの驚く顔に見送られながらマグナスは再び舞い上がり、イーバを探しに出かけた。

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