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ネコは大事だが歌うたいはそうでもない  作者: ヤマノ ミィオ
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(80)地面が揺れる前の、イザベラと馬のマリウスの話

80.地面が揺れる前の、イザベラと馬のマリウスの話

 上から光の差してくる洞窟で、一人と一頭は静かに過ごしていた。

 マリウスは投げ入れられた緑の玉がおいしいらしく、気ままに食べては中央に湧き出る水を飲んでのんびりしていた。

 イザベラは座ったまま、額に手をやってため息をついた。「困ったわね、マリウス。あなただけよ、そんなに食欲があるのは」

 馬のしっぽが左右に揺れた。

「これだけのピンチはなかなかないわね。外に出て、話の分かる誰かが見つかればいいけど。蟻一族に捕まってごらんなさいよ。二人ともおしまいになっちゃうわ」

 静かな洞窟で、マリウスが草を食べる音が調子よく響き続けた。

 イザベラは目を閉じて、何か良い考えが浮かばないかと静かに呼吸を続けた。少し眠気がやってきたので、また目を開けて両腕を伸ばし、座ったまま伸びをした。

 どこかでさわさわと何かが動く音が聞こえた。伸びをしたまま固まって、辺りを見た。マリウスも気が付いたらしく、じっとして耳をぴんと立てた。イザベラはそっと立ち上がってマリウスのそばに寄ると、剣に手をかけ、様子を伺った。マリウスは口に残っていた草の最後を飲み込んだ。

 さわさわいう音は次第に大きくなり、イザベラがこれだ! と思ったときには目の前に現れていた。それは大量の水が流れてくるようにやってきた大量の羽毛だった。洞窟のどこかから流れてきたそれはあっという間にイザベラとマリウスを巻き込んだ。イザベラはマリウスの手綱を掴んだものの、大量の羽毛の川に流されて一人と一頭はばらばらになった。日が差し、水が湧き出、仮にも外につながっている場所から再び暗い洞窟のどこかへと運ばれていった。

 羽毛に運ばれていくなか、時折イザベラは苦労して「マリウスー!」と呼んだ。一人と一頭は長い時間をかけて暗い洞窟を流され、イザベラがもはやこれまでかと観念したときに羽毛の流れと共に洞窟から勢いよく吐き出された。地面にはその羽毛が厚くふんわりと積もっていて、一人と一頭は難なく着地した。

 辺りは潮の匂いがした。波の音がして、太陽は最後の輝きを放ちながら水平線の下に隠れようとしていた。

 顔や髪についた羽毛をはたき落しながら彼女は愛馬がどうなったかと周りを見渡した。

 馬はふわふわの羽毛の上で仰向けとなり、ごろごろと体を揺らしていた。遊んでいるように見える姿に思わず

「……マリウス?」と呼びかけると、馬はハッと我に返って急いで立ち上がった。

 やがて周囲に厚く溜まっていた羽毛は震えだしたかと思うと、順番に飛び上がってまた大きな流れを作り、どこかへ飛んで行ってしまった。

 イザベラは砂浜が広がる海辺を改めて眺めた。海の反対側は高い崖になっていたが、上り口はきっとどこかにある気がした。

 首の辺りに何かが触っている気がして手をやった。さっきの羽毛が残っているのかと思った。だがそれは首にかけられていた紐で引っ張り出してみると、落としてなくしたとばかり思っていた黒い羽根が現れた。

「どうしてあるのよ?」イザベラは不満の声をあげた。「おかしいじゃない。あんなに探しても見当たらなかったのに」

 彼女はしかし、これ以上考えるのは面倒だと結論付けた。「少し休みましょう」彼女は愛馬にそういうと、自分は崖を背にしてどっかりと腰を落とした。「とりあえずは外へ出られたことを感謝しなくてはね」



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