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ネコは大事だが歌うたいはそうでもない  作者: ヤマノ ミィオ
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(77)マグナスとマリオンの話

77.マグナスとマリオンの話

 二人がイーバの宮殿に向かうため、屋敷を出ようとしたときに地面が揺れた。

 マリオンは驚き、屋敷が揺れるたびにもしかすると本当にここがなくなってしまうのかもしれないと思い、諦めのような気持ちが浮かんでくるのをとめられなかった。

 やがて揺れが収まってくると、マグナスは高いところまで飛んでいき、辺りの様子を見てから彼女の元に戻ってきた。

「マリオン、きみは信じるかい?」

「さあ。わからない」

 マグナスは嬉しそうな顔をした。「人間の世界と森との間に大きな裂け目ができていた」

 彼女は返事をせず、黙ってマグナスが話すのを聞いた。

「いつかはきみたちのほうから向こうの世界へ行ってみたいと思うかもしれない。いつかはそうなるかもしれない。でも今、ここは守られていて、その間に森は回復していける」

 二人は屋敷を出発した。

 マグナスは初め、翼でもって彼女を連れ、空を飛んでいくつもりだったが、マリオンは愛をこめて断った。「私の重さを知らないのよ。見た目はこうだけれどオオカミの重さがあるの。もちろん、あなたならできないことはないでしょうけど」

 黒焦げの水浸しになった庭をマグナスは羽ばたいていき、オオカミになったマリオンは駆けて追いかけた。

 時間は少し出鱈目になっていて、長い時間を駆けているうちにいったん夜になったと思った後にまたすぐに太陽が現れた。そのあとにも夜になったり、また朝になったりしたが、何度目かの太陽が半分くらい上がったところで、遠くに青い海が輝いているのと真っ白で大きな宮殿が建っているのを望んだ。宮殿に到着すると「素敵なところね」と人の形になったマリオンは素直にいった。しかし宮殿には人影が見えなかった。街にも人のいる気配がなかった。

 マグナスはもう一つ当てがあるといって、彼女を伴って海岸沿いの大地を歩いていき、一軒の家の前に立った。

 ノックを繰り返してやがて出てきた老人がマグナスを見ると歓声をあげた。「やったな!」

 老人の後ろから顔を覗かせた少年が驚きの声をあげた。「マグナス! 翼を取り戻せたんだね!」

 アリステア、とマリオンが静かに呼ぶと、少年は母のところまで出てきて抱き合ったものの、すぐにマグナスに向き直った。「ジョンとサフソルムがやったんだ」

 ゴールディアノが二人を家に招き入れ、四人と白いネコがテーブルを囲んだ。アリステアが嬉しそうにいった。「レネアとジョンとサフソルムがこうなるように頑張ったんだ。でもマグナスが翼を取り戻したときには、レネアはもうマグナスに会えないんじゃないかって心配してた。ぼくはそうならないって思ってたけど」

 マリオンは息子の言葉を聞きながら、マグナスと顔を見合わせた。「私が思っていたこととは違ったのかしら。てっきりイェンドートたちがやったことだと」

 マグナスは肩をすくめた。

 アリステアが話を続けた。「レネアは今朝、宮殿に戻ったよ。ジョンとサフソルムが戻ってくるだろうから、ここで待つようにいわれて……でもママたちが来てくれるって思わなかったな」

 ゴールディアノがうむ、といった。「レネアを、イーバを見かけたかね?」

「先に宮殿に寄ったがいなかった。街の住人も姿が見えなかった」マグナスは答え、ゆっくりと立ち上がった。「探してくるよ。マリオンたちはここで休んでいたらいい。翼のおかげで一度に広く探せる」

 マグナスが本当に飛んでいくのをアリステアは満足した気持ちで眺め、直にジョンやサフソルムも帰ってくることを楽しみに待つことにした。

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