(61)ジョンの話
61.
不死の花は豆のように小粒だが小さな花びらがたくさんついた、燃えるように真っ赤な花だった。
刈り取られた花が小さな袋にたくさん詰まっていた。オウラはそれを渡してくれた。
銀貨を渡そうとしたけれど、彼女は受け取らず、ぼくたちは家の前から離れた。でもいくらも経たないうちにサフソルムが銀貨を一枚くわえると彼女の元へ走っていった。
ぼくは離れたところに立っていて、オウラがサフソルムを抱きかかえ、ありがとうと何度もいうのを聞いた。
帰り道、無言で歩いていたときにぼくはサフソルムに聞いた。全く関係ない話を。
「サフソルムはどうして自分のことをオレさまっていうのさ」
「どうということもない。オレさまが生まれて間もない頃に、兄弟姉妹は二十七匹いたが、ばあさまがいったのだ。おまえはほんとうにオレさまだねぇ、と。ゆえにずっと自分の名はオレさまだと思っていたのだ」
「すごいや」
「ばあさまはオレさまのことをずいぶん可愛がってくれた。マグナスと共に旅に出ることになったときにも長く見送ってくれたのだ」
「家族がたくさんいてうらやましいよ。ぼくなんて親は小さい頃にいなくなったし、おばあさんにも会ったことなかったから」
「オウラのことだが」とサフソルムは話を変えた。「あれはずいぶん前の話。いまよりずっと幼かったオウラが泣いているところへ出くわした。マグナスが聞けば、飼っていたネコが死んだのだという」
サフソルムは少し間をおいてからまた話した。「ネコをなくした者の哀しみは想像に難くない。互いに認め合い、心から理解し、同士として同じ時を生きてきたものが片方を失ったときの喪失感を、オレさまは分かっているのだ。その哀しみを癒すには年月もかかるであろう。――だが、一方で去ったほうは常に近くにいるともいえるのだがな! それはさておき、残された者がネコを失った哀しみを一時とはいえ、ふわりと取り除く方法もあるのだ」
「どんな?」
「大きなネコを見ることだ」
「大きなネコって?」
「山に住むような大変大きなネコを見ること。オレさまも半分はそのような血が入っているのでな。オウラはオレさまを見て泣くのをやめた。もちろんそれは哀しみを薄める一時の方法でしかない。しかし山に住むネコを見たものは自分の小さきネコにも同じ尊厳が確かに備わっていたことを思い出し、安らぎを覚えることであろう」
「ぼくも子供のころにネコや犬と遊んだよ。でも自分用に飼っていたわけじゃなくて、野良が居ついたのさ」
サフソルムは話を続けた。
「オウラは不死の花で自分のネコを助けようとしたのだ。しかし残念ながら利かなかった。オウラはずっと天に祈ってもいた。だがネコを助けることはできなかった。オレさまはそのような話を聞くときはいつも、異なる世界に住まう尊いお坊さんがかつて話したという言葉を思い出すのだ」
「どんな?」
「望みというものは叶うべきものなら叶う。だが、そうでないなら仏の力でもってしても届かせることはできない。毎日皆のため、平等に祈っておられるお坊さんがそうおっしゃった。――オレさまはこう思うのだ。自らの力を尽くした後、それが叶えられなかったとしても自身の力の無さを責めることはないのだと」
「ああ、うん……。なかなか難しい話だ」
ネコはぼくの顔を見上げ、眉間にしわを寄せた。
「まずいこといったかい?」ぼくは聞いた。
ネコは答えた。「またいつかオウラのところへ来るとしよう。マグナスはこの話をよく分かってくれたがな」




