(60)ジョンの話
60.
最後の材料は不死の花だけだった。
花がどんなものかは分からなかったが、サフソルムはその在処を知っているといった。
その場所へは赤い鳥の力でもってしても少々距離があるとのことで、段取りとして、最初に赤い鳥がぼくたちをその場所に運んでくれた後、再び赤い鳥だけがワクワクランドに戻ってきて仲間の鳥たちと共にあの嘘のように大きな羽毛の袋を『目的地』まで持ってきてくれるのだという。
「赤い鳥の存在なくしては成しえないことなのだ。苦労や面倒をかけることになる」
「本当にそうだよ。だけど、それとは別にさ、ぼくが空を運んでもらうのに……」
移動にあたって、ぼくは何とかして鳥の背中に乗せてもらえるように段取りをつけたかったのだ。――これまではベルナーの手前、大きな声で主張できなかったが――、大きな足でがっちりと捕まえられたまま飛ぶのだから落ちる心配は、ないといえばなかったわけだが、はるか下を直接見ながらの飛行はもう十分だった!
さて、こうして無事に鳥の背中に乗せてもらって下り立った地で、サフソルムとぼくは幅の広い、整えられた道を歩いていくことになった。
やがて広大な畑が見えだした。家がぽつりぽつりと建っていたが、サフソルムはそのなかのひとつへ迷うことなく向かい、家の前に立つとぼくにドアをノックしろと顔で合図をした。
ぼくはドアを叩いた。奥からまだあどけなさが残るくらいの若い娘が出てきた。彼女はぼくを見てもなにもいわなかったが、自分に注がれる視線を感じて顔を下に向けた。「サフソルムじゃないの」
彼女の口調は静かで声は小さかったが嬉しそうだった。下にしゃがんで、彼女はネコの頭をゆっくりと撫でた。
彼女は立ち上がった。「マグナスは? あなたはだれ?」
ぼくは名前をいって、彼女からは自分はオウラだと教えられた。
「マグナスはちょっと用事で、代わりにぼくがサフソルムと旅をして……います」
足元から同意するかのように、にゃあという鳴き声が聞こえた。
「マグナスに」とオウラはいった。「何かあったというわけではないのね」
ぼくは頷いた。
なぜかサフソルムは、アリステアのときのように言葉を話そうとしなかった。
オウラはサフソルムを見ては嬉しそうに微笑み、またぼくを見ては何をいったものかと、ただその場にたたずんでいた。
サフソルムは一向に話す気配がなかった。ぼくは「不死の花を知ってる?」と聞いた。
「ええ、もちろん。この辺りはそれを育てて売っているんだもの」
「よかった。それを売ってもらえないかな?」ぼくはレネアからもらった銀貨を取り出そうとした。
「最近、雨が少ないの。前はどんどん咲いていたのに。最近はぽつぽつと咲くばかり。大人たちは困っているのよ」
「不死の花は特別な花? 何に使うの?」
「もちろん命を長らえさせるために」
「そんなものがあるなんて」
「でも利くときと利かないときがあるの。それは誰にもわからないの。それで、いまはここに売るための不死の花はないのよ、残念だけど」オウラは困った顔をした。
足元から再びにゃあーという声がした。
「だけど」とオウラは続けた。「自分のために残してある花があるの。それをあなたにあげるわ。よくわからないけど、ここにはいないマグナスに何か関係があるんじゃないかと思うから」
「彼はもちろん、病気ではないから心配しないで」
「そうね」オウラは笑った。「サフソルムのために。いつもずっとサフソルムにお礼がいいたいと思っていたの。だからお花はあげるわ」




