(59)ジョンの話
59.
ぼくらは、その後、鳩たちの案内で特別に柔らかく、暖かい羽毛の布団が敷かれた部屋で休み、翌日の朝にぼくらが出発するときには鳩たちはエメラルドの噴水の縁に揃ってとまって、「またいつでもおいで」「心配するな。顔の悪い相はなくなるはずじゃ」「元気でな」といって、こちらを見送ってくれた。
彼らは計り知れぬ知恵を持った者たちのように思われた。この先、鳩を見かけたときにはきっと違う目で見ることになるだろう。ぼくはどこか神妙な気持ちになった。彼らはさらに、ぼくらが来るときに散々な目に遭った、滑るソリの道以外に実は階段があるのじゃ、フォッフォッといった。ぼくらはそれを使ってヒィヒィいいながら元の地上に戻ってきたのだった……。
ベルナーは何の絵も描いていないのに、元の国に帰ることになった。赤い鳥の世話になり、海へと向かった。そこには何本かのロープが結ばれた、小さな木の船が用意されていた。
ぼくは彼と握手をした。彼は笑顔を浮かべた。「短い間だったが、本当に世話になった」
「とんでもない。きみなら良い絵が描けるさ」
必ず、と付け加えようとして、付け加えるとそうではなくなるかもしれない、と思って、必ず、と口には出さなかった。
ベルナーは船に乗り込むと、手を振った。白いカモメのような、大きな鳥たちが口にロープを加えて飛び上がり、船を引っ張った。船はゆっくりと進んで、やがてどんどん離れていった。
船がすっかり小さくなったころに、ぼくはサフソルムにいった。「複雑な気分だよ」
「確かにそうだ。この先、あの男が生きていられるとは限らぬのだからな」
「ストレートにいうじゃないか。ぼくは彼にどうやったら王様のところで働くことができるのか聞いてみたかったけど、やっぱり思い直した。王様に仕えるっていうのは大変なことさ」
しばらくの間、どちらもが黙って、見えなくなった船を眺めていた。やがてぼくは近くに置いていた荷物に近づき、本を取り出して葉っぱのしおりを目印に開いた。『羽毛以外のその他の材料とは、羽根にツヤを出すための真珠の粉と羽根を劣化させないための不死の花のことである』
「まだ二つも探しにいかないといけないじゃないか!」
「いやいや」ネコがいった。「その続きがある」
ぼくはページをめくった。『ヴェリアヌスに歌を気に入られた者はうち一つが手に入れられよう』
「ああ、そうだ。もらったよ。確かにもらった」袋をがさごそさせて、貝殻の箱を取り出した。
開けてみるとなかには玉虫色に変化する真っ白な粉がたくさんと大きな真珠の一粒が入っていた。




