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ネコは大事だが歌うたいはそうでもない  作者: ヤマノ ミィオ
55/95

(55)ジョンの話

55.

 サフソルムはすっかりあきれていた。ぼくが素直に、両手いっぱいに載るくらいの宝石袋、――それは絹の袋でたくさんの琥珀の石や、赤や青の石が入っていた――、を受け取ってしまったがため、赤い鳥の片足にぼく、もういっぽうの片足にベルナーががっちりと捕まえられて、ワクワクランドに向かうことになったからだ。

 ベルナーは嬉しそうだった。「ワクワクランドだって? そんな名前は聞いたことがない」

 赤い鳥の強力な翼によってぼくらはあっという間に、元来た島の浜辺に到着した。

「つまりここは」とぼくが答えた。「鳥の楽園なのさ。鳥のさえずりと鳥のカラフルな羽毛で、ワクワクできるってこと。そうだろ、サフソルム?」

「そうかもしれぬし、そうではないかもしれぬ。とにかくその御仁とは早く別れ、それぞれの旅を続けるのがよかろう」

 赤い鳥がギイギイと鳴いた。

「ふむふむ」サフソルムが相槌を打ち、ぼくに向かっていった。「彼らは歌うたいのために特別な料理を作ってくれたのだそうだ。オレさまたちはそちらへ向かうことにする。よってベルナーの御仁は愛する妻子を助けるため早く絵を描き始めるがよい」

「全くその通り、サフソルムくん。そしてジョン。だけど私だって休養と栄養がなければいい絵が描けるわけないじゃないか」

 ぼくらは再び赤い鳥の世話になり、この巨大な島の端っこから飛び立って、大きな森の上を通り過ぎ、広大な草原を超え、高い山の連なる麓に降り立った。きれいな緑の木々が生えている近くに小さな広場があって、そこに木の幹や岩で作られたテーブルみたいなのが置かれ、そこに魚と何かの野菜の盛り合わせや、木の実にパン、そして水が葉っぱと木でできた器に入れられて一列に並んでいた。そばに木でできたナイフとフォークとスプーンが用意されていて、ぼくは「鳥の楽園ではナイフとフォークを使う鳥がいるのかい?」、は! と笑ってみたが、その近くには岩でできたかまどがあって、その上には鍋がかけられ、何かがぐつぐつと煮立っていた。

 ぼくらはテーブルに沿って一列になって地面に座った。

 そばにいた赤い鳥がギィギィと鳴いた。サフソルムが話した。「鍋からよそってお食べ下さいとのこと」

 ベルナーは、そうはいってもまだへとへとだったので、ぼくが鍋の中身を三つ分、木の器によそった。何かよく分からないけれど、野菜がいっぱい入っていて魚の匂いがした。ぼくは水の入った器を持って、ネコ側の器とベルナーの器に向かって乾杯した。

 ふと前を見ると木の枝に青やら黄色やらの小鳥たちがいた。

 一羽が、ピ、と鳴いた。

 それに続いて、別のが、ピ、と鳴いた。

 別のがまた、ピ、と鳴いて、いろんな音階のピ、が続いた。

 ピ、は音楽になっていた。


 ピ、ピ、(ピ)、ピピ、ピピ、(ピピピ)、ピ、(ピ)、ピ、(ピ)、ピピピ、(ピピ)、ピッ、(ピピ)、ピッ、ピピ、(ピピピピ)、ピ! ピピピピ、ピ! ピッ、ピピ、ピッ、ピピ、ピッ! ピピッ! ピッ!!


 たくさんのピ、が重なって、そのピ、はどれもがかわいい声で、なんというか、聞いてるだけで……。

「愉快な気持ちになるじゃないか」とベルナーがいった。

「そうだ、じつにそうだ」ぼくは答えた。

 ぼくらは鳥たちに拍手を送り、食事を食べた。

 辺りはじきに日が暮れるように思われた。横にいた赤い鳥がまたギィギィと鳴いた。サフソルムが話した。

「さてこれからの予定だが、オレさまたちは『古き良き時代から生き長らえてきた者たち』の到着を待つ間、他にもやらねばならぬことがあるのだが」

 ぼくは、少し休ませてくれよと口をはさんだ。

 サフソルムが続けた。「赤い鳥がいうにはこれから会わせたい鳥たちがいるのだそうだ。必ずや客人たちのためになるという。ただしそこへ向かうには我らがワクワクランドの名前の由来である場所を通る必要がある」

 ぼくはちょっとだけ嫌な予感がした。しかしベルナーは嬉しそうな顔をしていた。ぼくらは赤い鳥がのしのしと歩く後を追って、森のなかへと入っていった。

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