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ネコは大事だが歌うたいはそうでもない  作者: ヤマノ ミィオ
50/95

(50)ジョンの話

50.

 赤い鳥は崖の上から見たときよりもずっと大きかった。鳥は片足でぼくを持ち上げ、もう一方でぼくの荷物を持ちあげた。サフソルムだけが安全な背中に乗って、ワクワクランドという絶海の孤島を飛び立ち、姫君が住まうという大きな島に下り立った。

 いっておくけど、片足で空中を運ばれるという破天荒な方法をぼくが納得していたわけではなかった。島に無事に着いた後、ぼくは文句をいった。しかしネコは「ワクワクランドに運ばれたときもそのようにしてもらったのだぞ」何をいまさらとあきれた顔をした。「それに赤い鳥は遊び好きでもあるから、一度足から落として、下に落ちる前に拾い上げる荒業も好んでやってのけるのだ」

「まさかそいつをぼくにはやってないだろう?」

 ネコは答えなかった。

 ……まぁいい。事実は不明だったが、それ以上聞くことはやめた。

 島には浅瀬が長く続いていた。サフソルムはよく分かっているようで、ひとつの洞窟を見つけ、そのなかへ入っていった。暗いところをずいぶん進むと、天井に裂け目があって光が差し込んでいる場所へ来た。その下には大きくて平らな一枚の岩があり、歩いていけるような地面はそこで終わっていた。その向こうは青や紺の海の水がひたひたと広がっていた。

 ぼくらはただ待っていた。大声で呼びかけてみることもしなかった。もしそれ以上に待つことになっていたとしたら声をかけていたかもしれないけど。

 平たい一枚岩の上を、海の水から伸びてきた黒くて長いものが這っているのに気が付いた。目が点になったが、叫ぶ間もなかった。黒くて長いものがいくつも岩の上へと上がってきて、ついに全部が姿を現した。

 岩の上に黒いドレスを着た、縦にも横にも大きな女性がいた。漆黒の髪が海藻のように広がって腰のあたりまで伸びていた。黒いアイラインをして、赤い口紅をつけ、ただならぬ雰囲気であった。

 顔や体からは海水がしたたり落ちていた。女性は足をくねらせた。八本の黒いタコの足を。

 サフソルムはお辞儀をひとつすると、半分だけ人間の大きな女性こそがヴェリアヌスの姫君であることを確認した。そしてぼくを振り返り、「土産でございます」といった。

 ふたつ、戸惑ったことがあった。ひとつは思い込んでいた姫というイメージとは違っていたということと、ぼくが土産として紹介されたことだった。

 姫君は満足げに笑った。そして足八本のうちの一本を岩の上で這わせ、岩を力強くトントンと叩いた。すると岩の一部がせりあがってきて小さなテーブルになった。そこには引き出しが付いていて、姫君は黒く長い足を用いて細長いキセルを取り出し、煙草を吸い始めた。

 何度も何度も煙を吐き出した後、また別の足を動かして岩の上を三度叩いた。今度はただならぬ音がして、姫のいる平らな岩の向こうにいくつもの岩が次々と海の水からせりあがり、一つの道が出来上がった。

 姫は道の奥へと進んでいった。サフソルムが後をついて歩き出した。ぼくも続いた。

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