(49)ジョンの話
49.
陽気な何かが聞こえてきて、ぼくはふかふかの寝床で目を覚ました。目を開けると色とりどりの何かが見えた。右にも左にも上にも下にも。
笑い声みたいなのも聞こえたが、半分だけ起き上がったぼくはすぐにそれが人間のものではないと知った。辺り一面に鳥がいた。
ふかふかの寝床はすべて羽毛でできていたのだ。陽気な何かは鳥のさえずりだった。鳥たちはどれも極彩色で、地面には花畑のように、周りを囲む木の枝には鈴なりに咲く花のように、彼らは色別に固まって延々と並んでいた。黄色に青、赤、ピンク、紫、きれいなグリーンに、金色も。彼らは声を震わせ、口々にさえずっていた。羽毛を揺らし、美しいメロディを喉の奥から歌い上げ、音は頭から抜け出るように四方八方に広がっていた。
ぼくは屋外で鳥たちに囲まれていたのだ。
「ここがワクワクランドだ」
後ろから声がして振り返れば、馴染みのサフソルムだった。
「どうなった?」
「歌うたいは気を失ったものの、鳥の雛たちを助けんとした行動を認められ、ここに招待されたのだ」
「蛇はどうなった? 戦いは」
「海の大蛇は海へと帰っていったが、歌うたいへの怒りは永遠に解かれることはないであろう。ひいては全世界の蛇たちに怒りは受け継がれ、歌うたいを敵視した行動に出ることが予想される」
ぼくは深呼吸した。「冗談だろ?」
「その言葉をゆうな。みっともない」
「みっともないって、ほかにいいようがないじゃないか」
「一方でワクワクランドのものたちは歌うたいに大変な感謝をし、その想いは永遠に受け継がれるであろう。ここは鳥だけが住まう、鳥の楽園。しかしながら、蛇の世界とは違い、鳥たちの感謝はワクワクランドにおいてのみ存在しうるといえよう」
ぼくは何も答えなかった。
サフソルムは顔をある方向に向けた。「見るがよい」
ぼくはサフソルムのいう方へ目を向けた。空に届いてしまいそうな大きな木の枝に例の袋がパンパンに膨らんで引っかかり、底が地面すれすれについているのが見えた。
ネコは続けた。「ワクワクランドの住人……、住鳥たちが皆こぞって羽毛を差し出した。老鳥からオムツの外れぬ幼鳥までもが協力し、あの嘘のように大きな袋を羽毛でいっぱいにしてくれたのだ」
とてつもない大きさのそれを持って、この先歩いて旅をするなどとは考えられなかった。思わず不満と困惑の声が出た。すると周りの鳥たちのさえずりがぴたりと止んだ――。何かしでかしたかと肝を冷やしたが、一瞬の沈黙の後、再び無事にさえずりが始まった。
「歌うたいのいわんとすることは分かっている」ネコはじっと目を見ていった。「本を見てみるがよい」
荷物一式はすべて近くに置かれていた。ぼくは座ったままで本を持ち、葉っぱのしおりのところを開いた。
「ワクワクランドより海上を太陽の出る方向へ進むこと、三百日。古き良き時代より生き長らえてきた者たちは全てを受け入れる余裕があるものを知っている。先にその者たちを見つけるか、その他の材料を先に揃えるかを決めるべし」
ぼくは両足の上に本を置いたまま、ゆるゆると倒れて、再び羽毛の寝床に仰向けになった。「まるで意味がわからない。もうこのままここで横になったまま目を閉じて……」
サフソルムがぼくの顔を上から覗き込んだ。「三百日もかかっていては全て手遅れになってしまう」
そういって今度はぼくの腹の上に乗った。――それはとんでもない重さだった!―― そして開いたままの本から続きを読んだ。「ただし大変急ぐ場合には海に住むヴェリアヌスの姫君に頼むこと」
ぼくはサフソルムの言葉を聞きながらも、重いよと声を上げ、ネコを腹の上から下ろした。
ネコは続けた。「注意:姫君は大変な歌好きのため、その心を震わせることのできる歌を必ず持参すること」
ぼくは自分たちを取り囲むカラフルな鳥たちを見上げながらいった。「歌だって?」
「そうだとも。レネアさまは実際に歌うたいの歌に感心されたのだ。あの手紙の通りにな。それゆえに歌うたいを使うことにした……」
「あの手紙はどこへやったんだっけ。もちろん捨ててはいないさ。褒めてくれているのに捨てるものか。とにかくレネアは手紙の通りにぼくの歌に感動してくれたんだ。その何とかっていう姫君、……姫だって?」咳払いを一つした。「今回ぼくがこんなことになっているのはこの本に心を震わせることのできる歌が必要だって書いてあったからだ」
「そういうことだ。レネア様は歌うたいの歌が最適と思われたのだ」
ぼくは手を胸に当てた。「ああ、ぼくの歌がほかの誰よりも優れていることを認めたレネアこそが本当にすばらしいのです……」
「オレさまは歌うたいがすっかり寝込んでいる間に赤い鳥たちに頼んでおいた。羽毛の袋はここに置いたままで、オレさまたちはヴェリアヌスのところへ運んでもらおう」




