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ネコは大事だが歌うたいはそうでもない  作者: ヤマノ ミィオ
44/95

(44)ジョンの話

44。

 風が吹いていた。

 ぼくとサフソルムはゴールディアノの家を出て、少しだけ夜の明けてきた、辺りは草だらけの一本の道を歩き出していた。

「ひどいや」ぼくはかすれた声でつぶやいた。

 それを聞きつけたサフソルムがいった。「歌うたいのゆうことはまるで分からぬ」

「こんなことになるなんて」

 ぼくはレネアから紫色の一冊の本を渡されていた。つまり『翼の取り戻し方』だ。

 そこには各生き物が翼を再び得る方法が一から十まで書かれているのだという。レネアはすっかり熟読し、そのためには何が必要かという知識を得ていた。そして本当は自分も必要なものを揃えるために一緒に行きたいのだが、残念ながら行けないということを説明された。

 ゴールディアノもここでの仕事が忙しいし、アリステアはまだ子供で危険にさらすわけにはいかない。

 この時点で、ぼくは「危険だって?」と思わず鼻に皺を寄せて声をだした。

 ゴールディアノは、時間はないのだからといって、本は道中に読みながら進めばいいといった。

 そこに一切の逃げ道はなかった。レネアは申し訳ないような、でも期待するような顔でぼくを見ていたし、アリステアもすっかり喜んだ顔をして、「マグナスに翼だなんてそれ以上にかっこいいことはないよ」といった。

 ゴールディアノの家の玄関とは反対方向にどんどん歩いて、二階から外へつながる階段を下り、ぼくとネコはさびしい道を歩き出した。

 後ろからアリステアが「ジョーン! サフソルムー!」と呼んだので振り返った。三人は家から大きく手を振っていた。

 ぼくは手だけを力なく、中途半端にあげて、下ろした。手を振るなんてそんなたいそうなことをする元気もなかった。

「さいあくだ」ぼくは一歩一歩を進めながらつぶやいていた。風でマントがはためいた。

 サフソルムがいった。「歌うたいはマグナスが翼を再び手に入れるのはいいアイデアだとゆった」

「そうさ、いったとも! だけどぼくが何かをするはめになる方法だったなんて誰も教えてくれなかった!」

「ふむ。しかし元よりここにオレさまと歌うたいの者以外が入ることはなかったであろうな。レネア様はマグナスには黙っておきたいのだからな。いずれにしろ、さいあくではあるまい?」

「さあね。嫌な予感がする」

 サフソルムは何も答えなかった。

 ぼくは続けた。「いろいろとついてなくて、そのうえ訳の分からないことに巻き込まれたりする。もし何か損をしたなら、それがまだそれだけで済んでよかったと思うようにしている」

「ふむ」

「うんざりすることが続いて、もうこれ以上は無理だと思っているところへ別の厄介な面倒ごとが目の前に降りかかってきたりもする」

 ネコがヒ、と笑った。

 ぼくはため息をついた。「どうせこの世は……」

 ネコが聞いた。「どうせこの世は……、なんだ?」

「なんだと思う?」

「どうせこの世は、オレさまが思うに、ウソだらけだ」

「ぼくはいつもこう思ってるよ。どうせこの世はクレイジーさ」

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