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ネコは大事だが歌うたいはそうでもない  作者: ヤマノ ミィオ
42/95

(42)ジョンの話

42.

 ゴールディアノが笑った。「ジョンもアリステアも触ってはだめだ。これらは数えきれないほどの世界の動きを表しているのだからな。これはつまり、各世界の現在位置を表し、その動きを示す運行表でもある」

 アリステアが近づき、興味深そうに、空中に浮かんでいる物を見守った。「それであなたはここで何をしているの?」

「世の中の動きを見ている。一つ一つの世界が次にどう動くのかを観察している。あるいは一つの世界が終わったり、始まったりするのを見ている。だがな、私がすることはただ見て、動きを記録するだけだ。一つの世界が別の世界にぶつかりそうになったとしても、それを止めてはいけない。ちなみに、この家も一つの世界であって、イェンドートの世界と隣り合ってはいるが独立しているのだよ」ゴールディアノがそういった後も、ぼくはよく分からずにいた。

 ゴールディアノは細長い棒を手に持ち、楕円のなかにある一点を注意深く差した。「ここにあるもやもやとした塊がイェンドートの世界を表している。そしてそれを拡大鏡で見れば私の世界がごく小さな点で存在していることに気が付くはずだ」

 サフソルムがいった。「いまに歌うたいが質問をする」

「ああ、だけど、何を質問したらいいのかが分からないね。残念だけど」ぼくは答えた。

「それじゃあ」とレネアがいった。「奥の部屋へ行きましょう。お茶を入れるわ。座って話を始めましょう」

 それぞれが楕円形の物体と窓との間を注意深く通り抜けて、奥にある部屋へ向かった。

 部屋には縦長のテーブルが置かれていて、椅子が三つほど置かれていた。ゴールディアノが端に寄せていた丸い椅子を持ってきて近くに置いた。ネコたちはテーブルの上に座り、残りは椅子に腰かけた。

 召使たちにどんなこともやってもらっているであろうレネアだったが、部屋のさらに奥からカップとお茶のセットを持って現れた。彼女は笑顔になって、それぞれにお茶を注いだ。

「オレさまはけっこうだ。特に熱いものはな」

「そうね、サフソルム。普通のお水もあるわよ」

 レネアも椅子に座り、「長くお待たせしました」と話を始めた。「これは元はといえば、イェンドートのおじさまたちの世界から出たことのなかった私が偶然このゴールディアノの家、……世界を訪れたことから始まったのです」

 レネアは静かだが嬉しそうな笑顔で一人一人を見た。「ここは一見すると小さな世界でありながら、多くの世界を知ることができる場所なのです。ジョン、さっき本の世界を見たでしょう?」

 ぼくが頷くと、レネアはさらに続けた。「私は時々イーバをやめて、レネアになってここにやってきます。レネアになると、おじさまとおばさまは私にあんまり関心がなくなるの。きっとこのぱさぱさした髪が気に入らないのね。とにかく、ここを訪れてゴールディアノと話をしている間に、私の大友人のマグナスの話になったの。マグナスの話は昨日サフソルムが話してくれたわね。ゴールディアノはあるとき私にこういったの。マグナスに関係する本がどこかにあるはずだ、探してみたらって」

 レネアは話を続けた。

「マグナスの名前が書いてあるわけじゃない、でも彼に関係するような何かの本がきっとあるはずだ、って。それで私、時間のあるときにはここへ来て、階段を伝って下りて、決して梯子を踏み外さないようにして、長い時間をかけて探したの。そしたら見つけたのよ」

 ぼくは思わず声をかけた。「あの場所を探したのかい? 落ちたらとんでもないことになりそうなところで」

「そうよ! あの場所が怖いというよりもどの本がその本なのか……。どうやって見つけたと思う? 何日も何日も探していて、もう絶対に見つかりっこない。途方もない数のなかから一冊の本を探すなんてできっこない。そう思って本当に諦めて戻ろうと思ったときだった。ここで肝心なのはそのとき本当に諦めてたってことよね。一冊の本に目がいったの。大きな本の間に挟まれた一冊の紫色の本が目に入った。私、また梯子と階段を行ったり来たりして近くへ寄ってそれを取ってみた。そうしたら題名に『翼の取り戻し方』って書いてあったの」

 レネアはカップを口に運び、一口飲んだ。

「私は本をここに持ち込んで読んだ。本には翼をなくしてしまった者がどうやったらそれを蘇らせることができるのかが書いてあった。鳥の場合、昆虫の場合、羽根を持つ妖精や、ほかにもいろいろ。そして翼のある人の場合。それぞれに翼を取り戻す方法が書いてあった。私はゴールディアノに相談したわ。マグナスに翼を蘇らせることができたらどんなに素敵かってことを。そしてゴールディアノは私にこういったの。彼が翼を再び持つのなら、いっそ元々住んでいた世界に帰ったらいいじゃないか、そしてそこには彼の妻が待っているはずだろうからって」

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