(23)ジョンの話
23.
しばらく黙っていた後でぼくはまた話した。「きみがいった、好きなものの周りにいるとチャンスが巡ってくるっていう話」
「得意なものの周り。たとえジョンのように貧乏であっても」
「ああ、ため息がでるよ、貧乏だの、みすぼらしいだの、といわれると。……なんというか、好きなことの周りに、いや好きなことの中心にいる自分が本当にばからしくなってくるよ。だけどさ」ぼくは続けた。サフソルムのほうを見た。ネコは丸まってそっぽを向いていた。「何度もいうようだけど、報酬が出るんだよ。つまりこれはチャンスが巡ってきたってことだ。だろ?」
イザベラは膝の上に肘をのせ、その手の上に顎を乗せ、うっすらと笑みを浮かべて、ぼくを細目で見つめた。「いいたくないけど、あんたって相当の……。ま、いいわ。好きにやるのがいちばんよ」
やがて夜が深まってきたので、火はしっかりと消されて、それぞれが休むことになった。
疲れていたのか、ぼくはすぐに眠りに落ちた。どこかでやっぱり鳥が鳴いていたけど、フクロウだろうか、それはもっとあったかい響きだった。
眠りに入って、どのくらいたったのか、でもまだそんなに時間が過ぎていないのがわかった。鳥の鳴き声も、風の音も、虫の気配も何も聞こえなくなっていた。ただ静かだった。ぼくは目を開け、身を起こした。
サフソルムが広場の端に座って遠くを見ていた。ぼくは音をたてないように近づいてサフソルムの隣に身を伏せた。
両腕を組んで少し体を支えた状態で「なんだい?」とぼくは聞いた。
ネコは答えなかったが、後ろから今度はアリステアがそっと寄ってきて、サフソルムの隣に同じように伏せて遠くを見た。「何か見えるかい、サフソルム」
「ふむ。今夜はずいぶんと大きな月が出た」
「ほんとだ」とぼく。
月明りは山々と、遠くの湖や山裾の開けた場所、それにずっと遠くのアーウィズ家の屋敷まで照らし出していた。
「何かが動いているのが見える。屋敷に向かって進んでいるのが」サフソルムがいった。
ぼくは身震いした。
ネコは話を続けた。「夜になると屋敷にやってくるという例の者ではない。人間くらいの大きさだ。だがものすごい数だ」
「それが?」ぼくは聞いた。「それが何だって?」
「おそらくグレビットだ。オレさまはそう名付けている。つまりグレーなヒトビト。荒野に住んでいて、言葉も通じぬ灰色の鬼たちだ」
またも身震いした。「まさか! 人間の肉を好きだとかいっていた?」
ネコは落ち着いた声でいった。「どうやらつけられたようだな」




