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ネコは大事だが歌うたいはそうでもない  作者: ヤマノ ミィオ
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(22)ジョンの話

22.ジョンの話

 山の中腹辺りにある、その広場は馬に人間にネコなどの全員が、じつに伸び伸びと休むことができるほどの広さがあった。広場の端は木々が途切れていて、そこから遠くの地まで見通すことができた。

「あちらの方向に」サフソルムが木のない場所から顎で一つの方角を示した。「元来た屋敷がある」

「まさか見えるかい?」ぼくはそちらを見ようと目を凝らした。

「ふむ。何か明かりを灯しているならば目印となって見えるかもしれぬ」

 アリステアが割って入った。「ママは夜になればすべての戸を閉めるよ」

「では無理だろうな。もっともオレさまは大変目がいいので、何か見えないこともないが」

 イザベラが大きな音をたてながら、近くに横たわっていた木の枝をひっぱってきて、自分たちの椅子用に並べ、あるいはもっと小さな枝を選んできて真ん中に集めて火を起こそうとしていた。うまいもので彼女はすぐに火をつけ、鍋に水を入れ、湯を沸かした。彼女はやがて自分用にホット・ワインを作り、ぼくたちには水やお湯をくれた。火を囲んで、皆でチーズと肉を挟んだパンを食べた。イザベラは何か楽しくなってきたのか、鼻歌みたいのを歌い始め、パンをかじるアリステアに「しっかり食べなさいよ」などといった。

 ぼくは真っ黒なマントを取り出して、着た。

 イザベラが「なによ、それ。陰気臭い。カラスみたいじゃない」といった。

「少し寒さを感じたらこれを着る。夏以外は着てるってこと。アリステアが寒くないといいけど」

 サフソルムが声をあげた。「フサフサはこのくらいの寒さは感じないのだ!」

「フサフサってどういうことよ。アリステアのどこがフサフサなのよ」イザベラがいった。

「いいんだ、気にしないで、イザベラ。ぼくはぜんぜん寒くないから」アリステアは小さく笑って答えた。

 真ん中で燃える炎は何か新しい生き物のように成長しては小さくなりかけ、イザベラからの小枝をくべられては火の粉をまき散らしながらあちこちに手足を伸ばした。

「イザベラは」とぼくはいった。「……まぁこんなところでこうしているから聞くんだが、どうして兵士になったんだい?」

 彼女は口をひん曲げて笑い、「あんたはどうしてそんなみすぼらしい歌うたいになったのよ」

「みすぼらしいだって?」ぼくはむせ返った。「ずいぶんじゃないか。そうでもないだろう? このカラスのマントはずいぶん高級なほうさ」

 ふん、とイザベラはいった。「女が戦士になるのはおかしいって? そんなことないわ。好きだったからよ。好きでもあり、得意でもある。人はね、得意なものの周りにいるとチャンスが巡ってくるのよ。それと、うちの両親ってのは私に冷たかった。よその女の子を見れば、その母親は何だか愛情ってものを持ってるふうじゃない。私が育った家にはそういうものがなかった。でもそんなことはどうでもいい、私は街にやってくる戦士たちに憧れて、そうなるために努力した」

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