迷宮からの脱出
当たり前の生活の中、僕は毎日同じ事を繰り返していた。
出かけて仕事して帰ってきて寝る。
だけどふとしたきっかけで思う事があった。
それは…あるテレビがキッカケだった。
そのテレビは迷路の様に変わらない生活の中、ふとしたきっかけで変わることができるという変わった内容だった。
迷路の出口は決まってるから道も同じ、出口も一緒。ならそこに仕掛けをして出口を増やしてみたら人はどんな動きをするのか…。
途中勿論仕掛けがある。
びっくりさせる様なものもある。
落とし穴だったりお化けだったり、道と思ったものが壁だったりとなかなかどうして面白いことをするものだ。
面白そうなので私も体験したくなり、申し込んでみることに…。しかし、この申し込みがのちに恐怖のどん底に突き落とすことになるなんて私は思いもしなかった。
参加者は私の他に9人。
一人づつ迷路に入っていく。入る場所も当然バラバラ。
しばらくするとあちこちで悲鳴やら叫び声が聞こえ出した。
みんないろんなものに引っかかってるんだと私はおもわず笑っていた。
けれども、自分だけはなかなか罠にひっかからないから面白くないと思い始めていた。そんな時、たまたま壁を触った時とってみたいなものを触り、床がパカッと開き驚いた。懐中電灯を持っていたので照らして見ると穴の底に針山がでんと立っていた。
落ちてたら怪我をしていたかもしれない。そう思っていたのに、底に誰かを見た気がした。うずくまって下を向いている。きっと仕掛けに引っかかって落ちてしまった人に違いないと勝手に思い込んだ私は大きな声で呼んでみた。しかし何の反応もしない。
いじけて出てこないつもりなのかと苛立ったのでそのままほおっておいて前へ進むことにした。
出口はどこだ?
その時不意に誰かに見られている感じがして後ろを振り返った。けれども誰もいない…。
「気のせいか。」ため息をつきながら独り言を言う。しかし再度気になって見た時には知らない女性がボーッと立っていた。
その様子から少し不気味に感じた私は恐る恐る声をかけて見た。
「……。」
なんにも喋ってはくれなかったが、そんなことより気になったのは服が所々黒くなっているということ。しかもボロボロの様だ。
…もしかしてさっき落ちてた人が這い上がってきたとか?ありえない。
思いっきり背を伸ばせば捕まることはできるが、腕の力だけで一人であの床穴から出るのは不可能だ。じゃあ一体誰が彼女を助けたのか…。わからない。とにかく今現状ここにいるのは私たちだけの様だ。
私は問いかける様に話しかけてみたが、何を言っても返事もしてこない相手に徐々に苛立ち始め、ほおっておいて出口へ向かうことにした。何気に後ろを振り向くとさっきの女性がついてくるではないか。気味が悪かった。
黙ってただついてくるだけ。手には何も持っていない。懐中電灯もなしによくも歩けるものだと不気味に思う。
しかし、歩いている靴音がしないのが1番怖かった。そう、まるで空中を浮かんでいるかの様に…。
しかも徐々にその距離が縮まっていることに気づき始め、私は早足で歩くことに。
後ろの女性も一緒だ。徐々に早くなってくる。
あちこち走っていたら道がわからなくなり行き止まりにぶち当たった。後ろの女性もずいぶん近くまで来ている。気味が悪くてしかたがない。戻ろうにもその女性のすぐそばを通らないといけない。
様子を伺いながらも近づいていく。
そして早足で横をすり抜けようとした時ガッと腕を掴まれた。それもヒヤリとして冷たい。そして下から顔を覗き込む様に近づいてきた。顔は…血だらけだ。
懐中電灯を当てているからわかる。
心臓がドキドキして早くこの場から逃げたいと心が悲鳴をあげる。
その時すぐそばで人の声らしきものを聞いた気がした。その人もビックリしてその場に固まっている。
すると女性は私を離し、固まっている人のところへとスーッと動いていく。
「ヒーッ!?」
固まっていた人は慌ててその場から走り出した。その後を女性はついていく。
私は汗ダラダラかいていた。
それほどビックリしたのだ。
けれども他の人が現れたおかげで怖い思いから逃げ出すことができた。
ホッとした。
正直この迷路、出口がどこか全くわからない。あちこち逃げてきたからかもしれないが、出口の標識は描かれているのに肝心の出口が開いていない。
何故?
めぼしいところをトントンと叩くとギーッと音がしてドアが開いた。そう、ようやく出口を見つけたのだ。
そして私は出口から抜け出すことができた。他にも2、3人その場に座り込んで汗ダクダクかいていた。
そこにマイクを持った男性が現れた。
「どうでしたか?怖かったですか?楽しかったですか?」
「な、なんなんだよあんた。あんな怖い目に合わせるのが目的だってのか?おっかしーんじゃね?マジ勘弁。あれは、あのお化けはやばいわ。」
「ちなみにどんなおばけでしたか?」
「なんだよ、種明かししてもいいってか?じゃあ答えてあげるよ。ヤバイくらいリアルだったよ。空中を浮かんでいるかの様にスーッと動くんだもんな。穴から出てきたのもどうやって?引っ張ったの?」「穴?穴には誰も入ってませんよ。」「ま、マジですか?」「はい。」
じゃあ、あの場で見たのは本物?
「ここって昔何があったんですか?もしかして…。」「あーー、バレちゃいました?ここ、昔戦場で人が何人も亡くなってますから。でたらいいな?みたいな?」
「ガァッ、フゥ〜。出ましたよ。本物。」「え?出たんですか?これはいい宣伝になる。」
そう言って慌てて何処かへと消えていった。
全くなんて日だ。一人つぶやきながら帰りの支度をする。
そして帰宅する時も霊の事を考えていた。
まさか…ね。
ついてきたりなんか…しない…よ、ね。
自宅に帰ると部屋の電気をすべてつけて回った。あの女性の霊のことが頭から離れない。
あの迷路はヤバイ。そう思った。
その時後ろが気になり振り返るとそこにいたのは…あの女性の霊だった。
慌てて逃げ出そうとするも腰が抜けて立ち上がれず、手にしていた御守りを振りかざして叫んだ。
「消えろー!」
女の霊はスーッと消えていった。
一体なんだったのか、何がしたかったのか今もわからない。




