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酒と枠なしザルと男と女  作者: カサハリ職人
9/25

女子会よっ☆

女子会いぇーい。

女子会いぇーい。


・・・女子会って何だ⁉


という妄想劇場です。


始まり始まり~☆

昼食を度々静流と摂ることが増えた。


「嗚呼、幸せ。」


今日も今日で半袖パフスリーブにリボンがついたかわいい系ブラウス、膝上のタイトスカート、踵が10センチはあるピンヒール。「朝の準備なんて髪まで入れて10分よ☆」とはとても思えないナチュラルメイクに、緩く巻かれたロングヘアの静流がニコニコとA定食を食べている。しかも大盛。


・・・何処に入るんだろう。


社食の大盛は女子にはチャレンジメニューだったりする。

外回りの社員や体育会系の男性用と言っても過言でないほど量が多い。

毎回それを頼んで完食している。


「静流さん、午後外回りですか?」

「社長について取引先に挨拶回り。あとは立ち会いかなぁ。」

「秘書課って、体力いりますね。」

「見てると菜々美ちゃんも体力いりそだよ?」

「・・・私は精神力の方が重要です。」


フォークでサラダのトマトをザクリと刺す。

かねてより噂の人物が、総務課に送り込まれた。

前評価通りの人物らしく、教育係としてつくはめになった菜々美は毎日ぶちギレそうである。

同僚からは「全面バックアップする。証拠もあるから、やってもいいよ。」と、物凄くいい顔で言われている。

被害は菜々美だけではないらしい。


「嫌味も効かないしねぇ。」

「遠回しも直球も暖簾に腕押しって感じです。」


早苗は噂の社員が営業課に来たときのことを思い出す。


『この書類持っていけって言われたから来ました。ここにサインしてもらえだそうです。』


・・・あんたは誰で、どこの部署だ。誰に用だ。


書類を投げて寄越さなかっただけまだましかも。

目を通すと、斎藤のサインが必要なようだ。今不在であり、急ぎではないようなので、戻ってから届ける旨を告げる。


『そう。』


と言って出て行った。

その後、菜々美が一緒に謝りに来たのは言うまでもない。


「ん~。2人とも今日、夜空いてる?」


今日は金曜日。明日は休み。

悲しいかな。2人共予定はなかった。


「じゃあ、一緒に飲みに行こう♪女子会よっ☆」


快諾したのは言うまでもない。



静流のたっての望みで3人は焼き鳥居酒屋に来ていた。

ここでも静流の望みでカウンターに座り、「取り敢えずビールで」も済ます。ビールで乾杯して、めぼしいものを注文する。


「何て言うか、早苗ちゃん、詐欺よねぇ。」


静流曰く、地味事務職からクール系美人に大変身らしい。

会社から居酒屋までの間、両手を越えるナンパをやり過ごし、颯爽とする様からそういただいた。

早苗にとって不名誉である。


「どんなに声かけられても、本当に相手にしてほしい人から袖にされてますから。」

「その相手、気になるのよねぇ。どんな感じ?」

「傲慢で、ドSで、俺様で、気分屋で、」

「ん、ん?ん?」

「私があいつのことどう思っているか知っていて、焦らしてもてあそんで、」

「・・・・・・」

「どうしようもないやつで、本当に何処がいいのか全く解らないんですが、気になってしまう人です。」


静流と菜々美から、物凄く「あー」って感じの何かが漏れてくる。

わかってる。

一番馬鹿なのは自分だってこと。

何であんなのにひっかってるのか訳が解らない。

気がついたらどうしようもなくなっていたんだ。


「今何処にいるの?」

「多分ニューヨークだと思います。」

「だと思います?」


以前、急に声が聴きたくなって連絡をしたところ、話す電話の向こうから艶やかな女性の声がした。

それ系の動画かと思ったが、話の内容からリアルタイムらしかった。

直ぐに業務連絡に切り替えてサクサク切った自分を褒めてあげたい。

そのことが何度かあったある日、インダスドリームでカオルちゃんに愚痴り、その後あの訓練に強制参加させられたのは今も鮮やかな思い出だ。


・・・寒かったな、雪山。こわかったな、獣達。


護身術とサバイバルナイフに感謝したのは言うまでもない。

話は反れたが、以来、電話ではなく、メールでやり取りしている。


「あいつの居場所気にすると、もれなく寝台の美女が付いてくるんです。」

「それ、今すぐやめた方がよくない?」

「私もそう考えて、再三早苗に言ってるんですが、頑固なんですよね。もう、諦めました。そのときが来たら付き合うことにしてます。」

「あー、なんとなくわかるわ。・・・わかった。私も付き合う。」


・・・何その振られるの決定みたいなの。


そのときは斎藤の奢りで高級料理を食べに行こう。どこがいい?なんて話になっている。更に進んで、いっそ一泊旅行で奥鬼怒の秘湯なんてどう?なんて話しになって、女子トークが盛り上がる。

居酒屋でガヤガヤしているが、毛色の違う女子達に興味深々な男性陣がチラチラ視線を送る。

3人共なんとなく気が付いていたが、直接来ない限り放っておく。やぶ蛇は勘弁だ。


「菜々美ちゃんの彼氏って、谷川さんよね?彼って菜々美ちゃんの前ではどんな感じ?」


菜々美のビールを飲む手が止まる。

貼り付けたような笑顔で静流を見る。


「なんのことだか」

「この間、んー、1月ぐらい前、腕組んでコンビニに行く2人を見た。変装していたみたいだけど、骨格でわかった。」


・・・骨格?!


「あと、動きかな。谷川さんはメガネかけて髪形変えても姿勢と歩き方が特徴あるし、菜々美ちゃんウィッグ着けて、メイク変えていたけど、ペタンコ靴の歩き方、飲み会の時見たから覚えてる。」


ピンクのハート出ていたし、表情が違うし、気が付いたらしい。


・・・なにそれ、奇術?


「あ~。いや、きっとベツジンデスヨ?」

「ワタシ、メガイイカラマチガイナイデスヨ?」


だめ押しで、斎藤が「間違いない」と言ったことを告げられれば、最早ぐうの音も出ない。


「あ~、アイツの噂、知ってますよね?」

「とっかえひっかえってやつ?」

「あれ、実は、フラレた女子が流した根も葉もないデマです。」


見た目がよくて、チャラい印象を与える谷川は、積極的で、割りきった関係を望む女子からよく声をかけられた。仕事柄、適当に愛想振り撒いておいた方が円滑に進むことが多く、見た目からくる印象を払拭する必要を感じていなかった。

食事に誘われれば行くが、デートやキス、それ以上の関係になりそうになると上手くあしらっていた。

しかしながら、中には肉食獣もかくやとうい剛の者がいる。

最初は当たり障りなくやんわり離していたが、次第にしつこくなり、はっきり断る。この辺りから妙なスイッチが入り、ついでに後戻り出来ないらしい何事か事情が絡んできた(どうやら相手はもて女子で、断られたりフラレたりする経験がなかった。)そうで、冷酷に断ったところぶちギレて、あの噂を流されたらしい。

当時仕事で袋小路に入ってイライラしていたこともあり、うまくあしらえず谷川は辟易していた。

そこに通りかかったのが菜々美だ。

なんか余裕無さそうだなぁ。巻き込まれたくないなぁ。桑原桑原☆なんて思ったら目が合った。脱兎の如く逃げ出したはずがあっという間に襟首捕まれて捕獲。苦情申し立ての為に首を巡らせれば、物凄く見たらいけない笑顔で有無を言わせず引きずられ無人の休憩所へ。衝撃から立ち直らないうちに、いつの間にか手には当時はまっていたメローイエロー(復刻版)が握られていた。

事情を聞いたらつい同情してしまい、営業の見事な口上と鮮やかな手腕で偽装交際を引き受けてしまった。


「あのままの噂では上層部に入ったら支障が出るので、今は遊んでないってことで新しくできた彼女に一途って噂流したんです。」


噂だけでは信憑性が低いので、一緒にデートしたり、社内で広告塔の女子の前に出てハート飛ばしたり、何度も目撃されたり、なんだりかんだり。

そんな、変装して、菜々美だと気付かれないように細心の注意を払っていたデートの場面を見られていたらしい。


「なので、私と谷川さんとの間には色恋はありません。」


おかわりのビールとネギマを頼みながら菜々美は言った。

追い討ちをかけようと開いた静流の口に早苗はツクネを突っ込んだ。


女子会は続く。


思ったより長くなりそうなので、一旦区切らせていただきます。


読んで頂きありがとうございました。


また土曜日に☆

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