だから、何で脱ぐの?
どうなりますやら、御一行。
カサハリ妄想劇場、始まり、始まり~☆
席に戻ると、ちょっと嫌になった。
・・・何で脱いでんの?
斎藤は、スーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外し、ワイシャツの3番目のボタンまで外して胸がはだけた状態で座敷の床に転がっていた。
・・・無駄にフェロモン撒き散らしてる。
深夜1時を過ぎ、客がまばらになったとはいえ、少ない客の視線が痛い。
取り敢えず何故か綺麗に畳んであるスーツを掛けておく。目の毒。出禁になりたくない。
・・・営業って、お酒強いんじゃないの?
店主が早苗に近付いてきた。
「早苗ちゃん、今日もやらかしちゃったみたいだね?お連れさん、大丈夫?」
「んー、家に送っていこうにも分からないし、アタシんちは嫌だし、カオルちゃんちに連れて行こうかと。」
「じゃあタクシー呼んであげるよ。ガタイいい人たちみたいだから、うちの若いの手伝わせるよ。原田さんでいいんだろ?」
「ありがとうございます、大将!今度友達連れてきます‼」
原田さんは30歳のタクシードライバーで、早苗がやらかす度にお世話になっている。元柔道部で、黒帯保持者で、今でも休みの日や時間がある時は稽古に励んでいるらしい。
ガタイの良さが売りの、笑顔の爽やかな好青年だ。
早苗はため息をつくと、スマホを取り出し目当ての番号にかける。
僅かなコールで出た相手に、思わず笑みがこぼれる。
「カオルちゃん?早苗です。・・・はい、またやらかしました。ごめんなさい。」
にこやかなお説教が始まる。
チラリと斎藤に目をやると、スマホを取り落としそうになった。
・・・だから、何で脱ぐの?
スーツを綺麗に畳んで、その上にバサッとワイシャツが放り投げてある。
その横に寝転がる斎藤。
・・・ベルト外してあるし。
前が閉まっているからまだセーフ?
段々腹が立ってきた。
カオルちゃんのお小言を聞きながら、適切な相槌を打ち、席を移動する。お冷やの氷を掴む。大分小さくなったそれを斎藤の鼻に突っ込む。
「ぬがっ!ふぐっ‼」
起き上がり、鼻を押さえる斎藤の前に、ワイシャツを突き出す。
ペーパータオルで盛大に鼻をかみながら、乱暴にシャツを引ったくられた。
丁度その時、店の前に車が止まる音がした。
ガラリと戸が開き、屈みながら男性が入ってきた。
「今晩わ。いつもお世話になってます、原田です。早苗ちゃんは?」
「原田さん!助かった‼」
原田は苦笑し、撃沈してる2人を見る。
「今日は男と飲んでたの?返り討ち?」
「向かって来られてないし、返り討ってもない。・・・じつわもう一人・・・」
明後日の方を見ながらしどろもどろになる。
原田は最初、驚いたように目を大きく見開いたが、すぐに人懐っこい笑顔になる。
「早苗ちゃん、女の子なんだから、気を付けるんだよ。みんな守ってくれるけど、手が届かないとこじゃ無理だからね。」
早苗の頭をくしゃっと撫でると男達を運びに掛かる。
「肝に命じます。」
ただ、ただ頭が上がらない。
読んでいただきありがとうございました。
まだまだ続きます。
またあ~うひ~ま~で~☆☆☆