結;愛してる
長く続いて来ましたこのお話し。いよいよ本日で纏めとなります。
・・・皆様、心の準備はよろしいですか?
え?もうとっくにできてるって?
ではでは、ハッピーエンドに向かって、カサハリ妄想劇場、始まり、始まり~☆
「なぁにするのよ!この腹黒どS鬼畜男‼」
早苗の渾身の右ストレートを、腹黒どS鬼畜男こと京介は、軽くステップを踏んでかわした。
そのせいで髪が乱れ、さっきのキスのせいで息があがり、怒髪天貫く様は、ちょっと近寄りがたい。
回りを行き交う人はまばらだが、見かけた人は慌てて目を反らし、足早に去っていく。
「まぁ、落ち着けよ。きれいな顔が鬼の形相だぞ。」
ムカつくぐらいの余裕の笑顔に、早苗の中の何かがぶちギレた。
「何なの?それ。あんたのせいで私がどれだけ嫌な思いしたと思ってるのよ。」
「ふ~ん?」
キッと睨み付ける。その瞳から涙が流れているが、早苗は全く気がつかない。
京介は、ガードレールにもたれ掛かりニヤニヤしている。ように早苗には見える。他者から見たら、これでもかと言わんばかりの愛しくて仕方ない顔なのだが、お怒りモード大爆発の早苗には見えない。
「あの日、空港であんなこと言われてから、ご飯も食べたくないし、よく眠れないし。ちょっと気を抜くとあんたのことばっかり考えちゃうし!」
「で?」
「あんたのこと考えないように仕事に集中したら、やり過ぎて迷惑かけるし。そのせいで他の部署の先輩から心配されるわ、同期からは自分の方が大変なのに元気付けられるわ。
だのにあんたがいなくなって寂しいとか、心に穴が開いたようであんたがどれだけ心の中を占めていたのか思い知らされるし!」
ニヤニヤしているこの男の顔をひっぱたいてやりたい‼
早苗は京介に近付くと、胸ぐらをひっつかんだ。
「ホントに」
「そんなに俺のことが好きなの?」
・・・・・・は?
「俺のことが好きだから、カオルから何度もやめるように言われても固辞したんだろ?だから雪山訓練、参加したんだろ?」
「・・・な、んの、こ、と?」
優しく笑いかける。
「好きだから俺との電話で女の声聞こえて、メールにしたんだろ?俺からの急な呼び出しも、さもなんともないように会いに来たんだろ?どんなに草臥れてても、短い時間でも。
ドタキャンされて、やけ酒煽ってカオルに大吟醸の水割飲まされて止められるまで荒れたり、絡まれた男ども叩きのめしたりしたんだろ?」
「な、んで、それ・・・」
クスリと笑う。
いつの間にか早苗は京介の腕のなかにいた。
ふわりと抱き締められる。
「どんなに腹黒どS鬼畜と罵っても、煽るだけ煽ってほったらかしにされて、男どもにひどい目に遭わされそうになっても」
ぎゅっと抱き締められる。
「俺とは正反対の、お前に安定を与えてくれそうな男に言い寄られても、突っぱねたんだろう?」
優しく髪を撫でられる。
嫌なのに。物凄く頭にきてるのに。
だのになんでこの男を突っぱねられないのだろう。
「・・・泣くほど、俺のことが好きなんだろう?」
早苗は漸く泣いていることに気が付いた。
全然悲しくないのに。
この男に対して怒ってるのに。
なんで泣いているんだろう。
「く、くやしいぃぃぃい。」
京介の胸に顔を埋める。
涙も何もかも、男の服に吸い込まれていく。
僅かに笑ったような気がした。
空には、今年最後の満月が浮かんでいた。
翌日。
例によって空港のロビー。
2人は珍しく肩を寄せあって座っていた。
会話はない。ただ静かに手を繋いで座っていた。
アナウンスが無情にも鳴り響く。
早苗はため息をついて立ち上がった。
「・・・この間のこと、覚えてるか?」
「・・・忘れるわけないでしょ。」
そのせいで散々な目に遭わされたんだ。
「じゃあ、そのあとの言葉は?」
「あと?」
終りにしようでインパクトが強すぎて、言われたことすら覚えていない。
京介は、悪戯っぽい笑顔を向ける。
「まぁ、あれだけ派手にいったから、その次は忘れてるだろうと予想はつく。」
すっと早苗に向き直る。
真剣な目に、思わず緊張する。
何を忘れているんだろう。
全く思い浮かばない。
「早苗は、俺のこと、どう思ってる?」
「なっ?」
昨日、あれからホテルに連れ込まれ、肌と髪が荒れていることから、本気コースをされ、散々なかされて、攻められて、何度もお預けをくらいながら、何度も言わされ、求められたのに。今更再確認とは、どれだけ鬼畜なんだ。
答えるより、文句を言おうかと口を開きかけるが、あまりに真剣な目にとまる。
なんて綺麗な目なんだろう。吸い込まれそうにキレイデ、キラキラしていて、生きてる。生きて、その光を放っている。
「・・・愛しているわ。京介。」
思わず出た本音に、慌てて口を押さえるが遅い。
京介が笑う。今までみたいにニヒルでも、悪戯っぽくでもなく、ただ、純粋に慶びの笑顔。
「じゃあ決まりだな。早苗も行くぞ。」
「行くぞって、何処に?」
「ニューヨーク」
「はあ?仕事は?住んでる所は?パスポートは?荷物は?」
「仕事は20日付けで退職になってる。残りの日付は有給消化だ。後釜はちんまいポニーテールだ。住んでる所はもう引き払ってあるし、荷物はまとめて送ってあるし、解約もしてある。パスポートは作ってある。荷物は・・・」
「・・・こちらをどうぞ。」
「カオルちゃん⁉」
いつの間にかカオルが早苗の旅行鞄を持って立っていた。
なんだか呆れたような、でも、なんとなく分かっていたような目をしている。
「こっちはやってあるから、その鬼畜外道にドーンと乗っかっていきなさい。」
「だって、仕事も全部、何が何やら。」
「永寿の48手らしいぞ。」
因みに、永寿の48の一手の略らしい。48ある特技の呼び名らしい。
それを使い、すべてのことをやったそうだ。
・・・恐るべし、永寿。
そういえば、朝ホテルに駆け込んできたとき、「俺の48手が」とかぼやいていた気がする。
深く考えると犯罪の臭いしか知らないので敢えて蓋をする。
「・・・もう逃げ道はない。諦めろ。」
「なっ」
「因みに婚姻届けはまだ出していない。」
当たり前だっと叫びたいが飲み込む。
今はこっちだ。
「俺についてこい。」
絶対に叶うと思ってやまない声色。表情は嬉しさをみせている。
なんでこの男がいいのだろう。
なんでこの男じゃないとだめなんだろう。
ただわかるのは、昨日会ってから早苗の心は満たされていること。そして、離れたくないと思っていること。
「しょうがないから一緒に行ってあげる。」
眩しいくらいの笑顔と一緒に、京介の胸に飛び込む。
愛してる。
どちらの口からか漏れた。
互いに目を会わせると、どちらからともなく唇を重ねる。
まるで誓い合うように、神聖なそれ。
直ぐに離れると、ハニカム早苗が、カオルに手を振る。
そして、仲睦まじく歩いていく。
その姿をカオルは見送る。
全く見えなくなったところでくるりと向きをかえる。
「落ち着くところに落ち着くのよ。」
お幸せに。
誰からとなく呟かれた声は、風と共に舞い上がっていった。
まるで2人に届けと言わんばかりに。
皆様、お気付きかと思いますが、完結ではありません。
まだ、解き忘れたものがございます。
ご存じの通り、次はチェイサーです。
それで完結です。
多分、ぶれませんよ?
読んで頂きありがとうございました。
ではまた、土曜日に。




