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酒と枠なしザルと男と女  作者: カサハリ職人
23/25

転;・・・何を言ってるんだ、この鬼畜

やって参りました。

転でございます。


・・・今回は間に合いましたよ?多分。

ま、間に合いましたよ?うん。


カサハリ妄想劇場、始まり、始まり~☆

3人で食事会をして、暫く経った。

ここ最近、海外との繋がりができたせいか、物凄く慌ただしい。更に、中途採用の事務が入ってきて、教育係となった早苗は、連日残業が続いていた。

新人は、黒髪猫目の、早苗より小さな女の子で、キビキビ動いている。大手証券会社の営業事務をしていたそうで、畑違いで大変ではないかと不安だったのだが、経験を活かしつつ、次々と新しい仕事を覚えていく。数字や分析に強く、どんな仕事も時間内に的確に捌いていく。

難点を強いてあげれば、どうも運動は苦手のようだ。護身術がなかなか上達せず、よく相談される。残業の多くはこの相手だったりする。

もうすぐ教育期間が終わり、この状態なら一人で任せても大丈夫だろう。


パソコンの電源を落とし、机の周りを整理する。

挨拶をして更衣室に向かう。

ロッカーを開けると、スマホにメールありの点滅。見ると、高橋からだった。

どうやらいつぞやの約束らしい。場所と時間の指定があった。

特に断る理由はない。快諾すると、さっさと着替え始めた。


指定されたのは会社からいくつか離れた駅の近くのレストランだった。店内は、照明がやや落とされ、落ち着いた雰囲気だ。客はみな、静かに会話し、料理に舌鼓をうっている。

店員に案内され、高橋の待つ席まで行く。

高橋が気付いて早苗に笑顔を向ける。


「急な申し出ですまない。今日漸く時間がとれたんだ。」

「大丈夫。今日は珍しく早く終わったから丁度良かった。

お誘い、ありがとうございます。」


少し茶目っ気を出して挨拶する。

直ぐにウェイターが食前酒と前菜を持ってきた。

どうやらコースのようだ。


和やかに食事は進み、あとはデザートとコーヒーとなった。

コーヒーを静かに飲む。

香りも味もほっこりとして美味しい。

ふと見上げると、高橋と視線があった。

何やら、微笑ましい様子で、にこにこしている。


「何?私、変?」

「いいや。美味しそうに食べるな、と思って。」

「美味しかったからね。コーヒーもデザートも。」


二人で静かに微笑みあう。

その表情の裏で思う。

あの男とは、こんな風にまったりすることはなかった。いつも嵐の中にいるみたいで、落ち着かなかった。

まぁ、滞在が短い中会っていたから、仕方がないと言えばその通りだ。

でも、満足感はあった。充足感もあった。

結果、喪失感があって、荒れたんだけどね。

今となっては、方々に迷惑をかけたのは恥ずかしい話である。

つい居たたまれなくなって目を伏せてしまう。

その儚い仕草を見て、高橋が目を見張ったが、早苗は全く気が付かなかった。

直ぐに気を取り直すと、軽く咳払いする。


「そろそろ出ようか。」


然り気無い仕草で離席を促され、ついでに何故か手を取られ立ち上がる。

手を繋いだまま入り口まで行き、店員に見送られて出てしまう。


・・・いつの間に。


高橋という男、思ったよりスマートな男のようだ。

特に何も話さずに、手を繋いだまま駅に向かって歩く。

ここでもまた思ってしまう。

あの男はこんな風に優しくなかったと。むしろ、引きずられるように、こっちのペースだの、状態だのお構いなしに引っ張り回された。でも、転んだり靴が脱げたりすることも、怪我することもなかった。横目でチラリと確認しながら、ワタワタする早苗を見て笑っていたのを思い出す。


あの男、鬼畜でもあったのか。


今ごろ気がつく衝撃である。

そして思う。もう、そんなこと気が付いてもどうしようもないのだと。


「あ。」


何もないところで爪付いた。

転ぶ、と強く目を閉じる。

が、何かに抱き寄せられ、難を逃れる。


「危ないな。気をつけて。」

「あ、ごめん。」

「そんなに飲んだか?」


高橋が抱き止めてくれたらしい。

早苗は曖昧に笑って誤魔化す。

礼を言って離れようとする。だが、更に強く抱き締められ、びっくりするしてしまう。


「高橋君⁉」

「ごめん。俺、杉原のこと」


話途中で強い力で引き剥がされる。

状況を理解する前に、後ろから抱き締められる。


「全く。お前は俺がいないと他所の男に手をつけられる。」


脳の奥まで染み込む低音の声。鼻をくすぐる男らしい香り。何度も抱かれて忘れられない力強い腕。

あの日から何度も忘れようとして、でもできなくて。

あの日から何度も夢に出てきて、起きると冷たいシーツに絶望して。

何度も思い描いて、恋い焦がれて。


瞬間、早苗の心を支配したのは怒りだった。

文句を言おうと振り向くと、そのまま口付けされる。

抵抗しようとすると、顎を固定され、抱き締める腕も強くなる。

強引に唇を割って入ってきた熱が、たちまち理性を奪う。

長い時間かもしれない。もしかしたらずっと短かったかもしれない。

漸く唇が離れたとき、早苗はぐったりしていた。


「こいつとの楽しい一時を過ごしたようでよかった。

今ので事情は飲み込めただろう?ここまで送ってくれて感謝する。」


不適な笑みであの男は高橋を見る。

高橋は気まずそうに頭をかくと、ため息をついた。


「あー、なんだ。杉原、また会社でな。」


そう言うと足早に去っていった。


「馬に蹴られなくて幸いだったな。」


・・・何を言ってるんだ、この鬼畜。


早苗はくったりともたれ掛かったまま、天を仰いだ。




ね、間に合ったでしょ?

うん、間に合った。


いよいよ次は、結、でございます。


・・・結。結?


纏まるよう、頑張ります。


読んでいただきありがとうございました。

ではまた土曜日に。

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