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酒と枠なしザルと男と女  作者: カサハリ職人
18/25

いろんな意味で休めない

チェイサーではないです。

閑話休題?


・・・そんな素敵でもないです。


斎藤さん、頑張れ!


カサハリ妄想劇場、始まり、始まり~☆

その日、オフィスでは激震が走った。

営業課唯一の事務、杉原早苗が風邪で休みだそうだ。熱もあり、39度とか。

今日、明日は休みだろう。

今日、明日と会議で使う資料だの、契約の書類だの、顧客情報だの、出張の手配だの、経費だの、なんだのかんだの。本来事務3人で行っていた業務を早苗1人でこなし、今までやって来た。


・・・これは、とてもマズイ。


新人をと人事にせっついても「今はそっちに割けない。」だの、「回ってるからいいだろう。」だの、のらりくらりと躱される日々。

その皺寄せが今来た。

しかも、運悪くなのか、これは神が与えたもうた試煉なのか、契約が立て続けにある。出張がわんさかある。会議も連なり、これって回らなくね?と誰しもが感じた。

会議をとるか、契約をとるか。

どっちかは落とす覚悟が必要。そこまで追い込まれていた。


「なんとか人事と掛け合って、ヘルプ頼んだ。もうすぐ来るはずなんだが・・・」


斎藤は、若干イライラと時計を見る。彼も外回りと、契約がある。その時間が迫ってきているのだ。

他の社員も同じで、空気がピリピリしてくる。


「・・・すみません。新幹線の時間があるので。」


前園が荷物を持って立つ。

時間を見ればもうギリギリだ。


「ああ、頼んだぞ。」


そして、次々と言葉少なく出ていく。

約束の時間を10分過ぎたところでヘルプの事務が来た。


「遅くなりました~。すみませ~ん。」


・・・絶対悪いと思っていないだろう?


入ってきたのは、見事な巻き髪と、バッチリ化粧(おそらく1時間はかかっていると思われる)、ふんだんにデコラティブされた爪に、媚びたようなクネクネした動きの女性だ。

以前、静流によってNASAかJAXAと言われた片方。名前は、


「ヘルプできました、七沢です。よろしくお願いしま~す。」


ウィンクしそうな勢いで挨拶してきた。

斎藤の眉間にシワがよった。

営業課の面々が見たら、恐怖で顔を引き攣らせただろう。

七沢は全く気が付かず、花を飛ばしそうな勢いでニコニコしている。


「今日はもう皆出払ってしまったため、挨拶が出来ないが、よろしく頼む。

今日の会議の資料は杉原が作ってくれているから、それを印刷して必要部数纏めて置いてくれ。午後には必要だから、早めに頼む。

後は杉原のデスクに書類があるから各々纏めておいてくれ。困ったことがあったら各々担当に連絡して聞いてくれ。アドレスはデスクに置いてある。

俺も出るから何かあったら連絡してくれ。」


と、荷物を持ってさっさと出ていく。

後に残された七沢はポカンと立っていた。





・・・確かに、何かあったら連絡するように伝えた。

新人でもないのに、何だろう。この着信の数。


パソコンのパスワードがわからないから始まり、ファイルがどこにあるかわからない。複合機の使い方がわからない。などなど。


斎藤は、ちょっとだけイラッとした。

何とか外回りを終えて帰社したところで、更にイラッとした。


「すみませ~ん。資料、まだできてませ~ん。」


昼休憩を無くすことで何とか間に合った。

資料は共有フォルダにあったし、印刷は特に問題なかった。

頼んだ書類はまだ手付かずだった。

何をしていたのか問いただしたかったが、今はそれどころではない。

バタバタと会議に向かう。

午後いっぱいの会議を終え、営業課に戻る途中、七沢の所属する課の課長が話しかけてきた。

曰く、「迷惑掛けて済まない。うちでも困っている。何とかしてくれ。」


くそ忙しいのに、面倒見れるか。


斎藤が課長になってから、「営業課は定時上がり、どうしてものときは7時まで。」が暗黙の了解になっていた。メリハリをつけて、効率よくがモットーだった。

だが、今日はそれを破らざるを得なかった。時計は8時を回っている。そのなか営業課の多くがパソコンに向かう。キーボードを叩く音だけが聞こえる。

七沢は定時とともに帰宅させた。

課の面々の精神衛生と、血管を守るためである。

特に前園の。

質問があれば聞くように伝えた。確かに、ツタエタ。

だが、何度も同じことを聞かれ、その度にボディタッチをされ、パーソナルスペースを侵され、前園はかつてないほど不快なオーラを放っていた。だが、気が付かない。物凄い鋼の神経と鈍感な心の持主なのだろう。

ポツリポツリと面々が帰っていく。

一段落してパソコンをシャットダウンすると、時計は10時を回っていた。


「お先に失礼します。」


前園の声で顔をあげ、背筋を伸ばす。バキボキと音がなる。


「ん。ああ、気を付けて帰れよ。」

「はい。課長も。」

「ああ、余談だが、ネコは元気か?」


前園の顔が途端に真っ赤になる。


「ね、ねこ、ですか?うちはペット禁止のマンションですが。」

「ああ、黒い毛並みで高いところで1つに縛った、ちょっとつり目の、背はお前の胸の辺りで」

「ああ、はい!飼ってますネコ。黒い毛並みの。」


思わずニヤリと笑う。


「癒してもらえよ。」





翌日、杉原はまだ熱がさがらないと連絡が来た。


・・・明日まで継続か。


「おはようございま~す。今日もお世話になりま~す」

「おはようございますぅ。ヘルプの約沢ですぅ。よろしくお願いしますぅ。」


NASAとJAXAが揃った瞬間である。





翌日、熱が下がった早苗は、マスク姿で通勤してきた。


「おはようございます。この度は体調不良でご迷惑をお掛け致しました。」


深々と謝る早苗に、営業課の面々は女神降臨と言わんばかりの目で見てきた。

早苗はかなりひいた。


「杉原さん、いつもありがとう。あんたのお陰で俺たちは物凄く仕事に集中できるってわかった。感謝しかない。ありがとう」


阿部と松永が半泣きで訴えてきた。


・・・アタシが休みの間、ヘルプが来たって聞いたけど?


席に着いて、パソコンを立ち上げて絶句した。

壁紙が某サイコホラー映画の某レクター博士のアップになっていた。正面を睨みつつ不敵な笑みを浮かべる様は、頭の奥に激しい警鐘が鳴る。


いろんな意味で休めない。







斎藤さん、頑張った。

前園さん、耐えた。


・・・前園さんの救済は必ずしなければと思っていたので、ちょこっと書けてうっすらと嬉しいです。


NASAとJAXA、もうちょい使えないように書きたかったのですが、ワタクシの能力不足で申し訳ありません。


読んでいただきありがとうございました。

ではまた土曜日に。

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