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酒と枠なしザルと男と女  作者: カサハリ職人
15/25

チェイサー~嘘とホントと会議と釣りバカ

サイドストーリーをちょいちょい出すなら、インダスドリーム!

人との出会いだ、インダスドリーム!

さぁさ良いとこ、1度はおいで♪のインダスドリーム!


・・・カサハリ妄想劇場、始まり、始まり~☆

閉店を知らせる時計の鐘が鳴る。

馴染みの客がチェックを済ませ、静かに店を後にする。

客のいなくなった店内はどこか物悲しく、しかし今日も無事に終わったことであたたかな雰囲気が漂っている。

使った道具の片付けを始める。『closed』に変えようと入口に来たとき、それは起きた。


「ぶぐぉ?!!」


顔面にドアの角がぶつかった。


「あら⁉ごめんなさい‼」


慌てた様子だが、ドアが戻る様子はなく、変わらない圧力で存在を示している。


「・・・いらっしゃいませ、お客様。申し訳ありませんが本日の営業は」

「まだやってますよね?だってまだ閉店5分前ですよ?」


そう言って某ブランドの時計を見せる。


・・・確かに5分前だわ。この時計は。


「・・・今からならスイスのチューリッヒへの最終便に間に」

「私の時計でも5分前です!」


もう一人、後ろから時計を見せる。


「・・・ニューヨーク5番街で朝食をご所望でしたら最終便に」

「「カオルちゃん、5分前ですよ‼」」

「ああ、もう‼かしましいわよ!女の子が店先ではしたない!さっさと入りなさいよ‼」


カオルちゃんは折れた。ついでに体を後ろに引いて、物理的にも折れた。

なだれ込むように女性2人が入ってきた。


「きゃ~☆かしましいですって⁉昭和レトロ!」

「きゃ~☆はしたないですって⁉大正ロマン?」

「「きゃ~☆☆」」


酔っぱらいに反論しても助長するだけである。

カオルちゃんは早々に見切りをつけると、2人をカウンターに案内し、自身はその向こうに進んだ。


「もぅ、あんたたち、飲み過ぎ!これでも飲んでなさい‼」


差し出されたのはみそ汁。具だくさんのけんちん汁は、湯気が出て美味しい匂いを出している。

2人は喜びと驚きの笑顔で両手を合わせると、いただきますと食べ始めた。

カオルちゃんは、その様子を慈愛に満ちた目で見ながら、僅かな視界の端でスマホを認識しつつ、即座にとあるアドレスを呼び出す。最小限の動作でテンプレートを打ち込み送信。あとは待つだけだ。


「美味しい。」

「体に染みるわ~。」

「んもぅ、女の子なんだから体を大事にしなさいよ。」

「仕事のストレスで、肌も髪もボロボロよ。」

「え~?見た感じわからないですよ。」

「聞いてよ、もぅ。私の上司ってば、社長なわけ。」


会社の規模としては中小企業だが、社長が先陣切って奮闘努力の結果、今や海外企業への繋がりを持つほどになった。

「俺の頭下げたり、顔見せに伺うだけで繋がりが強くなったり、産業が潤うようになったら、すっげー安上がりじゃね?」を合言葉に昔からの繋がりのある企業や新たに契約した会社のなどに定期的に出向き、交流を持っている。その時は強かに情報収集は忘れない。


「仕事できるのよ?速いし、正確だし。嫌なことされないし、しないし。職場環境だってとってもいいのよ?」


でもね、


「会議の度に、机の下でルアー作るのって、どうなの⁉」


ルアー。釣りに使う疑似餌のことである。針が付いていて、直接魚を狙う。魚を模したものや虫、なんだかわからない形など様々ある。

社長は持ち込んだ鉛筆をカッターで削り、会議の度にせっせと作っている。

会議に参加していないわけではない。むしろしっかりとした受け答えで進めていく。と同時に机の下で作業に勤しんでいるのだ。

因みにカスは太股の上にティッシュを敷いている上に、細心の注意を払っているので欠片ひとつ落ちていない。


「まぁ、誰も気付いてないし、仕事に支障出てないから多少は目をつむるけど、完成したそれ持って近くの川に行って試してるって、どうなの⁉昼休憩削ってまでやることなの⁉」


思わず拳を強く握り訴える。


「探しに行く私の身にもなってよ!何が悲しくて都内の川巡りしなきゃならないの⁉」


スマホのGPSを頼りに行こうにも、不携帯で出ていく。何度か休憩前に声を掛けるのだが、やっぱり持っていかない。

苦肉之策で、営業課の木嶋に頼んで超小型のGPSを作製してもらい、毎朝身だしなみチェックと称してワイシャツのポケットに忍ばせている。


「ジャケット着てても出し入れられるようになったって、私、どこのスリ師なのよ⁉」


そう、帰り際にこっそり回収しているのだ。

2人はなんとも言えない顔で見る。

スマホ片手に疾走する美女。

きっと社長を見つけたら綺麗な笑顔で、首根っこひっつかんで連れ戻しているのだろう。


「あなた、これでも食べなさい。」


目元を押さえながら塩おにぎりとぬか漬けを出す。

背中を擦られながらあむあむ咀嚼している。


「・・・あんたの方は大丈夫なの?」

「え?」

「ほら、擬装恋愛とか、使えない部下とか。」

「ああ、それなら・・・」

「・・・両方化けたのよね。」


ぼふっと音が出そうな勢いで首から上が真っ赤になる。


「何?モテ期?モテ期なの?」


グイグイと2人に詰め寄られる。

シドロモドロになり、視線をさ迷わせる。


「・・・何それ?すっごく興味深いんだけど。」


2人の動きが止まる。

カオルちゃんは笑顔で声のした方を向く。


「あらぁ、谷川。待ってたわよん?」

「社長の釣りの件、確かに聞いた。」


あの糞爺ぃ、しめる。とか聞こえたが、スルーしたい。


「あらぁ、斎藤も。いらっしゃい。」


こちらもニッコリ。

スマイルゼロ円ですが、何か?


「か、ずなり?今日はお友だちと夜釣りじゃなかった?」

「・・・緊急連絡網で報せがきた。」


・・・緊急連絡網って、学生か⁉


手を取られ、立ち上がると簡単な挨拶を済ませ店を後にする。


「・・・菜々。」

「何よ。」

「何かあったら俺に言うように言ったよね?それとも、1人でなんとかなると思ってた?」

「別に、なんとかするし?」


谷川ははぁーっとため息をつく。


「俺って、そんなに頼りにならない?それって俺に対して失礼なんだけど。」

「そんなことないよ?」

「あんなのあしらう位雑作も無いことだよ。・・・言われないで菜々が思い悩む方が辛い。」

「えっ?」

「仕事で接する機会があるだけでもムカつくのに、プライベートでも煩わされるって、1度思い知らせた方がいいかもね。」

「ちょっと!隼人にはそこまでされる理由がないよ。」


理由ねぇ・・・と目を細める。

何かまずいものを踏んだらしい。谷川から、冷気みたいなのが吹いてくる。

カオルちゃんは、あらぁ、冷房効きすぎかしらねぇなんて言ってる。


「だってあの人は一緒に仕事してなつかれただけだし。」

「口説いて、キスして、押し倒されたら、なつかれただけじゃないと思う。」

「なっ・・・」

「知らないと思ってた?営業、なめすぎだよ?」


逃がさないというように菜々美を見つめて追い詰めていく。


「本物と擬装の違いがわからないなら、教えてあげる。」


耳元で静かに囁き、小さなリップ音を立てる。

混乱で真っ赤になる菜々美を抱き抱え、カオルちゃんを見る。


「お代、頂くようなもの、出してませ~ん。」


しっしと追い払う。

会釈をして出ていく2人を見送る。


・・・なんか、ごっそり削がれた気分。


ちょっとだけカウンターに突っ伏す。

が、直ぐに来客に気付き起き上がる。

何か言おうとして、動きが止まる。


「Hi,Kaoru.」

「・・・Jill?」

「Yes.Here?」


椅子を勧めつつ、これが現実かわからない。表情は面白いぐらい崩れているだろう。

それでも構わない。


・・・千客万来かしら?


題名は逆の方が話の流れに沿ってるんですが、ゴロ的にこっちにしました。


鉛筆ルアーはできないことは無いですが、難しそうです。無理です。


きゃいきゃいする女子。楽しそうですね。


え?ワタクシですか?飲んだらお腹一杯になるだけで、あんまり変わりませんよ?


読んでいただきありがとうございました。

ではまた土曜日に。

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