余興も悪くない
ちょっとだけ好戦的な感じです。
やられるまえに、やれ
飲む前に、飲め
です。
カサハリ妄想劇場、始まり、始まり~☆
全身エステにマッサージ。ドレスを着て、メイクに髪をまとめて、アクセサリーを着けて。「どこに行くの?私。」の完成。
更なる磨きのかかった肌は、「透き通るような」と言われるようなもの。
・・・私、どこに向かっているんだろう。
「でぇきた、できた♪イミテーション。さあ、シンデレラ!化け薬で魑魅魍魎蠢く夜会へ強制参加だ☆」
永寿はにこにこと不安以外見当たらない単語を言う。
慣れない10センチピンヒールを履かせ、クラッチバッグを持たせると、早苗の手を取り、ルンタルンタスキップしそうな勢いで入り口に向かう。
「本日の王子さまは、こちら♪」
開けた扉の先に京介が時計を見ていた。
目が合うと少し見開いて、ニヒルな笑み。
「ああ、綺麗になったな。」
「性格がネジくれて、根性がひん曲がり、俺様腹黒王子サマ☆こと、各務京介~♪精々自分の身は自分で守れよ☆」
あばよ‼と行ってしまった。
「あいつ、器用だろう?髪もメイクもお手のもの。気が向いた相手じゃないとやらないけど、妥協をしないからいいものが出来上がる。」
綺麗だなと、頬を優しく撫でる。
「じゃ、今から同伴じゃないとメンドクサイ所に行くから。ちょっと嫌なこととか、ものとかあるかも知れないが、なんとかなるから。」
そう言うと京介は早苗の腰に手を回しエスコートして行く。
早苗は半ば引きずられるように歩いていく。
そして強引にタクシーに詰め込まれる。
・・・今、とんでもないこと言われた気がするんだけど、何?
着いたところは某有名ホテル。
京介はなれた手つきで早苗をエスコートすると、迷うことなくエレベーターへ。会場のある階を押し、改めて早苗を見る。
「始めに何人か挨拶回りする。そこに付いて行ってほしい。それか終わったら余興がある。俺は離れるけど、適当にやっていてくれ。帰りに声かける。」
説明が終わる頃エレベーターが開き、そのまま会場となり、質問をする間がない。
直ぐに声をかけられ、2人でそちらに向かう。
顔を見て直ぐにベンチャー企業の社長であることに気付く。
無意識に仕事モードの万人受けする笑顔になる。
簡単に自己紹介する。
そうして次々と人の輪を巡っていく。
あらかた早苗の中の人物辞典がめくり終えた所で、軽食コーナーに行く。
色とりどりのオードブルが並ぶなか、ウェイターから飲み物を受けとる。
グラスを傾けて、ひと口流し込む。
シャンパンのシュワシュワした喉ごしが、思ったより渇いていたことを知らせる。
「これで挨拶は終わりだ。余興の準備があるから俺は行く。粗相しないで大人しくしてろよ。」
ウィンクひとつでさっさと行ってしまう。
早苗はひとつため息を吐くと、端の方の椅子に腰かける。慣れないヒールが靴擦れをおこしていた。ちょっと血がにじんできている。
ウェイターに絆創膏でも貰うかと、顔を上げたところ、見知らぬ黒人男性と目が合った。ような気がした。というのも、男性はサングラスをしていたからだ。「屋内でサングラス?」と思ったが、まぁ、個性だととる。恰幅のいい男性で、着ている服のボタンがちょっと胸を張れば弾け飛びそうだ。その男性が、体を揺らして近付いてきた。
「見たところ、困ってるみたいだね。」
直ぐにウェイターを呼んで、絆創膏を持ってきてもらう。止める間もなく跪いて、靴を脱がせるとさっさと処置してしまう。
「ありがとうございました。助かりました。」
感謝の笑顔。男性は少し笑むと、早苗をまじまじとみた。
「キョウスケの知りあい?」
「はい。自己紹介が遅れました。杉原早苗と申します。」
立ちあがり、頭を下げる。
男性は少し目を細めると、
「これから少し嫌な思いをするかもしれない。だが、どうしても通らなければならない道だ。試練に立ち向かえる力はあるから、大丈夫。前を向いて。」
最後ににっこり笑うと、人混みに紛れていった。
思わずポカンとする早苗。
今日はやたら予言的なことを言われるなぁ。なんてのんびり考えてしまう。
早苗の右側から何やらざわめきが。
見ると、酔っ払った男性が。灰色の髪に、これまた灰色の瞳。白い肌に彫りの深い顔。ギョロリとした目が早苗を見る。そして、聞き取れないぐらい早口で何か大声で言ってきた。
瞬時に仕事モードになった早苗は、一切の表情を無にした。
おそらくドイツ語だろう。全く言ってることはわからないが、周囲の様子から、あまり芳しくないことは言われているようだ。
会場の何人かは眉をしかめ、何人かは嘲るような視線をよこす。
・・・これが嫌な思いねぇ。
何を言われているのかわからないから対処の仕様がないが、まぁ、切り抜けられないことはない。
早苗はチラリと周囲に目配せすると、佇まいをなおし、ただ艶然と微笑んだ。
周囲からは見惚れるような。男性からは恐怖で足がすくむような。
・・・カオルちゃん直伝、無言の威圧。
男性は少し青ざめた顔で、何事か捨てゼリフをはいて行ってしまった。
その後、「余興ってこれのこと?」と言いたくなるような小さなアクシデントが続いた。
例えば女子がぶつかってきて酒をかけられそうになったり、誰ぞ知らない人から歩いていたら足かけられそうになったり、やたら好戦的な視線が飛んできたり。なんだりかんだり。
酒はスルーした後、転びそうになる女子を支えてにっこりした。足はよけた後よろけたふりして踵で踏んでみた。好戦的な視線には挑戦的な笑顔。
ここだけの付き合いだし。京介が無理矢理連れてきたし。やることが小物過ぎて情けなくなってきたし。
もとより、カオルちゃんから、売られた喧嘩は慎んでお受けするように言われてきたし。
・・・いいよね?
口の端が少しだけ上を向く。
余興も悪くない。
中途半端感、半端ないですね。
次回、早苗の踵落としが炸裂するか⁉
乞うご期待‼
・・・嘘です。バイオレンスは嫌です。
読んでいただきありがとうございました。
ではまた土曜日に。




