チェイサー~ノンアルコールビールと偽装と少しだけホントの気持ち~
この話、10話目でいれて、きりのいいものにしたかったのですが、心配性の男たちがね、ほら、ね!
女子会の裏の男子会。
妄想劇場、始まり、始まり~☆
ドアが開いて、来客を報せるベルがなる。
使い込まれて黒炭のような深い色合いを出すカウンターの席に黒髪の男が腰かける。
「お久し振りですね。何になさいますか?」
席について一段落したところで話しかける。
男は申し訳なさそうに小さく笑う。
「済まないが、人を待っているのでノンアルコールビールで頼む。」
「畏まりました。」
グラスに琥珀色の液体を注ぎ、つまみのナッツを添える。
再びベルがなり、茶色の髪の男が入ってきた。
カウンターの席に座る男を見て少し目を見開くが、直ぐに笑顔を作る。
「斎藤課長もここですか?」
「谷川か。」
席についてすぐ、谷川はノンアルコールビールを注文する。
「終わったのか?」
「ええ。しっかり契約しましたよ。」
谷川は今、大口の契約に集中していた。これが成功すれば会社は更なる飛躍を遂げ、海外企業との業務提携も可能となり、海外進出も本腰となる。今までの海外企業との契約よりより難しく、重圧の掛かる仕事でいつになく緊張していたのを思い出す。だかここ最近、1月ばかりはメリハリがついて、穏やかな顔をすることも見受けられた。
おそらく彼女のお陰だろう。
「海外赴任か・・・」
契約がなされたと言うことは、谷川が海外赴任になる可能性が高くなったということだ。
余計なお世話だとは重々承知しているが、これに伴い今の総務から彼女が抜けるのは手痛い。
「・・・課長はもう気付いてるんですよね。」
「1月ぐらい前に一緒に歩いているのを見た。・・・本気か?」
谷川は自嘲気味に笑うと、ことの顛末を話した。
言い寄られた相手がまずくて、とんでもない言い掛かりを付けられ辟易していたこと。それを何とかするために、たまたま通りかかった彼女を言いくるめて、偽造交際をしていること。
お互い、割りきっていること。
そう、割りきっているんだ。
割りきってるはずなんだ。
前髪をかきあげ、また自嘲気味に笑う。
とんだ茶番だ。
なにを浅はかな夢を描いたのか。
「連れていきませんよ。今、声を掛けても仕事が大事な場面であることを彼女は知っています。放り出すことなど彼女の矜持が許さないでしよう。」
「時期を見て連れていくってことか。」
・・・話、聞いてないのかなぁ。
「3年だな。それまでに向こうの支店、軌道にのせればいい。」
そうすれば引っ張ってこれる。
思わず谷川は止まってしまった。
さっきまでそんなこと考えていなかった。
だって、偽装だから。
お互いに割りきってるから。
それなのに、今、斎藤の言葉に衝撃を受けた。
これまでの鬱屈とした何かが晴れていく思いだった。
だからずっと引っ掛かっていたんだ。
「・・・俺、とんでもない自意識過剰野郎らしいですよ?」
「今更だろう?」
グラスを傾けると中身を一気にあおる。
その時、スマホが振動した。
見ると早苗からだ。
苦笑するとチェックを済ませ立ち上がる。
「行く方は同じらしいな。」
「お互いに転がされていますね。」
それも悪くない。
「またのお越しをお待ちしております」
赤髪のマスターが優雅に一礼する。
2人はインダスドリームを後にした。
さて、お互いの愛しい人を迎えに行こう。
呼び出されたバーに着いて、「目が離せない」と思ったのは後の話である。
2人共、車で来たんですよ~☆
飲むと公共交通機関はちょっと大変ですからねぇ。
妄想では斎藤はオフロード車で、谷川はスポーツタイプです。
読んでいただきありがとうございました。
ではまた土曜日に。




