「イケメン、爆ぜろ」
縁なしザル女子と、働く男子が書きたくなったので書いてみました。
みんな、どっかに欠点のひとつやふたつ、むっつやななつ、あるよね(遠い目)
この作品はフィクションです。登場する人物、団体などは実際にあるものと全く関係ありません。
カサハリ妄想劇場、始まり始まり~☆
杉原早苗は、今日も2台のパソコンを操っていた。
右のパソコンには担当営業マンが持ってきた契約に関する書類の下書き。
左のパソコンには会議の書類。
それらを次々と同時に処理していく。
ついでに電話対応もして、来客対応もしている。
「杉原さん、頼んだ書類、出来てますか?」
「松永さん、デスクの上に置いておきました。確認をお願いします。」
「杉原さん、経理にこの書類持っていくけど、他に何かある?」
「阿部さん、こちらの山形産業との競売の書類もお願いします。そのまま外回りですか?」
「今日中に2件契約こぎつけてくる。」
「青葉商会なら、こちらもお持ちください。役に立つかと。」
目まぐるしく出入りし、やり取りも激しい。
ホワイトボードはいつも真っ黒だ。
やり取りが一段落すると、早苗は書類整理と資料作成に集中する。
早苗のいる部署は営業部だ。営業7人に、事務の早苗が1人。早苗が移動になる前は営業6人に事務が3人いた。事務の1人が旦那の転勤で退職することになり、総務の事務にいた早苗が営業事務に移動になった。
営業事務ってなに?と勉強してるうちに1人の事務が寿退職。次来るかな?なんて考えているうちにもう1人が私事都合で退職。気がついたら早苗1人になっていた。そして、気がついたら1人で全部担っていた。
部長に人を増やしてほしいことを提案すると、どこも人手不足で営業に回せないとのこと。もう少し待ってほしいと人の良さそうな笑顔を向けられたら下っ端事務の早苗が反論することはできない。勿論、営業職も出来るだけ手伝うし、負担のかからないようにするたんて言われたら待つしかない。待つしかないかもしれないが。
・・・ついでに書類持っていってくれるぐらいだよね。
自暴自棄で処理して、意地でも時間内に終わらせる。
その結果2台のパソコンがデスクに置かれることになった。更に、印刷機が隣に置かれるようになった。
・・・事務用品が事務の隣にあることは効率いいよね。
事務の社員には紺色の制服が貸与されるのだが、私服になった。理由は動きやすいから。着替えるから。
早苗の仕事量が増えた分、動くことが増えた。よれよれになった制服を見て初め何枚か多目に渡されたのだが、汗をかくことが多くなり着替えをしていたら、業務に支障が出るのではと、部長が上に掛け合い私服てもいいことになった。ジャージやデニムなど社会的に問題がないものを着ることを前提にだ。
営業はスーツが基本なので浮かないような格好を心掛けている。
出来上がった書類を印刷する間、次の資料作成に移る。
時計を見ると5時。定時で上がれそうかも。
引き出しからショコラを一つ取りだし、口に放り込む。
ショコラチャージがラストスパートをかける。
プリントアウトして、担当者に渡して、OKが出たところで心でガッツポーズをとる。
今日の仕事終了☆
パソコンの電源を落とし、鞄を取った時、机に差し出された何か。そう、何か。
「これ、お願いします。」
顔が能面のようになる。
今、帰ろうとしてるの、見たよね?
書類からギギギっと音がしそうな感じで首を上げ、出してきた人物を見る。
爽やかな笑顔を見せる、イケメン男子がいる。
おそらく人間のはず。血の通った人間のはず。
その人間は、名前を谷川隼人という。色素の薄い髪と、目と、肌の持ち主で、すらりとした体つきをしている。動きに無駄がなく、「おそらく鍛えてんだろうな~。ジムとかいってんだろうな~。」と早苗は、思っている。180近い身長で、155センチの早苗はヒールをはいても見上げてしまう。
見た目は笑顔と同じ爽やかなので、社内にファンが多いと聞く。女性に人気のようで、何人か頂いているとも聞く。しかし、別れたあとのケアもいいようで、悪い評判は聞かない。
これが社内の評価。
早苗の評価は、契約を沢山取ってくる営業マン。書類を頼むのが早苗が帰る直前になることが度々ある。よくある。かなりある。
しかもめんどくさい。
絶対わざとだろって思う。
アタシ、何かしましたか?
なにもしてないからやれってことですか?
新手の腹黒商法ですか?
ストレス解消ですか?
「この時間じゃ無理だよね。帰ろうとしてたし、ごめんね。」
ちょっと困ったような顔をする。
・・・何だろう。選ぶ権利はアタシにあるのに、アタシ役立たず感満載で言われてない?
売られた喧嘩は買うのが筋‼
素敵な笑顔を張り付かせて書類を受けとる。
「可及的速やかに行います。」
「7時位までにできると助かるんだけど。」
あと1時間切ってるじゃないの。
「以後、もう少し早めに出していただけると助かります。」
「そう言って貰えると助かる。じゃ、お願いするね。」
・・・日本語、おかしくない?
その後、驚異的な速さで仕事をしたのは言うまでもない。
コピーをして、フラッシュメモリーにバックアップをとって、その間に谷川にチェックを依頼する。
オッケーが出れば、心の中でガッツポーズをする。
時間は7時ちょっと前。
パソコンの電源を落とし、鞄を取って、にこやかに挨拶して更衣室に向かう。
着ていた服を脱ぎ、下着姿になるとボディシートで体を拭く。さっぱりしたところで、持ってきた服に着替える。
黒のミニスカートに白のレースのブラウス、差し色に赤のバッグに同じく赤のヒールを合わせる。
眼鏡を外し、化粧を落として、コンタクトを入れ、ファンデーションを塗り、アイメイクをバッチリ決める。
髪を下ろして整えれば完成。
「よっし、ビールが待っている♪」
着替えの入った袋を手に更衣室を後にする。
頭の中は新宿のアイリッシュバーのビールのみだ。
玄関に向かい歩く。向こうから歩いてくる人影。
営業課課長、斎藤和成だ。31歳独身。学生時代にアメフトで鍛えた体はガッシリとしていてとても大きく見える。黒髪の短髪を後ろに撫で付け、ダークスーツをビッシリ着こなしている。意思の強そうな眉毛、切れ長の目、通った鼻筋、厚い唇、シャープな顎のライン。
・・・威圧感、こんなに遠いのに半端ない。
早苗は思わず立ち止まる。
「アタシだって気がつかないといいなぁ。」とか思っていたら、バッチリ目があった。
「お疲れ様です。お先に失礼します。」
にこりと笑顔でさっさと通りすぎようとする。
「杉原さん?」
「はい、何でしょうか?」
まじまじと見つめる目と合う。
「いや、あー、その、仕事終わりか?」
「はい。」
「今から何処かに行くのか?」
「はい、明日休みなので飲みに行こうかと・・・」
何が言いたいのかよくわからず、思わず素直に答えてしまう。
少し思惑顔の斎藤は、直ぐになにか思い至ったようで、とんでもないことを言い出した。
「丁度いい。俺も終わりだ。付き合わせてくれ。」
はぁぁあああ⁉
今から仕事を頑張った自分へのご褒美で自由気ままに飲もうってんのに、何で職場の上司と飲まにゃならんのだ⁉
「誰か一緒なら、聞いてもらって構わない。」
おお、その手があったか!
でも、嘘ついて飲むのは美味しくなさそう。
一緒でも不味そう。気を遣いそう。
・・・1件だけ一緒して、後は別れればいいか!
早苗はにっこり笑うと
「1人なので大丈夫です。玄関で待ってますね。」
すまないと言って課長は足早に奥へ向かった。
待つこと数分。
・・・増えてる。
まぁ、2人だと気まずいから助かるけど、谷川ともう1人の営業マン、前園達也が増えていた。ダークブラウンの髪はサイドを短く切り、前髪は緩くパーマをかけ毛先を遊ばせている。シルバーの細いフレームの奥の瞳は切れ長の二重。全体的にシャープで、身長は谷川と同じか少し下ぐらいか。社内ではクールイケメンとか噂されてる。
早苗の評価は、神経質で時間厳守。仕事に妥協をせず、厳しい指摘をするが、フォローアップもするので、社員からの信頼が厚い。いつも眉間に皺が寄っていて、寄っていないときを見たことがない。
・・・みんなでかいから、アタシ、踏まれそう。
営業って、イケメン多いよなぁ。自分の武器、最大限に使ってるから契約多いのかなぁ。
みんな負けず嫌いだし、仕事できるし。
・・・取り敢えず、イケメン、はぜろ。
仕事終わったら、会社の人以外と飲みたくなるよね(遠い目)
妄想劇場、続きます。