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第0話「序曲/The Beginning」

処女作なうえ、マイペースな更新になると思いますがよろしくお願いいたします。



ヒーローと魔法少女は、何が違うのだろう。

ここでの現実はとにかく、世間のイメージとしては両者共、世界を悪の手から救う英雄として描かれているはずだ。

もしくは、困っている誰かを助ける、それが彼ら『ヒーロー』と『魔法少女』だ。

ヒーローの目の前にいるのは、魔法少女。フリルのついた衣装を纏い、可愛らしい顔をしていて。

でも違うのは、彼女の得物が杖ではなく刀と銃という事か。イマドキの魔法少女と言ってしまえば、疑問を感じながらも頷かざるを得ない、というのがヒーローの見解。

魔法少女の前にいるのは、ヒーロー。パワードスーツのような衣装を身に纏って、素顔もアーマーで隠されていて。

でも違うのは、その身体と力の半分が、本来倒すべきはずの『悪』の力によって成り立っている事か。

世間のイメージから少し離れている二人は、こうして雨が降る中対峙している。両者一歩も動くこともなく、ただ視点を相手に向けている。

魔法少女は刀と機関拳銃を、ヒーローは己の拳を握り締める。相手がいつ飛びかかってきても構わないように。

やがて、雨の勢いは少しずつ小さくなって、暗雲から陽の光が世界を差し込む。

雨が完全に上がり、どこかで水滴が水たまりに落ちる音がしたと同時に、二人はまるで打ち合わせたかのように飛びかかった。

魔法少女は手に持った拳銃――M19コンバットマグナムをヒーローめがけて発砲する。その弾丸には、銃のギミックによって施されたものではない炎が包まれていた。

放った3発の銃弾は、駆け寄ってくるヒーローめがけて一直線に飛んでいく。しかし、ヒーローはそれを予期していたかのように、それらを上手く身体を曲げて避けて、魔法少女の懐に飛び込んだ。

握りこんだ拳を、魔法少女に打ち込もうとするも、魔法少女は黒塗りの刃でできた刀でそれを防ぐ。ヒーローの拳は刀の刃によって完全に阻止された。

もう片方の拳を打ち込もうとするが、そちらを直撃させる前に飛んできた魔法少女の銃弾からの回避を優先するべく、攻撃行動を中断し、回避行動を選択した。

距離を取り、再びにらみ合いが開催した。互いはそこから動こうとする様子はなく、二人の呼吸音のみがその空間を支配する。

やがて、ヒーローは構えを崩し背筋を伸ばし『丸腰』の状態でその場に立った。魔法少女はヒーローのその行動を理解することができなかった。

魔法少女はそして自らの目を疑った。ヒーローは、マスクを外しそれを捨て、素顔を露わにした。その目からは、完全に戦意は消え去っていることは、魔法少女は容易に理解できた。


「ヒーローと魔法少女は、何が違うんだ?」


その問いかけに、魔法少女は答えを詰まらせた。

問いの答えがわからないのもあれば、その問いの真意も理解できない。魔法少女は、完全に心のペースを崩された。

それが作戦かとも考えたが、目の前のこの男がそんな器用なことをできると思えない。1か月とはいえ彼の行動を見てきた彼女は自分のその考えを否定する。

そんな魔法少女をよそに、マスクを外したヒーローだった少年は、再び問う。


「世界を救うのが、ヒーローと魔法少女の役目じゃないのか?違うのか?」


「……お前は、ヒーローじゃない」


「……」


ヒーローは、たとえ心がヒーローと呼ばれるそれだとしても決してその力はヒーローとは呼べない力だった。

本来、ヒーローが倒すべきはずの悪の力。それが、ヒーローの力の源でもあった。


「だけど、残りの力は正義の力でできている。……お前の、力だ」


「ッ……!」


「お前の力と、その正義の心で俺はヒーローとして目覚めたんだ。だから、俺はヒーローでありたい。例え世界に否定されても、俺に流れているこの力と心は、正義の味方のものだって」


「お前は……!」


銃を構える魔法少女だったが、その手はひどく震えていた。恐怖と怒りと戸惑い。それらが混ざり合い、そこからできた不快感がこの震えだった。

引き金を引こうにも、力が入らない。

ここで引いてしまえば、何かが終わる気がする。またひとつ、倒すべきはずの物を倒すだけなのに。


「……どうして」


「……」


「どうして……!あんたなんか、助けたのよ……!!」


「正義の味方だから、だろ?」


「あたしはッ!魔法少女でッ!!『エルド』を倒すために今まで強くなってッ!!!だから!!!」


「……撃ってみろよ」


「!」


「それで、お前の正義の味方としての在り方が決まるなら、撃ちゃいいさ」


「……うっ……。うああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


彼女は指先に力を込めた。


乾いた音が、一帯に響いた。






『ヒーロー×魔法少女マギカ クロニクルズ』





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