上昇気流
上へ、上へ。
どんどん、上へ。
地面から、空へ向かって、立ち上る。
少しでも。
それを掴もうと、鳥が。
虫が。
種が。
羽根を、必死に伸ばして、すり寄っていく。
遠くへ、より遠くへ。
自分を落とすために。
遥か、山の向こうへ。
海の彼方へ。
普通なら、自分一人ではたどり着けないところへ。
一縷の望みをかけた、命がけのはばたき。
もしも乗り損ねたら。
その体を支えることができない羽根は。
空しく地面を叩く槌になる。
僕は、地面から、上昇気流を見上げる。
手を伸ばしても、その風はつかめない。
僕の背中に、羽根はない。
上昇気流に乗っていく、鳥や、虫や、種は。
僕を見て、何を思うのだろう。
羨ましいと、思うだろうか。
可哀想だと、思うだろうか。
高い所へ行くのには、低い所に居なければいけないし、低い所へ降りるには、高い所へ行かなければならない。
その労力は、必然か。
それとも、無駄なものか。